軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第20話 選ばされる姪

セシリア・エルンストは、勝ち誇る令嬢ではなく、逃げ道を探している人の顔をしていた。

薬草院の小応接室へ入ってきた彼女は、淡い緑の外出着を身につけ、両手で一通の封筒を握っていた。汗で角が柔らかくなり、封蝋の脇には何度も指を置いた跡がある。供の侍女もおらず、王妃府の案内役だけが廊下へ控えていた。

「ラングフォード公爵令嬢、本日は突然のお願いをお聞きくださり、ありがとうございます」

「エルンスト侯爵令嬢。どうぞお座りください」

私たちは社交の場で挨拶をしたことはある。前の人生でも、彼女は候補の一人として白百合宮にいたはずだ。ただ、親しく話した記憶はない。ヴァレリアの姪であり、将来を期待されていた令嬢。私は勝手に、侯爵夫人の側に立つ人だと思っていた。

今日はアマーリエが正式な提出を受けるため同席し、ノエルについては私が立会いを望むか尋ねられた。私は彼にもいてほしいと答えた。証拠を扱う際の手順を知る人がいることも、私がセシリアと二人きりで向き合わずに済むことも、今は必要だった。

セシリアは椅子へ座っても封筒を膝から離さなかった。

「叔母様は、慈善のために生きている方だと、私はずっと思っていました。幼い頃から、恵まれない人へ手を差し伸べる家の娘でありなさいと教えられたのです」

言葉が途中で細くなる。

「妃候補への推薦も、私が望むかではなく、侯爵家が国へお返しできる栄誉なのだと言われました。私には、辞退するなど考えられませんでした」

私の胸へ、春の封筒の重みが戻る。もし死んだ記憶がなければ、私も同じように推薦を誉れとして受け取っていただろう。セシリアが弱いから従ったのではない。

「私も、一度は同じように受け入れました」

言ってから、自分が何を明かしたのかに気づく。彼女は不思議そうに顔を上げたが、私はそれ以上を語らなかった。今ここで必要なのは、私の秘密ではなく、彼女の持ってきた物だ。

「お持ちになった書状について、話せる範囲で伺えますか」

セシリアは両手を開き、封筒を卓へ置いた。

「薬草院が施療薬を止めた後、叔母様から届いたものです。ラングフォード公爵令嬢が基金を非難するなら、推薦を辞退したことを悔やみ、王宮への反感から慈善を妨げていると証言するよう書かれていました」

アマーリエが、封筒へ直接触れる前に問う。

「開封はご自身でなさいましたか。受け取った日時と、届けた者は分かりますか」

「はい。自宅の侍女が受け取り、受領簿にも残っています。私は読んだ後、鍵のある文箱に入れていました。叔母様には、返事をしておりません」

「提出は任意です。提出後は原本を法務室で保管し、必要ならあなたにも認証写しを渡します。提出により、あなたが直ちに責任を問われるものではありませんが、事実を尋ねる場は設けられます」

セシリアの指が封筒の端をなぞった。

「提出いたします。私は証言をしませんでしたが、黙って持っているだけでも、叔母様の命令を受け入れているようで……」

最後の言葉は消えかけた。

私は何と言えばよいのか分からなかった。感謝すれば、彼女が背負う恐怖を軽く扱うようで、許すと言えば私に許す権利があるのかも分からない。

「お持ちくださったことを、私は忘れません」

結局、出てきたのは整いきらない言葉だった。セシリアは一度目を伏せ、かすかに頷いた。

アマーリエが手袋を替え、封筒を受け取る。書記が外形と封蝋、受領時刻を記し、全員の前で中の文書を開いた。

文面は、セシリアが語った通りだった。

基金に異議を申し立てる令嬢は、妃候補としての務めから逃れた自身の判断を正当化するため、慈善の現場へ混乱を持ち込もうとしている。姪であるセシリアは、選定に臨む令嬢として、王家と慈善への忠誠を示さなければならない。

優美な筆跡が、私の辞退とセシリアの推薦を、同じ道具にしている。

ノエルが文書の日付を指した。

「エルンスト侯爵夫人が薬草院へ来訪し、ラングフォード嬢へ候補復帰を勧めた翌日です」

私が拒んだ後、彼女は別の候補へ、私を汚す言葉を準備させたのだ。

セシリアは顔色を失っていた。

「私は、叔母様に選ばれることが正しいと教えられました。けれど、選ばれるために、事実ではないことを言わなければならないのなら……私は、その推薦を受けたくありません」

その声を聞いて、私は自分が春に父へ告げた時を思い出した。私には死の記憶があった。それでも膝が震えた。何も知らず、育ててくれた叔母の期待だけを背負って降りる彼女の方が、ずっと孤独かもしれない。

「推薦は、まだ登録前ですか」

アマーリエが確認する。

「はい。家長の署名はございますが、私の同意署名はまだです」

「であれば、あなた自身の辞退届を提出できます。叔母君が選定委員であるため、法務室で直接受領し、接触制限の対象にも加えましょう」

セシリアは驚いた顔で私を見た。私も、春に使った手続きが彼女へ開かれるのを見て、胸が熱くなる。

「怖くないと申し上げることはできません」

私は彼女へ言った。

「ですが、同意していない道へ進まないことはできます。私は、その手続きを使いました」

セシリアは手袋の上から指を握り、長い間ためらった後に答えた。

「私も、辞退いたします」

法務官はその場で辞退に必要な用紙を用意させた。セシリアは今日すぐ署名するのではなく、一度自宅へ戻らず王妃府の保護下に入り、家長確認と本人の意思を別々に確かめる手順を選んだ。侯爵夫人の圧力が及ぶ立場だからこそ、急がずに進めるという。

「自宅へ戻らなければ、叔母様は私が裏切ったと思うでしょう」

セシリアの声は震えていた。

「けれど戻れば、私はまた、叔母様が望む返事をしてしまうと思います。自分が何を望むかより、失望させない答えを探してしまうのです」

私にも覚えがある。父は侯爵夫人のように私を利用したわけではない。それでも、父が喜ぶ顔を思い描いただけで、私は推薦状へ署名した。誰かの期待に応える習慣は、扉を施錠されなくても人を歩かせる。

「今すぐ強くなる必要はありません。戻らずに考える場所を選ぶことも、あなたの決断です」

セシリアは、涙をこぼさないようにするより、私の言葉を聞くことに力を使うように顔を上げた。

私は、それが正しいと思った。辞退は自由を選ぶ手続きであり、恐怖に急かされて別の紙へ署名することではない。

提出された指示書は法務室の封筒へ入れられ、セシリアへは認証写しの受領権が説明された。アマーリエの書記が文書を運び出した後、小応接室には茶が残った。誰もほとんど口を付けていないため、表面に薄い膜が張り始めている。

「オフィーリア様」

セシリアが、初めて私を私的な呼び方で呼んだ。

「私がもう少し早く考えられていれば、あなたが告発される前に……」

「あなたが命じたことではありません。今、提出してくださったことが事実です」

完全に彼女を慰められる言葉ではなかった。それでも、彼女はそれ以上自分を責める言葉を続けず、冷めた茶へ目を落とした。

ノエルが扉を開け、外で待つ法務官の案内役へ合図をした。彼は私たちの会話へ余計な結論を加えない。ただ必要な帰路が確保されたことを確認する。

セシリアが去った後、アマーリエから短い説明があった。

「選定委員が推薦予定者へ虚偽の証言を求めた疑いが生じました。現年度の選定について、手続きの一時凍結を検討します。恒久的な判断は、最終的な審査を経てからです」

「セシリア様の辞退は、凍結されれば受理されないのでしょうか」

「いいえ。本人が登録前に辞退する権利は、選定の進行とは別です。凍結するのは、新たな評価や登録を進める手続きです。辞退を閉じ込めるための措置ではありません」

私は安堵した。制度を止めることが、別の形で令嬢を縛ってはならない。

私は窓の外を見た。盛夏の光が、薬草院の庭へ落ちている。

同じ制度に選ばれかけた二人の令嬢が、それぞれの意思でその道を離れることを選んだ。

机の上に残った書状の日付は、侯爵夫人が私へ候補復帰を勧めた翌日だった。