作品タイトル不明
第027話 ロックオン
「ふーん。まあ、定住するにしても、まずは金だわ」
「金ならすぐに稼げるだろ。黄金草もだし、お前、フィリアと組んで金儲けを企んでるじゃん」
どいつもこいつも情報が早いな。
「よく知ってるな」
「まあ、この町もそこそこの大きさだが、コミュニティは狭いしな。お前みたいな胡散臭い奴の情報はすぐに入ってくる。実際、昨日の夜にカミさんからも聞いた。市場の端っこで、一人でぶつぶつとつぶやく不審者がいたって」
フィリアの親父さんを送った時のやつだな……
はた目から見たら不審者以外の何者でもないからしゃーない。
「てめーの嫁にちゃんとした冒険者だって言っとけ」
「大丈夫。詐欺師だから話しかけられても無視しろって、言ってある」
「お前の嫁に幸せになれるツボを売りつけることが決定したわ。というか、お前、結婚してんの?」
どっから攫ってきたんだよ。
「そりゃしてるわ。俺、30ちょいだぜ? お前もさっさとしろ。確か、そんなんでも25歳だろ?」
え? お前、40オーバーじゃねーの?
老けてんなー。
「お前でも結婚できるんだなー」
「金あるしな」
ギルマスだし、金は持ってそうだな。
「なあなあ、この世界……というか、この国の結婚の価値観ってどんな感じだ?」
「アバウトすぎて聞きたいことがわかんねーよ」
「さっき俺が25歳だから結婚しろって言ってたじゃん? 皆、そのくらいにはしてんの?」
「大体はするな。まあ、職業や状況にもよるから絶対ではないが、少なくとも、考えはする。なのに、お前、全然しそうにねーもん」
随分と早いな……
あー、でも、日本も昔は早かったって聞いたことがあるな。
あと、よく考えたら俺の両親も早いわ。
結婚がいつかは知らないが、母親は俺を19歳で産んでいるはず。
「冒険者もか? 明日死ぬかもしれねーのに結婚すんの?」
「は? 明日死ぬかもしれねーからさっさと結婚するんだろうが」
価値観が合わなすぎる……
「女はよくそんな奴と結婚しようと思うな」
「女も売れ時とかあるしな。若いうちに良いのを捕まえて、さっさと旦那の金を管理するんだよ。冒険者は危険だが、収入は良いからな」
「いや、普通に農家に嫁げよ」
そっちの方が安定してると思う。
「朝から晩まで汗を流して、はした金か? 農村連中ならまだしも、この町みたいな商業や冒険者稼業が中心の町でそんなところに好んで嫁ぐ女はいねーよ」
「ふーん。まあ、だいたいわかったわ」
少なくとも、現代日本の価値観とが大きく違うのはわかった。
まあ、魔法もあり、魔物もいる異世界だからな。
「年長者がアドバイスしてやると、男も女も若いうちがいいぞ。歳を取るとひねくれるし、子供の事もあるからな」
その辺はあっちの世界と一緒だな。
「お前、子供いる?」
「いるぞ。女の子が3人、男の子が4人。お前は絶対に近づくなよ。教育に悪い」
めっちゃ失礼なことを言うなー。
「お前が親の時点で手遅れだ。しかし、多いなー。7人もいんの?」
「まあ、嫁さんが2人いるしな」
まーた、理解できないことが増えたよ。
「2人もいるの?」
「あー、お前の故郷では1人までか。いや、そういう国もあるぞ。でも、この国は自由な国だからそんな制限はない。甲斐性次第だな」
異世界だ。
「じゃあ、俺が誰かと結婚して、ミケを飼っても大丈夫?」
「お前、そのミケを猫扱いするのをやめろ。マジでそのうち、獣人共に殺されるぞ? あと、ミケを諦めろっての。めっちゃ嫌われてんじゃん」
猫ちゃん……
3食お魚にしてあげるから家に来ないかな……
「ダメかー」
「というか、嫁さんが許すか次第だわ。あと、家に2人も嫁がいるって冷静に考えると、きついぞ?」
……お前がきついわけね。
「若さゆえに奥さんを2人ももらって両手に華だーって喜んでたら奥さん2人に尻に敷かれてきついわけね」
「いやいや! 何を言う!? 俺はとっても幸せだぞ。不満なんてこれっぽっちもない。こいつら、交互にうるせーなー、なんてこれっぽっちも思ってない」
……思ってるわけね。
「いつもありがとう。愛してるって言ってやりな。そうすれば、あと、2、3人子供ができると出た」
「勝手に人の家庭を占うんじゃねーよ!」
占わなくてもわかると思うが。
「奥さん2人のサービスも良くなると出てる」
「料金は金貨1枚だったっけ?」
まいどありー。
人生の先輩であるガラ悪マッチョのすばらしい講義を受けた後、黄金草の依頼を申請しようとしたが、事後報告でいいらしい。
時間を見て、15時くらいだったので明日にしようかなーと思い、酒を注文した。
実は昨日の酒が若干、残っており、あまり飲む気は起きていないが、お目当ての魔法使いが目の前にいるので酒を頼んだのだ。
そして、ちょっとご機嫌なガラ悪マッチョから酒を受け取ると、酒を持って、そのまま魔法使いのところに行く。
魔法使いのそばまで来ると、魔法使いと目が合ったのでそのまま魔法使いと同じテーブルにつく。
「何?」
魔法使いは目を細め、咎めるように睨んできた。
「小説は買えたか?」
「あ、うん。あり、ありがとう……」
睨んでいた女だったが、慌てて、感謝の意を表してくる。
そんな女を見て、頷いた俺は無言で酒の入ったコップを女の前に差し出した。
「……アイス」
女はコップをじーっと見ていたが、すぐに意味を理解したようで、コップに向けて手をかざし、魔法名と思われる言葉をつぶやいた。
そして、コップを俺に前に返してくる。
目の前のコップを持ち、口に運ぶと確かに冷えていた。
「冷えてた方が美味いな。味が全然違う」
「そりゃそうよ。ぬるい酒を美味しそうに飲んでる連中の気が知れないわ」
こいつはいつもここで冷えた酒を飲んでるんだろうなー。
1人で……