作品タイトル不明
第006話 可愛いなー
翌朝も商人のおっさんが馬車を走らせ、進んでいく。
すると、徐々に道が綺麗になり、お尻への負担が軽減し、馬車のスピードも上がった。
この分なら思ったより、早めにエーデルのアルトという町に着きそうだ。
「道が綺麗だなー」
「エーデルは冒険者の国って言われてましてね。建国した初代国王が冒険者なんですよ。それ以来、冒険者を集め、国力を上げています。道の整備も人の行き来を良くするためのものですよ」
インフラ整備ってやつかね?
「なるほどねー……」
チラッとフィリアを見る。
相変わらず、フィリアの身体には蛇が巻き付いていた。
「んー? 何?」
フィリアは顔をこちらに向け、首を傾げる。
ちょっと可愛い。
「フィリアさ、アンナに聞いたんだけど、修道女なんだって?」
「そうだね。冒険者と兼務だけど、私の祖父が教会の神父をやっているの。まあ、お手伝い程度だけどね」
神父様が祖父ねー。
うーん、両親は……あ、いないっぽい。
触れるのはやめておこう。
「なるほどね。これもアンナに聞いたんだが、教会ではスキルがわかると聞いたんだけど?」
「あー、そうだね。祖父なら鑑定することができると思う」
ほうほう。
「紹介してくれない?」
「いいよー」
「あー……ちなみに鑑定料はおいくら?」
「うーん、金貨20……30枚かな? 高くてごめんね」
フィリアは言いづらそうに謝りながら教えてくれる。
金貨30枚ということは30万円くらいかー。
しかし、途中で値段が上がったな……
俺が出すと思って、上げたか……
可愛い顔して意外と強かだな、こいつ。
まあ、自分のスキルはわかっていた方が良いだろうし、それくらいは出すか。
「わかった。金貨が貯まったら教会に行くよ。悪いが、その時は頼む」
「うん。私は依頼で出てない限り、教会かギルドにいる。まあ、教会は町の人に聞けば、教えてくれるよ」
これは早めに金貨30枚を貯めた方がいいな。
「ありがとう。おっさーん、3回くらい占ってほしくなーい?」
フィリアにお礼を言うと、おっさんに営業する。
「今、考え中だからちょっと待て。そのうち、頼むかもしれん」
「ふーん……他に商売でも考えるかなー」
占いばっかではちょっとなー。
「旦那、アルトに着いたらまず、ギルドに登録した方がいいぜ」
「なんで?」
「今のままじゃ旦那はただの浮浪者だろ。ギルドに登録してれば冒険者って肩書が付く。無職の浮浪者は下手をすると、宿屋にも泊まれねーぜ」
住所不定無職か……
しかも、スピリチュアルな占い師。
自分で言うのもなんだが、めっちゃ怪しい。
「冒険者って信用できるん?」
「無職よりマシ程度だが、エーデルは冒険者の国だからな」
「なるほど。おっさんも登録してんの?」
「俺は商人ギルドだ。商売するならそっちでもいいが、登録する際にどういう商売をするかとかの説明がいるぜ。金が動くからなー」
めんどいな…………
「無許可で店とか開けねーの?」
「無理だなー。市場の露店だったら何を売るかの申請だけでいいぞ。店を構えようとすると、結構めんどくさい」
まあ、店を構える気はない。
「その辺で占いをするのは許可がいるん?」
「あー、どうだろう? 一応、許可は取っておいた方がいいんじゃね? 話を通しておいてやろうか?」
「お、やってくれるん?」
良い奴。
「まあ、旦那には世話になってるからなー。このくらいは安いもんだぜ。どうせ、アルトに着いたら商人ギルドに顔を出すし、その時に言っておいてやるよ」
「頼むわー」
やはり知らない世界に来た時は人に頼るのが一番だな。
その後、綺麗な道を進みながら何日もかけて進んでいった。
正直、俺の体力的には限界だったが、ようやく町が見えてきた。
「旦那、あれがアルトですぜ」
商人のおっさんに言われ、前方を見ると、壁に覆われた町が見える。
「おー! あれかー」
初めての異世界の町だ。
ちょっと興奮する。
「旦那はアルトに着いたらどうするんです? 俺と一緒に商人ギルドに行きますか?」
「うんにゃ。宿屋で数日休む。俺、もう限界よ」
お尻が痛いわ、足が痛いわ、全身痛いわで最悪。
恵んでもらっておいてなんだが、干し肉ばっかでロクに飯も食べてないし、全身ボロボロだわ。
「リヒトはもう少し、鍛えた方がいいです」
ミケが半笑いでバカにしてくる。
「猫ちゃん、こっちにおいで。撫でてあげるから」
「セクハラを通り越して痴漢です!」
「借金こしらえて、身売りする時は言えよ。俺が3食付きで飼ってやるから」
「この詐欺師、完全に猫扱いしてくるな……」
だって、お前、猫じゃん。
そのひょこひょこ動く耳と尻尾で俺を誘惑するんじゃない。
いやらしい子だよ、まったく。
「旦那、この国で奴隷はマズいですぜ?」
「奴隷? 奴隷って何? 鞭打つの?」
ピラミッドでも作んのか?
「あー……他所の国だと、農奴とか鉱山奴隷とかあるんですよ。旦那も他所の国に行く時は気を付けてくださいよ。借金持ちには容赦ないですから」
「借金は大丈夫だと思うが、気を付けよ」
奴隷とか絶対に嫌だ。
「まあ、旦那はどうとでもなりそうだけど…………あ! あと、女の奴隷を買ってもこの国には持ち込めないですからね。この国は奴隷がご法度ですから」
女の奴隷なんかもあるのか。
怖いねー。
まあ、日本ではほぼないだろうが、発展途上国に行けば、似たようなのはあるだろうな。
「奴隷なんか買わねーよ」
「さっき、私を飼おうとしてただろ……」
ミケが小声でツッコんできた。
「プロポーズみたいなもんだよ」
「嘘つけ! 言い方がペットのそれだっただろ!」
猫ちゃんもツッコミが上手くなったなー。
「旦那、言っておきますが、ミケはともかく、他の獣人をペット扱いすると、下手すると、殺されますぜ」
「大丈夫。ミケにしか言わないから。猫ちゃんは優しいから怒らない」
「いや、めっちゃ怒ってるけど……」
ミケは毛を逆立てて、俺を睨んでいる。
仕方がないなー。
「漁港に着いたらまず、酒場に行くといいぞ。良いことがあると出てる」
ミケのご機嫌を取ることにした。
「弟がいるの?」
「いや、わからないにゃ。良いことがあるってだけだにゃ」
「にゃって言うの止めろ。すげームカつく……酒場ね。行ってみる」
うんうん。
行ってこい。
ミケのご機嫌を取ることに成功した。
やっぱりどんな形であれ、会話が大事なんだな。