作品タイトル不明
136 今後の対策
俺はミルトの置いた鉱石を観察した。
最近、武器作製に力を入れている俺も知らない鉱石だった。
特に魔力は感じない。
「これはなんだ?」
「はい。亜ミスリル鉱、またの名を愚者のミスリル銀と呼ばれるものですね」
「確かにミスリル鉱石に似ているが……」
「似ているのは外見だけです」
「そうなのか?」
「はい。魔力との親和性も低く、腐食が早いうえに脆いので商品価値はありません」
「だから、愚者のミスリル銀か」
この鉱石を発見した愚者がミスリルを発見したと喜ぶからそういう別名があるのだろう。
これをミスリル銀だと偽る詐欺もあるのかもしれない。
「で、これがどうかしたのか?」
「これを、魔人どもがゴブリンたちを指揮して採掘させていたんです」
「何のために、こんなものを?」
聞いた限り使いようのない鉱石だ。
軍資金を稼ぐために、ミスリル銀詐欺を働くとしても、効率は悪かろう。
「何のためか調べてもわからなかったのですが、これを調べることでわかりました」
そういって、ミルトは枢機卿のコアを指さした。
それから、ミルトは一から説明を始めてくれる。
俺たちが竜の山脈に旅立った後、学院にはゼノビアとミルトが残った。
そこに魔人出没情報が届いたため、ミルトが向かったのだという。
現地に到着したミルトは手早く魔人を倒す。
「魔人は三匹だけでしたから、楽でした」
ミルトはこともなげに言う。
三匹の魔人はミルトにとっては楽だろうが、並みの一流戦士には脅威である。
だからこそ、ミルトが呼ばれたのだろう。
「魔人たちがゴブリンどもを指揮して何かやっていたので調べたのですが……」
どうやら亜ミスリル鉱を発掘していたことが分かったのだ。
ミルトは困惑した。
亜ミスリル鉱の使い道が分からなかったからだ。
「ですが、師匠の持ってきた枢機卿のコアを調べてやっとわかりました」
枢機卿のコアに亜ミスリル鉱がかなりの量使われていることが分かったのだという。
「それは興味深いな」
「はい。師匠。興味深いですよね」
「どこに使われているんだ?」
「全体的に」
そういってからミルトは細かく教えてくれる。
中心にある魔石とそれを包む肉のつなぎ目や魔石と魔石のつなぎ目。
そして肉自体にも大量に含まれているらしい。
「ほう?」
「どんな役割を果たしているのかは、これから調査が必要です」
俺は亜ミスリル鉱と枢機卿のコアの両方を手に取った。
改めて見ても、どのような技術が使われているのかよくわからなかった。
「俺たちよりも技術が上なのは間違いなさそうだな」
「はい。どうやらテイネブリス教団は、肉体改造技術を研究しているようです」
人から魔人、魔人から獣の眷族への変化に関する技術。
そして、枢機卿のコアを作り出す技術も俺たちにはない技術だ。
情報交換を済ませると、今後どうするかを決める。
これからは俺とミルトで敵の技術解明と対策を進めることになった。
ディオンは教団の動きを調べ、ゼノビアとレジーナは防衛の指揮を執る。
そういう役割分担だ。
大体決まると、ディオンが言う。
「師匠が枢機卿を倒してくれたおかげで、助かりました」
「ああ。私は気付いていなかったからな。レジーナもだろ?」
いち早く現地に到着していたゼノビアも気付いていなかったようだ。
「うん。おれも全く。敵の隠ぺい技術も凄いもんだな。師匠助かったよ」
「俺が気付いたわけではない。ルーベウムのおかげだ」
「きゅる?」
俺のひざの上で、大人しく丸くなっていたルーベウムが小さな声で鳴く。
「ルーベウムが気付いてくれなかったら、敵に情報を持ち帰られるところだった。ありがと」
そういって俺はルーベウムを撫でる。
「きゅきゅるー」
するとルーベウムは気持ちよさそうに鳴いた。
そんなルーベウムにゼノビアが頭を下げた。
「そもそもルーベウムの速さがなければ、私は死んでいたかもしれぬ。ありがとう」
「……そこまでやばかったの? きゅる」
ルーベウムには意外だったようだ。
俺の弟子たちの強さを見た後だからだろう。
「私もかなり疲弊していたからな。けして魔人は弱くない。獣の眷族はもっと強い」
「うんうん。やっぱり複数を相手にするのはきついよね」
獣の眷族相手に無双していたレジーナまでそんなことを言う。
「きゅるぅ? 圧倒していたように見えたけど……」
「そう見えたならよかった。だが結構ぎりぎりだったよ」
「それに、一対一よりも一対多はいろんなことが起こりうるからねー」
「そうなの?」
俺の後ろからレジーナが手を伸ばして、ルーベウムを撫ではじめた。
「うん。おれが好き放題暴れられたのも、近くにゼノビアがいたからだし」
ゼノビアは一対多で戦っていた。
だが、レジーナは二対多だ。
実際にゼノビアが参戦していなくても近くにいるだけで大きく違う。
「それに上空にはルーちゃんもいたからね」
「そっかー」
「俺もシロ、フルフル、フィー。それに上空のルーベウムがいたから戦いやすかったよ」
「きゅるる」
ルーベウムは鳴きながら尻尾を揺らした。