作品タイトル不明
8話 お互いの秘密を教え合う
水筒はあれから何度か同じ事を繰り返したが、きちんと使えるようだった。
午後からはセドリックがギルドマスターにアイテムを見せに行く。
明日からギルドマスターは隣国に向かう。隣国からの討伐依頼で、暫くギルドにいないからだ。
エリアナは必要な物が他にないかを考える事にし、お留守番となった。
セドリックがマスターの部屋に着くと、マスターのエルランドは出立の準備をしていた。
「お忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。」
セドリックが軽く頭を下げて、挨拶をする。
「エリアナに関する事ならば、時間は作るよ。座ってくれ。」
セドリックをソファーへ促し、エルランドは対面に腰をおろした。
「それで?ダンジョンに持ち込むアイテムの相談と聞いたが?」
「はい。エリアナと私で沢山のアイテムを作りました。これをダンジョンで使用しても良いかエルランドさんに判断してもらおうと持って来ました。」
エルランドは荷物を持たないセドリックに、
「マジックバック持ちか?」
セドリックが頷いた。
「容量は?」
「特大容量ですね。」
「まじかぁー。流石公爵家だな。」
家の名前を出されて、
「私の私財で買いましたよ。エリアナとお揃いです。」
と、腰のマジックバックを顔の前に出し嬉しそうに話す。
「はいはい。早速アイテムを見せてくれ。」
エルランドの言葉に、
「アイテムが多いので、あちらのスペースで出しても?」
扉の前のスペースを指さしセドリックが伝えた。
二人で扉の前辺りに来ると、セドリックが次々とアイテムを出してきた。
まずは、魔道具から出した。
・調理道具の石板。
・水筒。
・焚き火台。
・ランタン。
・個室シャワー。
こっちは寝泊まりする為の道具。
・簡易テント。
・寝袋。
・折りたたみの低いテーブル。
・色んな形のローチェア。
出されたアイテムを見て、エルランドが口を開いたままでいる。
セドリックが、「どうですか?」
そう問いかけられ、エルランドが我に返った。
「これを二人で作ったのか?」
セドリックが頷いた。
実際はエリアナの提案だが、二人で作ったとする方が転生者である事を隠せると判断したのだ。
「まぁー、エリアナのスキルと属性なら、これくらいは作るか。」
セドリックはエルランドの言葉に、今まで気になっていた事を聞いてみた。
「エリアナとアイテムを作っていて気が付きましたが、エリアナは全属性持ちでありスキルを授かっている。そのスキルは何かを作り出すスキルですね。」
エルランドはてっきりセドリックにエリアナが話していると思っていたのだ。
婚約者となれば、自身の属性やスキルを報告し合うからだった。
「私達はまだ正式に婚約がされてません。エリアナは婚約者に報告する事を知らないかもしれません。」
「私がエリアナに自分の属性を話す時に、話をしようと思っていました。」
「ですがアイテムを作るうちに、エルランドさんに確認して早々にエリアナの属性やスキルをどうすべきか考えていたのです。」
「ギルドは冒険者の魔力やスキルを鑑定し、登録する義務がある。それは国に見せる事はない。冒険者を縛らない為の手段ですよね。」
エルランドはセドリックの視点の鋭さに感心する。
二人はアイテムの周りに座り話し合う。
「エリアナが12歳でギルドに来た。その時に鑑定したのが俺だ。俺はまだ副ギルドマスターだったが、当時のマスターに知られてはならないとエリアナには属性やスキルの話は絶対にするなと伝えた。」
「エリアナは氷魔法が一番秀でていたから、属性を氷にして登録した。」
セドリックはギルドで暴動があった事を思い出した。
「低ランクの冒険者が当時のマスターに反発したと記憶していますが、当時のマスターは良くなかったのですか?」
エルランドが当時を思い出し、苦笑いをする。
「まー低ランクを散々虐め抜いていたからな。仕方ないさ。」
「それでエルランドさんがマスターに?」
エルランドが頷いた。
「俺はエリアナを見てるだけで楽しくなる。女一人で幼いながらも魔物を狩る。理由が家と領民の為となれば、応援したくなるだろ?」
「エリアナがお前にスキルの話をしなかったのは、忘れているか俺が誰にも話すなと禁止したからかもな。」
セドリックは頷き、エルランドの話を聞いている。
「このアイテムの説明をしてくれるか?」
セドリックとエルランドがアイテムについて話し合った。
結果、全ての使用許可がおりた。
だが、冒険者達に販売する前にアイテムの使用をしながら経過を纏め、報告してから販売するかの判断をする。
それまでは、他者の目に触れないようにエルランドさんから、隠蔽の魔道具を借りた。
ギルドが所持する魔道具で、その使用が中々降りず借りれない貴重な魔道具を貸してくれた。
「このアイテムを売り出したら儲かるからな!」
確かに⋯⋯。
エルランドの言葉に、エリアナの作る魔道具を守らなければならないと⋯⋯。
エリアナとはきちんと話しをしなければならない。そう決心する。
エルランドさんからは、水筒を貸して欲しいと言われたので了承した。
エリアナの待つ子爵家にセドリックは帰って来た。
邸の扉を開くと、エリアナが出迎えてくれた。
「お帰りなさい。セドリック様。」
「ただいま。エリアナ嬢。」
セドリックがエリアナの頬に口付けを落とす。
「エリアナ嬢。話があります。今からお時間はありますか?」
何時になく真剣な面持ちのセドリックに、エリアナは少し不安になるが作業部屋へと二人で向かう。
ソファーに並んで座り、お互いの体を向け合う。
「魔道具ですが、マスターからの許可が降りました。私達がダンジョンで使用して、その経過を報告しそれから販売するかを検討するそうです。
それまで他者に魔道具を見られてはならないと、隠蔽の魔道具を渡されました。」
エリアナは許可が降り、ホッと安堵した。
「エリアナ嬢。私達は正式にはまだですが婚約者同士です。お互いの魔法の属性やもしスキルを持つならば報告し合わなければなりません。」
「その理由は、お互いをきちんと知り、又、お互いを助け合う為の事だからです。」
エリアナはその話は知らなかった。
両親達からは聞いていない。
「聞いた事はない様ですが、ご両親は正式に整ってからエリアナ嬢に伝える予定だったのでしょう。」
「ですが。エリアナ嬢と魔道具を作っている時に、私は色々気が付きました。このまま私が知らないままでいては、エリアナ嬢を守れないと。なので、マスターに確認もしました。」
「エリアナ嬢は全属性持ちでありスキルは物を作る何か。ですね?」
セドリックの言葉にエリアナは驚いていた。セドリックが言う通りだからだ。
「その通りです。スキルは(生成)です。何かと何かを合わせたり、この世界に無いものをこの世界のもので作り出すスキルみたいです。」
「そのスキルはマスター以外に知ってる人はいますか?」
「マスター以外ならエリーお姉さまだけよ。」
セドリックは頷き、
「属性は学園の入学で鑑定されるので、その時に知られる事になります。
ですが、スキルは余り知られない方が良いので暫くは秘密にしましょう。」
セドリックが姿勢を正して、エリアナを見て自身の話しを始めた。
「エリアナ嬢。私の属性は光属性なのです。光属性は水属性も使えるので、私は水属性として学園に入りました。」
「光属性は希少な属性になります。」
「父は私が生まれて直ぐに光属性ではないかと考えたそうです。母は産後体調を崩したのですが、私を抱くと私の体が光り体調が良くなかったらしいのです。」
「父は直ぐに知り合いに鑑定してもらい、私の属性が光属性と解ったそうです。」
「これは、公爵家の秘密になります。外部で知る者は鑑定してくれた人物とエリアナ嬢だけになります。王家も知りません。」
エリアナはそんな重大な話しを聞いて良いのか解らず、ソワソワしてしまう⋯⋯。
「エリアナ嬢。私は貴女を手放すつもりはありません。この話を聞いた以上、私から離れられませんよ?」
ニッコリ微笑みかけられても、何だか怖い⋯⋯。
エリアナはセドリックに優しく抱き寄せられた。
この優しい腕の中は温かい。
優しい檻に囚われてしまった気がするが、エリアナは悪くないと思っている。
エリアナはセドリックに、
「セドリック様が私を想ってくれる気持ちに、まだ私の気持ちが追い付けない。でもセドリック様の腕の中は温かくて好きよ。」
エリアナからの言葉に喜びが湧き上がる。
自分への好意をエリアナに持って貰えた事に。
セドリックは、
「お互いの呼び名を変えませんか?様や嬢呼びでなくて。」
「セドリック様は皆から何て呼ばれているの?私は小さい頃はエリーだったけど、今はエリーお姉さんもいるから、アナって呼ばれる時もあるわ。」
セドリックも自身の呼び名を思い出す。
「私はリックですかね。」
エリアナが、
「セドって呼ばれた事はある?」
「その呼び名は一度もないかと。」
「じゃあ、私はセドって呼ぶわ!」
セドリックの呼び名が決まった。
「リア、は呼ばれた事はありますか?」
エリアナは少し考え、
「ないわね⋯⋯。」
「では、私はリアと呼びます。二人だけの呼び名ですよ!?」
セドリックが優しくエリアナの頰を撫で、瞳を覗き込む。
セドリックの顔が近付き、エリアナの唇にキスを落とした。
チュッ。と、軽いキス⋯⋯。
エリアナは驚いてはいたが、嬉しそうに笑った。
その笑顔に魅入られたセドリックは、暫くエリアナの唇を離す事がなかった⋯⋯。
涙目のエリアナが頰を膨らませるが、その仕草も可愛くて愛しくて、またセドリックに捕まる。
終わりがないセドリックからの攻撃は、エリアナがぐったりするまで続いた。