軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

865.球根の悲劇

「僕の『がりがり氷』も完成に近づくかもね……ふふっ」

「ふぇ、また謎の魔法具が……」

名前からして、氷にまつわる魔法具かな?

まぁ、魔法具作りはナナのライフワークだしな、うん。

たまに爆発したりするが……。

しかしそれとは別に、氷の彫刻の出来が良くない。

言われればヒールベリーの枝とわかる程度だ。

「……かなり難しい。イメージ通りにならない」

「外部に物を生み出す系の魔法は、イメージが大切だと仰っていますものね」

「これも同じはずなんだが……」

ただ、俺の美的センスがそこまでではないという話も……。

植物魔法のようにうまくいかない。

「よし、もう一度やってみるか……」

と、俺は再び球根に魔力を注ぎ込もうとして――。

バキィ!

球根に大きなひび割れが入った。

「あっ」

俺が声を上げると同時に、ひび割れがどんどん広く深くなっていく。

数秒後、球根は真っ二つに割れてしまった。

「……割れた」

「はぅぁ……! や、やっぱりダメでしたか」

「ま、まぁ……元々、長持ちはしないモノだからな」

やはりそれほどの耐久性はなかったか。

一発でダメになってしまった。

「でもコレ自体は、僕の研究に使えるかも」

「使えそうなら是非もない。持ち帰ろう」

そこでララトマが一歩、前に出てきた。

「うーん、でもまだ大地の魔力を感じるです」

「もぐ。エルト様の魔力じゃないもぐ?」

「もっと、凝縮しているというか……ちょっといいです?」

俺たちは少しだけ後ろに下がった。

ララトマが球根の割れ目をがさごそとしている。

ナナは気になるのか、頭を左右に揺らして覗き込もうとしているな。

「えーと、この場合は……っとです」

ララトマが身体を起こし、笛を手に取る。

そのままララトマは笛を口に当て、演奏を始めた。

静かで――しんとした曲だ。まだ冷気漂うこの広間にふさわしい。

同時に球根の割れ目に魔力がぞわぞわと集まっている……?

「ほーん、これは興味深いねぇ」

ひび割れた球根に遍在する、ごくごく小さな魔力。

それだけではなんの役にも立たないレベルだ。

だが、ララトマの演奏で活性化し、凝縮されている。

この魔力には覚えがあった。

まさか……?

「これでよし、です!」

ララトマが球根に手を突っ込み、じゃーんと掲げる。

その手のひらには、爪ほどの大きさの石があった。

一度、フラワージェネラルの時に俺も手に入れたからわかる。

黄色い魔力の塊――グロウストーンだ。

食べることで新しい魔法やスキルを獲得することができる、レアアイテムである。