作品タイトル不明
7話 セドリックの優先順位がおかしいぞ?
「エリアナ嬢のSランクの事は、学園に入学するまで内密になります。父上も母上も、リチャードも他言無用でお願いしますね。」
セドリックから念を押され、この場にいる者達の秘密となった。
「いつからダンジョンに行くのだ?セドリックはもうすぐ学園が始まるぞ?」
公爵からセドリックに話が振られた。
セドリックは、
「学園には行きませんよ?飛び級制度を使い、卒業資格は既に持ってます。」
何ですと?!
子爵家だけでなく、公爵家の方々も驚いている!
「お前っ!いつの間にそんな事をしていたのだ!?」
公爵がセドリックを問い詰める。
初耳だったからだ⋯⋯。
「エリアナ嬢をギルドで見かけ、いつかエリアナ嬢の役に立つ為に考えていましたよ?学園に通っていたら身動きが取れませんし、エリアナ嬢は1年遅れて入学です。エリアナ嬢がいない学園なんて行く意味がない。」
何処まで行っても、エリアナ至上主義のセドリックだった。
公爵はため息を吐くと、
「お前は王太子殿下の側近だぞ?良いのか?」
エリアナは、セドリックが以前言っていた学友の話しを思い出した。
(王太子殿下の側近なら、学園に行かないと不味いのでは⋯⋯。)
「子爵家に婿入りする私が、殿下の側近をする訳が無いでしょ?エリアナ嬢との時間が取れなくなります。婚約を受けてくれたその日に、側近を辞退して来ましたし。」
それに⋯⋯。
「エリアナ嬢が入学するのは来年です。この一年間はダンジョンに一緒に行くのです。殿下の側近なんてやってる暇はないですよ。」
平然と王太子殿下よりエリアナを選ぶセドリック⋯⋯。
公爵はお腹を抱えて笑い出した。
(あ!笑い方がセドリック様と一緒ね!)
エリアナは親子の共通点を見つけ、満面の笑顔で笑ってしまった。
公爵家の皆はエリアナの笑顔にやられてしまった。
「可愛いわ!!こんな可愛い娘が出来るなんて!セドリックを初めて褒めたいわ!」
セリーヌ夫人がエリアナの笑顔の虜になった瞬間だった。
公爵もウンウン頷いて、エリアナが娘になる事を喜んでくれた。
リチャードは⋯⋯。
耳を赤くして、俯いていた。
「リチャード。エリアナ嬢が可愛くても私の婚約者だからな。」
セドリックの指摘にリチャードは顔を上げると、
「仕方ないだろ!!あんな笑顔を見たら、誰だって照れるよ!」
リチャードは大声で、セドリックに反論した。
当の本人は、キョトンとしている。
自分の笑顔を見た事が無いから、仕方がないのだ。
「エリアナ。いつも言ってるでしょ?無闇に笑うと大変な事になるって。」
マリナはいつもエリアナに笑う時は気をつけるように指摘していた。
「仕方ないじゃない?親子揃って同じ笑い方をされたのよ?共通点を見つけて嬉しかったんだもの!」
エリアナは頰を膨らませ、マリナに反論する。
その仕草も可愛くて、セリーヌがまたもエリアナ好きの深みに嵌ってしまった。
「エリアナ嬢。共通点とは、私とセドリックの事か?」
公爵からの問いかけに、エリアナが頷いた。
「お腹を抱えて笑う姿と、その後の目尻を拭う仕草が全く同じでしたよ?!」
エリアナの言葉に、公爵が驚いた顔をする。
「セドリックが声を出して笑う?微笑むではなく、声を出して笑ったのか?」
「セドリック様は良く笑いますよ?と言うより、私が笑われてる?」
エリアナは素直にセドリックの様子を話した。
「笑えないのでは無く、笑う意味がなかったのだな。エリアナ嬢と婚約の話しが出てからはご機嫌ではあったが。
エリアナ嬢と会うまで何事にも興味がなかっただけなのだな。」
公爵達は納得していた。
子爵家も、何となく察した。
「二人は相性が良いのだろうな。幸せになれそうだな。」
話は尽きないが、婚約の書類も整い公爵家を後にした。
明日からダンジョンの準備をする約束をセドリックとして別れた。
エリアナとの婚約が公爵家からも認められ、一番安堵したのは母のエリザだったのは言うまでもない。
その日から社交界にエリザが出席する際は、必ずセリーヌ夫人が共に側にいてエリザを守っていた。
後日、母から聞いたエリアナは将来のお義母様に深く感謝する。
正式に婚約が認められるまで時間を要する。
本来は婚約が陛下から認められるまで、相手の邸に行くのは良くない。
セドリックが何かあれば、裏技の冒険者のパーティーを組んだ事を理由にすると言っていた。
それもあり、今日からセドリックは我が家に居候する事になった。
婚約が認められれば、婿入りの為と理由を変更する。
邸の使わない部屋を準備室にして、二人で今から話し合いを始める。
「あれから色々調べて必要な物を書き出したの。これを見て必要かどうかを見てくれる?」
エリアナがセドリックに紙を見せてきた。
セドリックが目を通すと、
「これは、前世の知識の中から考えましたね?この国に無い物が半分近くありますね。」
セドリックの言葉で初めて気が付いた。
「私の考えは、余り自分から言わない方が良いわね⋯⋯。」
エリアナは転生者とまだ知られたくない。
前世の知識なのか、今世の知識なのか曖昧なのだ。
「エリアナ嬢は、前世の記憶をしっかり思い出していますか?」
セドリックがエリアナに問いかけた。
「生まれた時から記憶はあったの。でも、全て思い出したかと聞かれると微妙かな。」
「日本で生活していた記憶は思い出したりするの。でも、私自身の事や私が関わった事?は思い出せないかな⋯⋯。」
エリアナは自分の記憶を思い出しながら、セドリックに伝えた。
「エリアナ嬢が転生者と知ってから、王宮の資料を探して過去の転生者について調べました。」
「エリアナ嬢と逆の者もいましたが、記憶はいつか全て思い出すようです。過去の転生者の方は何かに秀でた者らしいです。」
「もしかすると、エリアナ嬢が思い出せない記憶は、その秀でた何かかもしれませんね!」
セドリックの話を聞き、
「私の生きてきた人生が秀でた事だったら素敵ね。この国や領民達の役に立つ事だったら嬉しいなー。」
エリアナは心の底では、前世の自分を思い出せない事に不安があった。
日本の知識はあっても、自分が何者だったのか解らなかったから。
セドリックの言葉に、心が少し軽くなる。
「思い出せなかったとしても、この紙に書かれた物を作り出すだけで十分な知識でしょうね。書かれた物の言葉の説明をお願いしても?」
エリアナはセドリックの言葉で、自分はこちらの世界にない単語を記していた事に気が付いた。
「私が何かする時は、一旦セドリック様に相談しても良い?記憶が完全に戻るまで、頼っても良い?」
エリアナからのお願いを断る訳が無いセドリックは、
「良いですよ。沢山頼って下さいね。」
エリアナを優しく抱き寄せ、頬に口付けを落とした。
驚いたエリアナだが、セドリックに少しずつ惹かれ始めていたので頬への口付けを受け入れた。
セドリックはエリアナを足の間に座らせる。自身の胸を背もたれにさせるとエリアナを抱き込むようにする。
二人で仲良くエリアナの記した道具の説明を聞いて、作れるかを話し合う。
話は尽きる事はなく、その日一日はダンジョン準備の話だけで済んだ。
次の日からはダンジョンの町の魔道具店に行き、使えそうな物を沢山仕入れエリアナとセドリックで改造していく。
とりあえずは、食事に関する道具だ。
ダンジョンでは火を使えない。
エリアナはIHの調理道具を元に、まな板くらいの石板の中央に火の魔石を嵌め込み火ではなく熱を出す事にする。
石板の中央には鍋が入る大きさの円を描き、その線には砕いた氷の魔石を練り込む。
線から外側には熱が行かないように氷で境界線を作った。
円の中は高熱になり、円の外は熱くはならない。
次は水筒を作る。
この国に水筒はあるが、木に魔石を嵌め込み水筒と水が腐らないようにするだけの物だった。
その為、水を沢山マジックバッグに入れる必要がある。
ダンジョンは数日潜る。パーティー全員がバッグ持ちなら水や食料と担当を割り振り確保するのだ。
なので、ソロでのダンジョンは討伐失敗よりも餓死を心配しての禁止だった。
エリアナが水の魔石を二つ用意し、自身の魔力を流し込んだ。
既存の水筒の中に水の魔石を一つ入れる。
エリアナは水筒を持ち、セドリックを伴い子爵家の井戸に向かう。
もう一つの魔石を井戸の中に入れた。
「成功するか解らないけど、見ててね!」
エリアナが水筒を斜めにして、中の水を捨てていく。
ずっと流れ出る水をセドリックが驚いた表情で見ていた。
「井戸と水筒を繋げたのですか?」
エリアナは水筒を持ち直し、水筒の中を覗く。
「上手く出来たわ!まだ水が入ってるもの!」
セドリックがエリアナの腰を持ち上げ、高く上げるとクルクル回りだした。
エリアナを地におろし、抱きしめる。
「エリアナ嬢は凄いですね!水が一番厄介なのです。これで冒険者達も長くダンジョンに潜れますね!」
エリアナはセドリックの目を見つめ、
「私の考えは、役に立ってる?」
セドリックは大きく頷き、
「凄く助かりますよ。ダンジョンは辛い中での踏破も醍醐味の一つでしょう。しかし、安全に命の危険を少なくするのも大切ですから。危険を選ぶか安全を選ぶかは冒険者次第です。」
エリアナの頭を撫で、セドリックが提案をしてくる。
「エリアナ嬢が作った他のアイテムをギルドマスターに見せても良いでしょうか?
ダンジョンでの使用許可を聞いた方が良いかもしれないので。」
エリアナは、それもそうかとセドリックの提案を承諾した。
セドリックが持ち込んだエリアナのアイテムに、ギルドマスターが飛びつく事になる。