軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

■18.デートの覗き見をする魔界の精鋭部隊

七星の六人は背の高い「後方彼氏面岩」の後ろに隠れ、やや離れた前方に位置する「失恋岩」に座るヴァルディたちを観察していた。

「デートだ! マジでデートしてる! へえ、あの子が聖女か!」

「仲良さげだな? ってかあの岩、よりにもよって失恋岩じゃね?」

「デートで失恋岩を選ぶとか、あり得ないって言うかぁ」

「あ、ちゃんと飲み物を持参しているのだぞ。あんな気配りができたのだな!」

「許さないぞヴァルディあんな可愛い銀髪乙女とキャッキャウフフ羨ましい」

「警告。ヴァルディ様がこちらに気付いた模様。この場からの退避を推奨します」

――バキィ、と硬い音が響いた。

六人が隠れている「後方彼氏面岩」に亀裂が走った音だった。

岩の上を見れば、明らかに殺気立っているヴァルディがこちらを見下ろしている。

「よ、よおヴァルディ……いい天気だな……」

尻尾の鱗を逆立てているヴァルディ(臨戦態勢)に対し、引きつった笑顔で片手を挙げたのは、橙色の短髪をした体格のいい青年――七星のひとり、カルドロである。

幼いヴァルディとよく遊んであげた兄貴分でもあるカルドロは、殺る気に溢れた弟分を怖々見上げつつ、宥めるように言った。

「こらこら、岩壊しちゃ駄目じゃないかー……また魔王様に怒られるぞー……?」

「まだ壊してない。ちょっとヒビが入っただけだ」

ヴァルディは冷え冷えとした声でそう応じ、こてんと首を傾げた。

こいつ殺気は一人前なのに仕草はまだまだガキっぽいんだよなぁ、とカルドロは内心ほっこりしたが口にはしない。

「なんだ、カルドロだけか? もっといたと思ったのに」

「えっ!?」

ほっこりしている場合ではなかった。カルドロは慌てて周りを見回すが、誰もいない。

「あいつら逃げるの早っ!」

先程まで共にデートの覗き見に興じていた他の五人は、速やかに退散したらしい。カルドロは薄情な仲間を恨みつつ、再び岩の上のヴァルディを見上げた。

「よく聞けヴァルディ。『デート見に行かね?』って提案したのはヤンヤンだぜ」

「シェリネになんの用だ。俺の捕虜だぞ。用件があるなら俺が聞く。言え。言わないと燃やす。用件によっても燃やす」

「あっ駄目だ話聞いてない。そっかそっか、あの子シェリネっていうのか。うんうん、可愛い名前じゃないか」

「……シェリネの名前を知ってるのは俺だけだったのに……よくも名前を覚えたな……誰にも教えるつもりなかったのに……許さない……」

「理不尽!」

話題を逸らそうとした結果、華麗に地雷を踏み抜いてしまった(正確に言うと踏んでもないのに起爆した)カルドロは焦った。

「えー、あー、シェ、聖女ちゃんとすげぇ楽しく過ごしてるのを邪魔して悪かったよ、うん、ごめんな!」

「な、なんっ、かかか勘違いするな、どう見ても捕虜を虐めてただろうが!」

慌てて謝罪に回ってみた結果、ツーステップで別の地雷も踏んでしまった。

しかもこっちの地雷はヴァルディを激しく動揺させたらしく、先程までの冷えた声が、瞬く間に怒鳴り声に変わる。

「全っ然仲良くしてないし! 前言撤回してうっかり捕虜の世話焼いてるとか全然そんなんじゃないし! お前の目撃情報、間違えた、勘違い情報を広められたら迷惑だから、お前ごと燃やしてなかったことにしてやる!」

「理不尽その二! あとお前のスタンスは理解したがだいぶ無茶だな!? 素直に仲良くすりゃいいじゃん!?」

「だっ、だから仲良くしてないつってんだろ! いただきますの顔が可愛いとか思ってないし! ごちそうさまでしたも全然可愛くないし! お箸持てて偉いなとか思ってないし! 一緒にいるだけで幸せになったりしないし! 毎日喜んで欲しいなんて考えたこともない!」

「ここまで否定が機能してない否定文初めて聞いた!」

「全部お前の勘違いだからな! だからお前を燃やして証拠隠滅してやる!」

「理不尽が止まらない!」

ボッと両手に炎を纏った臨戦態勢のヴァルディを前に、カルドロは頭を抱えた。早くうまいこと宥めないと、全自動で惚気た末に羞恥心でキレた弟分に焼却されてしまう。

何かいい手はないかと、カルドロは周囲に素早く視線を巡らせ。

「! あいつら……よし!」

ヴァルディの後方で繰り広げられている光景が目に入り、宥めるのではなく意識を逸らす方向で活路を見いだした。

「なあヴァルディ、俺に構ってる場合じゃないぜ」

カルドロは「失恋岩」の方角を指した。

「お前の聖女ちゃん、あっちで女子会始めてるけど」