作品タイトル不明
864.フリーズブルームの球根
球根は純白の色を除けば、とても大きいかぼちゃに見えるだろう。
「もぐ。この根もなにかに使えるのですもぐ?」
フラワーアーチャーの根には微量の魔力がある。
そのため良質の薪、あるいはちょっとした薬に適している。
似たようなフリーズブルームも同様の用途があると推測したのだろう。
「いや、この根は……」
このフリーズブルームの球根、ゲームと同じ利用法なら……植物系の魔力を注ぎ込めばいい。
俺は手をかざし、ゆっくりと緑色の魔力を注ぎ込む。
「おー! 大地の魔力を感じるです!」
球根からゆっくりと白く細い根が空中へ伸びる。
その根から、じんわりと冷気が出てきた。みんなの視線が細い根に注がれる。
「興味深い。まだ動くんだね」
「ああ、しかし特定の魔力でないとダメだが」
確か植物か冷気の魔力でないと、こうはならなかったはずだ。
「非常に厳しい条件ですね……」
「記憶の片隅に覚えていてよかったよ」
実際にはフリーズブルームを見て思い出したんだが。
ゲームの中では、他にアイテムを使うことでも条件は満たせる。
しかしそうしたアイテムがこの世界にはない。
なのでゲーム中よりも条件は厳しい。
「もぐ、冷気が形になってきましたもぐ!」
俺の魔力が球根を伝わり、空中に氷の彫刻を作り上げる。
小さな実と枝である。ステラが彫刻を手に取った。
「これは……ヒールベリーの枝と実ですか?」
「ああ、少し不格好だが……。球根の使い道はこれなんだ」
「きれいですー!」
「よくできてるもぐ!」
球根に魔力を注ぎ込むと、イメージを反映した形の氷が生まれる。
ちょっとした遊びみたいなものだが、氷の彫刻は実に美しい仕上がりになる。
「なるほど、球根の中で魔力を変換して……」
ナナがふむふむと球根を覗き込んでいる。
「ものすごいアイテム、というわけではないがな」
「もしかして、永久に氷が作れるのですか?」
ステラが氷のヒールベリーの枝を掲げ、下から見上げる。
「いや、それは無理だな」
「まさか、わたしのパワーのせいで……?」
「かなり形はアレになっちゃってるね」
「もぐ…」
「です…」
球根はべっこりとへこんでいる。
剛力のステラのフルスイングを受けたのだから、まぁ……。
「うぅ、もう少し手加減をしておけば……」
「そ、そうじゃないんだ。球根自体もいずれ魔力を失い、ただの根になる」
俺は慌ててステラに言った。
「それなりに彫刻は作れるが、決して永久に使えるわけじゃないんだ……」
「そ、そうでしたか……」
「うーん、残念だね。研究材料として、面白そうなのに」
「まぁ、それでもちょっとの間は氷を出せるからな」
製氷の魔法具もあるが、氷を生み出すのはかなりの魔石を消費する。
しかも形を好きにできるわけじゃない。
それに比べれば、フリーズブルームの球根は融通がきくのだ。