軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第026話 怖いもん

光が消え、我に返ると、俺が借りている宿屋の部屋に戻ってきていた。

もちろん、隣には腕を抱いているフィリアもいる。

「一応、確認するけど、夢じゃないよね?」

「現実だよ。カバンの中身を見てみな」

そう言うと、フィリアはカバンを開き、中を覗く。

「菓子パン、スイーツ、シャンプー……現実か」

フィリアはカバンの中身を確認した後、自分の髪を触った。

「気持ちはすごくわかる」

俺だって、いまだに慣れない。

「よし! 現実だ! やった!」

フィリアは拳を握った。

前向きな子だなーと思いながら苦笑し、部屋を出る。

そして、階段を降りていくと、受付には昨日と同じくリリーが座っていた。

「あんたら、今まで部屋にこもって何をしてんだい?」

リリーからしたら24時間もあの狭い部屋で2人きりだもんな。

「寝てた。疲れたんだと思う。変なことはしてないぞ?」

「そりゃ変な声はしなかったしねー。でも、フィリアちゃん、嫁入り前の女がこういうことはあまり感心しないね。ましてや、あんたは修道女だろ」

修道女だからっていうのはよくわからないないが、嫁入り前云々はわかる。

やはりあらぬ疑いをかけてしまうな。

「大丈夫ですよ。女神様も祝福してくださるでしょう」

ん?

「そうかい! ならよかった! しかし……うーん、まあいいか」

リリーは何かを喜んだようだが、すぐに俺を見て、テンションが下がった。

「お前、俺を見て、何かを憐れんだだろう?」

「気のせいだよ。それよか、渡すものがあるだろう?」

ポケットから飴を2つ取り出し、リリーに渡す。

「1つはサラだぞ」

「わかってるよ。あんたは早く金を稼ぎな。こんな宿屋に泊まってるようじゃ、サラはあげないよ?」

金を稼いだらサラをくれんのかい?

「リリーをもらってやろうか?」

「ウチの旦那とやるかい?」

「末永くお幸せに……今日、サラに妹か弟を作ってやりな」

お前の旦那って、食堂で料理を作っていたゴリゴリマッチョだろ!

3秒で殺されるわ!

フィリアと共に宿屋を出た俺は一度家に帰るというフィリアと別れ、冒険者ギルドに向かい、さっさと中に入る。

ギルド内は相変わらず、人がほとんどおらず、2、3人が依頼票を見ている程度だった。

ただし、テーブルに座っている魔法使いが昼間から酒を飲んでいるのも確認できた。

ギルドに入ってきた時、その魔法使いと目が合ったが、ひとまずはスルーし、受付で暇そうにしているガラ悪マッチョのところに行く。

なお、今日も例の美人さんはいなかった。

「よう! 今日は遅い出勤だなー」

丁寧だった商人ギルドとはまるで違う歓迎を受ける。

まあ、ガラ悪マッチョだから仕方がない。

「疲れたから寝てたんだよ。それよか、黄金草の依頼はまだあんのか?」

「あっちに行って自分で確認しろよ……ったく、あるよ。というか、普通の薬草もだが、黄金草はずっとある。いくらあっても困らないからな」

「そうなん? 黄金草って、何に使うんだ?」

美味しいのかな?

「そんなことも知らねーのか……薬草と一緒でポーションの材料だよ。薬草よりも品質が良いのが黄金草って思ってりゃいい」

薬草で低級ポーションが作れて、黄金草で高級ポーションが作れるって意味かな?

「ポーションって俺でも作れるか?」

「何だ、お前? 錬金術師にでも転職する気か? 器材とかいるし、錬金術師は特殊だぜ? やめておいた方がいい」

「ポーションは錬金術師なのか?」

「だなー。薬師もいるが、そいつらは薬を作る。錬金術師はポーションだ」

違いがわからん。

まあ、日本でも薬剤師は難しいらしいし、専門的な知識がいるだろう。

学のない俺には無理だな。

「じゃあ、地道に黄金草でも採取するか……」

「地道っていう意味を理解してないみたいだが、まあ、そうしな。お前向けの仕事もちょっとは考えてる」

「どんなん?」

「人探しとか、偵察とかかなー。できるだろ?」

占いで人は探せるが、偵察は微妙だな。

「俺、めっちゃ弱いぞ?」

「見りゃわかるし、知ってる。ちゃんと護衛とかはつけるし、安全に配慮するよ」

「思ったより、良心的だなー」

もっと、ブラックな感じかと思ってた。

「特殊な技量を持っている奴は貴重だからな。魔法使いやお前みたいな専門職は他が何人死のうが守る」

占い師をやっててよかった。

普通の冒険者はやっぱ超絶ブラックだったわ。

「じゃあ、いいや。何か決まったら教えてくれ。占いで受けるか決めるから」

いくら指名されて大金を積まれようが、不幸が訪れるのが決まっているのに受ける気はない。

「めんどくせーな。でも、お前に断られたらヤバい仕事って思えばいいか。鉱山のカナリヤだな」

毒ガスを教えてくれるやつかな?

というか、こっちにもカナリヤがいんのかい……

「そうしな。俺は当分の間、黄金草で稼ぐわ」

「そういえば、お前って、いつまでこの町にいんの?」

「決めてないが、当分はいるぞ。知り合いもできたし、猫ちゃんが帰ってきてないしなー」

「ふーん。ミケはともかく、定住する気はないのか?」

定住ねー……

「家でも買えってことか?」

「まあそうだな。買わなくても借りるっていう方法もある。定住の手続きをすれば、住民税は取られるが、何かと便利だぞ」

なんでそんなことを冒険者ギルドが勧めてくるんだよ。

いや、あの美人さんの差し金だろうけど。

「考えておく。この町は風水的にも悪くないし、当面、戦争はなさそうだしな」

「風水的にはってのはよくわからんが、この町で戦争は起きないのか?」

「少なくとも、当分はないな。空気もよどんでないから流行り病もなさそう。あー、でも、モンスターの危険はあるかもしれん」

「まあ、大森林が目の前だしな。モンスターはあるだろうよ」

その時は逃げるか、あっちの世界に避難だな。