軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

熊との闘い②

「リリアーナ、早く」

ラニアの声が飛んだ。

リリアーナははっとして弓を握り直す。だが、指先が震えていた。目の前では、ラディンが熊をじっと見据えている。

森の奥から、矢が飛んできた。

エドモンドだ。一直線に熊へ向かう矢。

当たる――そう見えた瞬間。熊が腕を振った。ばしり、と。矢は簡単に払われ、横へ弾かれる。

その隙を逃さなかった。

ラディンが踏み込む。低く身を沈め、一気に熊の懐へ。剣が走る。

鋭い一太刀が熊の体を斬り裂いた。だが、ラディンはすぐに距離を取る。

「皮しか、切れてないな」

小さく呟いた。熊の分厚い毛皮と皮膚。

刃は深くは届いていない。

その間に、リリアーナは弓を引いた。矢を放つ。しかし、矢は熊の横を通り過ぎ、地面へ突き刺さる。

……落ち着け。落ち着け。

リリアーナは一度、目を閉じた。大きく息を吸い、ゆっくり吐く。もう一度、弓を構える。

その時。森の中から、再びエドモンドの矢が飛んだ。熊の注意が、わずかにそちらへ向く。

今だ。リリアーナは弦を引いた。

そして――矢を放つ。矢はまっすぐ飛んだ。

……当たった。

「おい、どうなってる」

「よく、見えねぇ」

木々の陰から、男達が口々に言った。

枝葉の影で、戦いの様子がはっきり見えないのだ。

しかし、リリアーナの放った矢は、確かに熊の額へ届いていた。鈍く光る魔石。その中心を、矢が貫いている。

だが。熊はまったく動じなかった。

まるで小枝でも刺さったかのように、ゆっくりと前足を上げる。

そして。額に刺さった矢を、無造作に引き抜いた。ぱきり、と嫌な音がする。

熊はそれをちらりと見たあと、地面へ投げ捨てた。矢が土に転がる。熊の視線が、ゆっくりと動いた。

リリアーナを見る。その瞬間、ラディンが一歩前へ出た。刀を握り、リリアーナの前に立つ。守るように。

リリアーナの腕が震えた。

……効かない。そんな言葉が頭をよぎる。

それでも。もう一度、矢を取ろうとした。

だが。指が震えて、うまく掴めない。

視線が、熊へ向く。

熊は、リリアーナへ向かって、一歩、歩いた。

重たい足音。地面が揺れる。

リリアーナは必死に矢を取ろうとした。

その時。熊が前足を振り上げた。巨大な影が落ちる。

「危ない!」

ラディンが叫んだ。再び、リリアーナを抱きかかえるようにして横へ跳ぶ。

次の瞬間。熊の爪が地面を叩きつけた。

土が跳ね上がる。衝撃の中で、リリアーナの手から、弓と矢が離れていた。

地面に転がり、遠くへ滑っていく。

その時、ロキはラニアのそばにいた。

ラニアはしゃがみ込み、ロキに何かを小さく囁いている。

その内容までは、誰にも聞こえない。

一方で、ローデンは、リリアーナの放った矢が熊の額に刺さった瞬間、思わず声を出していた。

「やったか」

だが、その考えが甘かったと、すぐに分かる。熊は、何も変わらない。

痛がる様子も、怯える様子もない。

まるで、矢など存在しないかのようだった。

その時、ロキが鋭く吠えた。熊が、視線を動かす。

ロキを見る。そして同時に、ローデンとラニアも見た。瞳が、三つの影を順に捉える。

その瞬間。

ラニアは、熊へ向かって歩き出そうとした。

ローデンは反射的にラニアの肩を掴んだ。

「何?」

ラニアが振り返る。ローデンは何も言わなかった。ただ、ラニアの前に立った。

剣を構えて。熊と、ラニアの間に。

熊は三人を見ていた。

ローデン。ラニア。そしてロキ。

しかしラニアは、熊の額をじっと見ている。

埋め込まれた魔石。その一点だけを。

熊が腕を振り上げた。そしてローデンへ向かって振り下ろす。ローデンは、ぎりぎりで後ろへ跳んだ。爪が空を切る。

その瞬間、ローデンは踏み込んだ。

すぐに斬りかかる。狙いは――鼻。もしくは、目。

だが。熊は俊敏だった。巨体とは思えない速さで身を退く。

その時。ロキが動いた。

一直線に跳び上がり、熊の鼻へと食らいつく。

深く、牙を立てる。熊が激しく頭を振った。ロキの体が大きく揺れる。

その隙に、ローデンは狙いを定めようとした。

しかし。その前に動いた者がいた。ラニアだった。

ローデンの腰に差してあった予備の剣。

それを、いつの間にか抜いていた。

そして、迷いなく、熊へ向かって跳ぶ。

小さな体が空を切った。