軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25 表向き

私はキャスティンとこれから入る編みぐるみ大量生産に向けての打ち合わせをして、彼女は私の知らない紳士にダンスに誘われたので、ダンスホールへと進んだ。

踊っている間、キャスティンはにこにこと微笑み、お相手も楽しそうだし、最近話していないけれど、良い人が出来たのかもしれない。

仲の良い友人キャスティンに幸せが訪れたのから、それは良いことだ。私が今、エドワードと上手くいっているからこそ、思えることなのかもしれないれど……。

「……まあ、お似合いだわ」

「俺たちも、似合うと思うんだが」

「レヴィン……? 殿下」

そこに居たのは、レヴィンだった。銀色の髪に美しい青の瞳……王子様然とした、煌びやかな服を纏う……レニア王国第二王子様だ。

「特別に許すから、レヴィンで構わない」

「……はい。ありがとうございます……レヴィン」

名前で呼べることが許されるのは、レヴィンと同じ王族か、彼本人に許された人だけだ。私はそういう特別な区分けに入ったということになる。

「リゼル。あの時は邪魔が入って話せなかったが、その後進展はあったのか?」

そういえば、レヴィンと話していた時、シャーリー様が入って来て事情を話せないままだった。

「実はエドワードと、仲直りしました。私が思い込んでしまって、暴走していただけのようで」

「けど、どうしてエドワードは既に社交界デビューしているリゼルに、婚約を申し込まなかったの? 幼い頃に結婚を約束していているなら、そうするべきだとは思うけどね」

「あ……それは、レヴィン。あの、多分、レヴィンと一緒で……」

彼らの持つ『加護』について、どこまで言って良いのかわからない私は、その後の言葉を濁して彼の顔を見上げた。

何せ『加護』については、私はほとんど聞いたことがない。あるとは聞いているけれど、それほど少ない人数にしか与えられていない。

「ん? ああ。そういえば、グレイグ公爵家も、加護持ちだったか。エドワードも伴侶を神に認められねばならなかったね」

レヴィンは軽く言って頷いた。

「そうなんです……私が家に篭もっている事が好きだったので、エドワードもなかなか言いづらかったようで」

「色々と大変だよね。自動的に守られるので、持ってない王族とは違い、護衛騎士を引き連れる必要がないから、便利は便利だけどね」

「……あ。そういえば、あの時も……」

私は視力を回復するための魔法屋に行こうとして、レヴィンに助けられたことを思い返した。

確かに王族のお忍びだと言うのに、彼が危険な目に遭っていても、誰一人として護衛は出てこなかった。

けれども、それはそれでも問題ないからなのだろう。レヴィンへの攻撃は目に見えぬ力で阻まれ、怪我ひとつ負わなかったのだから。

「そうそう。俺に加護を与えたのは『風神』で、風獣が周囲に常に居るんだ。望む望まないに関わらず、子にも引き継がれるようだから、大変だよね。そういう訳で、俺もまだ婚約者が決まらないんだ」

レヴィンは物憂げにそう言ったので、私はシャーリー様のことを思い出した。

シャーリー様は私がレヴィンと知り合いだとわかった程度で、あれほど敵意を剥き出しにするほどにレヴィンのことを好きなのだ。

だとしたら、神に伴侶として認められるための試練が、何であったとしても、彼が好きだからと耐えられるのではないだろうか。

「シャーリー・ブロア伯爵令嬢は、レヴィンのことを、とても好ましく思って居るようですけれど……」

私の言葉を聞いた途端に、レヴィンは目に見えて嫌な表情になった。

「やめてくれ……うんざりだよ。あの金切り声で追い回される、こっちの身にもなってくれ……」

「まあ、ごめんなさい……これまでに、色々とあったのですね」

レヴィンは手に持っていてグラスを飲み干すと、通りがかった給仕の盆の上へと置いた。

「ああいう目立ちたがり屋の女は、俺はあまり好きではない」

その時に、私は彼の過去の言葉を思い出した。『俺に興味がない女の子は、別に嫌いではないよ』というのは、俺に興味があり過ぎる女の子が居て、それが嫌だったから……?

「けれど、レヴィン。シャーリー様は『令嬢ランキング』に、参加されているのですよ。もし、彼女が権利を得て、求婚されたらどうするんですか?」

「断るよ。穏便に。無理なものは無理だ」

レヴィンは仏頂面でそう言った。

「……けれど、あの求婚は断られたことはないと聞きますけど」

本当はエドワードが初の断った男性になるのかもしれないけれど、レヴィンは断固として受けなさそうだ。もちろん未来は確定はしていないけれど、シャーリー様の恋は前途多難なのかもしれない。

「あれには、少しからくりがあってね。何度か求婚出来るんだ。断られても。だから、最終的に全員が結婚相手に巡り会えているというだけであって、断られたことがない訳でもない」

「え! そうなんですか。私てっきり」

「ああ……おそらく運営側は、表向きにはそういう事にして置きたいんだよ。俺もあの制度については、興味がないのであまり知らないが、レニア王国の伝統的な結婚方法と真逆の考えも肯定していることになるから、色々と便利なんだろう」

「……そうなのですね」

全員が求婚を、断られていない……最終的には。ということだろうか。

運営側もそうしておきたい気持ちはわかる。だって、私もあの売り言葉に釣られて参加を決めた一人だもの。