軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4話 転生令嬢を怒らせてはいけません!

エリアナは子爵家を貶めた女性達を冷たく見つめ続ける。

エリアナの足元からは氷が張り床を壁を凍らせて行く。

ギルドの中にいる全員が足を氷漬けにされ、身動きが出来ない。

冒険者達であれば尚更、エリアナの魔力の圧倒的な凄さを感じてしまう。

誰も口を開けずにいる⋯⋯。

エリアナは一歩一歩進み出す。

「ねぇ。貴女達は何様なの?家門を存続させるさせないは陛下が決める事よ?貴女達は陛下より立場が上なのかしら?」

「子爵家を貶めた責任は取ってもらうわよ!」

エリアナは自身の周りに氷の矢を複数出した。

矢の先は女性達に向けられている。

女性達は足を動かせないまま、その場にへたり込んだ。

だが、矢の先はへたり込んだ女性達へと向きを変える。

女性達は勿論、周りの人達も顔を青褪めている。

「そこまでですよ。エリアナ嬢。」

セドリックがエリアナに話しかけた。

「彼女達を傷付けては、ご両親が悲しみますよ。彼女達を傷付けた事ではなく、エリアナ嬢が傷付く事を悲しみます。」

エリアナは視線をセドリックに向けた。

「怒りのまま誰かを傷付ければ、エリアナ嬢はきっと後悔します。貴女は優しい人ですから。家門の為にと戦ったのに、貴女が後悔する姿をご両親は喜びますか?」

エリアナは黙ったまま、魔力を消した⋯⋯。

セドリックがエリアナを抱きしめ、背中をポンポンする。

「私の対応の甘さが招いた結果です。責任は全て、私にあります。」

エリアナの顔を覗き込み。

「エリアナ嬢。申し訳ない。」

セドリックが謝罪をした。

エリアナは首を振り、

「いいの。私は子爵家が大切なだけ。やり過ぎたのも解ってる。」

俯いたまま、エリアナからセドリックに抱きついた。

セドリックは背中を撫で、エリアナの気持ちが落ち着くのを待った。

周りの人達は未だに動けずにいる⋯。

「何の騒ぎだ!」

2階から声を掛けられた。

その人物が騒ぎの中心にいるエリアナを確認すると、周りの氷漬けのギルドを見て納得する。

「はぁー。誰だよ。エリアナを怒らせたのは⋯⋯。」

深いため息を吐いた。

その人物を見て、冒険者達は慌てて頭を下げる。

ギルドマスターのエルランド。

SSランクの現役冒険者だった。

「エリー。状況の説明を。」

エルランドが受け付けのエリーに声をかける。

「報告致します。」

「エリアナ嬢とセドリック様が仲良くギルドに来られました。私が婚約したのか問いかけたところ、セドリック様より婚約の報告を受けました。」

「そこにへたり込んでいる者達が、エリアナ嬢を突き飛ばし、セドリック様へエリアナ嬢について散々いちゃもんを言っていました。」

「その中に子爵家を貶める発言をした為、エリアナ嬢の逆鱗に触れこの様な惨状になりました。」

エルランドが再び深いため息を吐いた。

「そこの女ども。お前達が全員でかかってもエリアナに傷一つつけられん。それどころか、指先一つで即死だ。」

「死にたくないなら、エリアナに手も口も出すな。」

「ったく。エリアナを怒らせるなよなー。」

はぁー。と、三度のため息⋯⋯。

「エリアナの魔力にあてられて、今日のお前達は役に立たん。今日はギルドは休業だ。お前らさっさと帰れ。」

「あー、そこの女どもはギルドに半年間出禁だ。とっとと帰れ。」

エルランドがエリアナに体を向けた。

腕組をし、エリアナに話しかける。

「今日は何か用事があったんだろ?

用件を聞こうか。」

エリアナはセドリックに一度視線だけ向け、ギルドマスターに答えた。

「今日はダンジョンに行く為の手続きに来たの。セドリック様とパーティーを組むから⋯⋯。」

「ギルドをめちゃくちゃにして、ごめんなさい。」

エリアナが謝罪し、頭を下げた。

エルランドは、笑いながらエリアナの頭を軽くポンポンと撫でた。

「売られた喧嘩を買っただけだ。エリアナに喧嘩を売る、あいつらが馬鹿なだけだ。気にするな。」

エルランドがセドリックを見て、

「公爵家の嫡男だろ?エリアナと婚約するとなれば公爵家を出るのか?」

エルランドからの問いに、

「エリアナ嬢と婚約できるなら、公爵家を出る事に何ら思う事はありませんよ。」

当たり前のようにセドリックが答えた。

エルランドは、セドリックが気に入ったのかセドリックの肩を叩き、

「二人共2階に来い。」

エリアナとセドリックは、エルランドの後ろを付いて行った。

マスターの部屋に入り、ソファーを勧められた。

二人で並び座る。目の前にはマスターが腰掛けた。

「二人はダンジョンに行きたいと?」

エルランドの質問には、エリアナが答えた。

「上位の討伐依頼が無くて、ダンジョンに潜って稼ごうかな?って考えて。

でも、ソロは行けないでしょ?それを聞いてダンジョンに潜りたかったセドリック様とパーティーを組む事になったの。」

エルランドが話を聞き、質問してきた。

「パーティー組む為に婚約したのか?」

その言葉を聞いて、反論したのはセドリックだった。

「違います!私はエリアナ嬢にずっと焦がれていて、やっとダンジョンを切っ掛けに声をかけたのです。」

「エリアナ嬢はとても美しい上に、心優しい女性です。早く婚約を申し込まなければと、声をかけて直ぐに申し込みました。」

フムフムと、エルランドが話を聞いている。

「セドリック殿は恋が実り婚約が出来た。エリアナは婚約者も出来て、ダンジョンにも行けると。」

フムフム⋯⋯。

「だが、セドリック殿はダンジョンに潜れる条件を満たしているが、エリアナは条件を満たしていない。許可は降りない。」

「ソロじゃなければ冒険者は行けるって⋯⋯。」

エルランドの答えた言葉にショックを受けるエリアナ⋯⋯。

「満たしていない条件とは?」

呆然とするエリアナの代わりに、セドリックが聞いた。

「成人扱いの15歳でダンジョンに潜れるのは平民だけだ。生活がかかってるからな。

貴族は学園に入る年齢、16歳にならないとダンジョンへは行けない。」

ますますエリアナは落ち込む。

俯いて顔をあげないエリアナの背に、セドリックが手を添える。

「だがな、特別許可が出せるぞ。」

その言葉に、エリアナが顔を上げてエルランドを見た。

「Sランクになれば、年齢は問われない。エリアナ、どうする?」

セドリックが意味が解らず、エリアナを見つめる。

セドリックと視線が合ったエリアナだが、スーッと外された。

セドリックがエリアナの顔を両手で挟み、顔を合わせてきた。

「エリアナ嬢。何を隠しているのですか?」

エリアナは顔を向けさせられているが、視線を合わせない。

「エルランドさんに聞きますよ?話さなければ、ダンジョンには一緒に行きませんよ?」

エリアナは視線を急いで戻し、セドリックと視線を合わせた。

「私はSランクを直ぐにでも取得出来るの⋯⋯。」

セドリックが手を離し、エリアナの話を聞く姿勢をとる。

「私は14歳でS級モンスターの討伐をソロで受けたの。自分の腕試しをしたかったから。」

「ちゃんとマスターが同行してくれたわ。もしもの為に。対象がサラマンダーだったから、1番氷魔法が得意だったのもあって討伐出来たの。」

エリアナが正直に説明した。

「S級をソロで討伐したんだ。直ぐにSランクに上げようとしたが、断られたんだよ。」

「目立ちたくないからってな。」

セドリックは納得した。

エリアナは転生者である事を隠すくらいだ。Sランクとなれば、別の意味で上位貴族に目を付けられるからだ。

「色々納得しました。エリアナ嬢は目立つのを嫌いますからね。」

セドリックはあっさり受け入れた。

「私も頑張ってSランクにならないといけませんね。」

「Sランクになるくらいのじゃじゃ馬娘に呆れないのか?貴族令嬢だぞ?」

エルランドの質問は、貴族相手には普通に思う疑問だった。

お淑やかであれ。それが貴族。

冒険者ランクも、Aランクであれば箔が付くがそれ以上は嫌厭されるのだ。

「私はどんな事であれ、エリアナ嬢であるのならばどうでも良いのです。エリアナ嬢の側にいれる。それだけで良いので、他事はどうでも良いのですよ。」

セドリックは話しながらエリアナに視線を向けた。

どんな私でも良い⋯⋯。

その言葉の嬉しさは、今まで経験した事のない多幸感をエリアナの胸に刻んだ。

「ありがとうございます。セドリック様。」

エリアナはマスターに、

「Sランクになりたいです。セドリック様と一緒にダンジョンに潜りたい。」

「きっと楽しめるもの!」

眩しい笑顔を見せるエリアナに、マスターもセドリックも魅入ってしまう。

流石、妖精姫⋯⋯。

先にマスターが正気に戻り、話をまとめる。

「エリアナは今日からSランクだ。だが、公表は学園に入るまでしない。知るのは私にセドリック殿とエリーになる。」

「エリーをエリアナの専属にするから、それならば依頼を受けてもバレる事は無い。あいつは口が堅いからな。」

「後は⋯⋯。陛下にも報告せねばならないが、秘密にしてもらおう。最年少のSランクだ。逃がしたくないから、約束は守ってくれる筈だ。」

「エリアナは両親には説明しろよ。婚約するなら、公爵家をどうするかはお前に任せる。」

「明日ダンジョン許可証のカードを渡す。また明日二人で来い。」

エルランドの話に頷いて、明日二人でマスターを尋ねる事にした。

ギルドの一階には誰もいなかった。

二人で手を繋ぎ、ギルドを出た。

「お腹空きましたね。お昼を食べて街を探索しませんか?」

セドリックの提案を了承し、二人で街へと繰り出した。

エリアナは明日ダンジョンへ行ける事に、とても浮かれていた。