軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11. デパ地下探索

麗美の義母が入っている施設は、東京は東京だが少し都心から離れている。先にお見舞いの品を買う予定だ。

「やっぱり和菓子かな」

年輩の女性であることを秋人が説明すると、美香は少し迷った。

「でも、和菓子ばっかり食べていらっしゃるかもしれないわ」

「そうだよねぇ」

秋人と二人少し悩んだ後、駅直結の百貨店に向かった。結局結論が出なかったので、和菓子も洋菓子も買っていこうということになったのだ。

そこは秋人がよく行く百貨店とは別系列で、列車の最寄りだったため初めて行く店舗だった。

一歩足を踏み入れた途端、秋人は不思議な感覚に襲われた。初めて来るデパートなのに見覚えがある。

「あ」

昨日の麗美の言葉を思い出した。

「うわ、ここだ」

きょろきょろと秋人は周囲を見渡した。

「どうしたの?秋人くん」

美香が首を傾げる。慌てて秋人はなんでもないと笑った。しかし、おそらくここが昨日麗美が言ってた両親たちの居住地だ。小さくて目立たない店舗を選んだのだろう。しかし、デパ地下はゴージャスだった。駅直結なので、お弁当や土産物に力を入れているのである。

まさにうってつけの店舗である。秋人は帰ってすぐこのことを話さないと!と心のメモに最重要で書き込んだ。

「どれにしようか?」

美香が店舗案内図を見ながら呟く。秋人は一つの店名に聞き覚えがあった。東京ではここでしか買えない老舗の和菓子屋の名前だ。何となくだが時々両親の口に上っていたような覚えがあった。

「ここがいい」

と秋人が言うと美香も頷いた。

「じゃあ、和菓子はここね」

と二人でその店舗に向かった。

『吉祥松方庵』

と書かれた看板の店舗を覗くと、ガラスのケースに生の和菓子が綺麗にディスプレイされていた。棚にはどら焼き、栗饅頭、羊羹などの日持ちのする方のお菓子が並ぶ。

「美味しそうねぇ」

美香が呟くと店員さんが嬉しそうに声をかけてきた。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

ベテランの店員のようで、明らかに場違いな二人の買い物を手伝ってくれるようである。

秋人は見舞いの品で長く入所している老齢の女性であることを説明した。すると彼女は日持ちする食べやすい菓子類を勧めてくれた。そのいくつかをピックアップして包装を頼んだ。

待っている間、秋人はふとガラスケースに入ったキラキラした和菓子に目が留まった。抹茶の色をしている上部と下は餡の色であるので小豆だろうか。お菓子の上には金粉が載せられていて大変綺麗だった。思わず見入っていると

「こちらはあまり日持ちしませんが、うちの看板商品なんですよ。今は開店したばかりなので沢山ありますが、すぐ売り切れてしまうんです」

と説明をしてくれた。

「でも、二つだけいつも残すように言われてるんです」

店員の言葉に二人が無言で続きを促す。

「とある 探索者(シーカー) のご夫婦がこれが大好きで。毎日買いに来てくださってたんですが、ある日ぱったり来なくなって。もしかしたら亡くなったのかもと思いつつ、もしも来られた時に売り切れてたら残念がるので、二個だけは残して置くようにって言われているんですよ」

そう彼女は続けた。秋人は彼女を見つめた。

「如月様のお身内の方でございますか?」

「はい。息子です」

と秋人が小さく呟く。

「ああ、やっぱりそうですか。ご両親によく似ていらっしゃる」

店員は軽く目を細めた。

「今日からはもう…残していただかなくても結構です。…今までありがとうございました」

秋人が絞り出すように返答し、頭を下げた。美香がそっと優しく秋人の腕に手を添えた。

その言葉で彼らの現状を察したのだろう。店員は静かに首を振った。

「いいえ。これは感謝の印ですから。これからもずっと続けて参ります」

彼女はにこりと微笑んだ。

「私はこの店のオーナーの娘なんです。父がダンジョンブレイクに巻き込まれた時に、お二人に助けていただいたそうです。ここで再会した時に父は運命だと思ったようです。そうだ!よかったらこれ持ち帰ってください。すごく美味しいんですよ。自慢の逸品です」

彼女は見舞いの品とは別に、その和菓子を包んでくれた。

「またいつでもお越しください。本店のほうにはまだ父も顔を出しておりますので」

と彼女は言った。秋人は本店の住所が書かれたショップカードを大事にしまった。

秋人と美香は同じデパートの洋菓子売り場に向かった。

「わあ、美味しそう」

秋人は思わず感嘆の声をあげた。和菓子もいいがやはり秋人はキラキラしたケーキやゼリー、チョコレートが好きである。

「生のケーキとかよりは焼き菓子かしらねぇ」

美香の提案に秋人は首を傾げた。

「でもさっきのお店のも日持ちするお菓子だし。洋菓子はケーキとかでもいいかも…」

二人は端から順番に見て回った。

「あ、これとかいいんじゃない?一個が小さいから食べやすいかも」

と美香がプチフールのセットを指さした。色とりどりの果物ごとに小さなケーキが宝石のように詰められている。

「綺麗」

秋人はうっとりとガラスケースを見つめた。

「これにします。あ、3セットください」

「3セット?」

美香が首を傾げる。

「1個はうちのお土産で、もう1個は美香のお土産。収納に入れておけば腐らないから大丈夫」

と秋人が笑うと美香は苦笑を零した。そして、そのフレーズで例のチョコレートケーキの事を思い出した。

「そういえば、チョコレートケーキは食べた?」

と何気なく尋ねると、秋人が露骨に視線を反らした。

「あ、食べてない!」

「だって、勿体なくて」

ごにょごにょと言い訳する秋人を困った顔で美香が見つめる。根負けした秋人が

「ちゃんと食べます」

と言うと、美香は嬉しそうに頷いた。

でも、秋人が本当に食べたいのはあの新潟で譲ってしまったケーキだ。おそらくどんなに懇願しても姫は返してくれないだろう。

「レベル100になったら返してもらおう」

と秋人は心に刻む。龍は執念深いという姫の言葉はあながち間違っていないのだ。