作品タイトル不明
第005話 へっへっへ
「教会ってエーデルにある?」
「そりゃあるが…………あー、エーデルって国の名前だぞ。私らが行くのはエーデルのアルトって町だ」
あ、そういえば、そうだった。
横文字は覚えるのが難しいわ。
「アルト……そこにはあるのか?」
「ああ、もちろんあるぞ。そこそこ大きな町だしな。それこそフィリアに聞けばいい。あいつはそこの修道女だから」
教会の人間だったのか。
それで蛇の霊か?
うーん……この世界がわからないから何とも言えないな。
「明日、聞いてみるか……」
「そうしろ。あと、お前の占いは金貨1枚だったか?」
「初回だけね。何か占ってほしいことがあるん?」
意外だな。
「さっきはゲルドの占いたいことを当てただろ」
ゲルド……
商人のおっさんか。
「あれはたまたま見えただけ。そんなに万能じゃない」
そもそも、何でもわかったらこんなところにいねーっての。
「そうか……実はちょっと占ってほしい」
アンナはそう言って、金貨1枚を取り出した。
「まいど。何を占うん?」
アンナから金貨を受け取ると、占う内容を聞く。
「……笑うなよ?」
「もうね、そのフリでわかったわ。恋愛だろ」
それ以外にない。
「……変か?」
「そこを気にしない方が変だから安心しな。じゃあ、占うぞー」
アンナの恋愛を占ってみた。
「えーっと、その男は責任感の強い男だなー」
「そ、そうだ!」
ちょっと可愛いな……
「だが、奥手だな……」
「そ、そうなんだ……」
恋する乙女だねー。
「この仕事が終わったらそいつと組んで仕事をしろ。それで上手くいく」
「組む? あいつ、別のパーティーを組んでるんだけど?」
「一時的でいいから誘え。それで上手くいく」
間違いない。
「マジ?」
「当たるも八卦当たらぬも八卦。どうなるかはお前次第」
お前がケガして、助けてもらううちに上手くいくのだ。
だが、これを言ってしまうと、こいつはケガをしなくなる。
だからこれ以上は言えないのだ。
「それだけか?」
「俺は預言者ではない。占いでも言いすぎなくらいだ。これから一緒にエーデルに行く仲間だからここまで言ったんだよ。あの商人のおっさんもミケも同じだ」
普通はここまで具体的に言わない。
ある程度、ぼかすのが大事なのだ。
「そうか……やってみる」
「言いすぎたお釣りに聞いていいか? フィリアはたまに苦しむような表情をすることがないか?」
「フィリアが? そういえば、あったな。馬車酔いとか、馬車の振動でちょっと痛めたとか言ってたが……」
やはりあの蛇は当人も苦しいようだ。
「そうか……あいつ、金持ってるかな?」
「金? どれくらいだ?」
「金貨100枚」
「持ってるわけないだろ」
だよねー。
どうしようかねー?
「うーん……」
「お前、さっきフィリアが気になるって言ってたな。何かあるのか?」
「この世界ってさ、霊的なもんを信じる風習がある?」
霊的なもんは宗教に関わることがある。
下手すると、異教徒狩りや魔女狩りに遭う可能性があり、大変危険だ。
「霊的なもん? レイスやゾンビか? 街道には出てこないが、その辺にいるな」
「えー……それは嫌だなー」
ガチでいるのかよ。
しかも、その辺にいるのかよー……
「うーん、フィリアには蛇の霊が憑いている」
これくらいなら言っても良いか。
「蛇? 悪いものか?」
「それが微妙なんだ……この世界ではどうかは知らないが、蛇は悪い面もあるが、良い面もある。あの蛇は少なくとも、悪いものではない。だが、フィリアを苦しめている」
「苦しめているのなら悪いだろ」
まあ、そう思うのも確かだ。
「一概にそうは言えない。あれは守護霊……守護霊ってわかるか?」
「わかるぞ。戦いで運良く助かったりすると、ご先祖様のおかげだとか言うしな」
一応、似たような考えはあるっぽいな。
「フィリアにはそういうものが憑いてるんだ。あれはフィリアを悪いものから守っている。でも、力が強すぎて、フィリアを締めつけ過ぎているな。本人は苦しいだろう」
大事なものを守ろうとして、力を込めすぎている。
まあ、蛇にそこまで考える力はない。
動物霊だとよくあることだ。
「お前、そういうこともわかるのか……?」
「というか、本業がそっちだ。占いは副業」
呼び方はエクソシストでも対魔忍でもなんでもいいぞ!
いや、対魔忍は違うか……
「祓えんのか?」
「そこなんだよね。祓えるけど、高い」
そして、祓っていいものなのかも微妙だ。
守護霊だし。
しかも、教会の子。
「あー……それが金貨100枚かー」
「悪いが、この話はフィリアには黙っててくれ」
「なんでだ?」
「人によっては借金とかするからなー。そういうので身を滅ぼされるとちょっと……」
占いやこういうスピリチュアルに傾倒する者はかなりいる。
そういう奴が金づるになるんだが、やりすぎると、犯罪に手を染めたりするからよろしくない。
そして、そういう不幸はこっちにも降りかかってくるものなのだ。
「なるほど」
「ちょっと本人に話を聞いて、探ってみる。あいつの家の懐具合とか、返済能力があるかとか」
「お前、やっぱ詐欺師だろ」
失礼な!
ちょっと騙してるだけだよ!
「違うよ。あとさー、魔法の本とか持ってない?」
「これか?」
アンナがカバンから本を取り出した。
「持ってるんだ……剣士じゃないの?」
「魔法剣士になりたいんだよ。あと、暇なんだ」
なるほど。
「ちょっと見せて」
「やる」
アンナが本を投げてきた。
「いいのか?」
「もう擦り切れるくらいに読んだし、アルトに着いたらまた別の本を買う」
「おー、ありがとー!」
「それとお古で悪いが、剣と靴もやる。何かあったらお前も戦え」
剣をくれるということは信用は得たってことだな。
「戦えるかはわからないが、どうも。お礼に良いことを教えてやるぞ。明日は晴れだ」
「あっそ」
天気占いは興味ないか……
恋愛脳め……