軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

373.水の魔術師

とりあえず、着ぐるみはマシマシにすることで話は決まった。

予備のパーツは豊富だし、必要なものはザンザスから取り寄せるそうだ。

向こうには数十体分の予備パーツやらがあるらしい。

「腕がもげても、着ぐるみはダメですからね」

そうだな、腕だけ生身の着ぐるみとか怖すぎる……。

ナナはぽむっと胸を叩いて請け負ってくれた。

「パーツはあるから、出発までには間に合うよ」

ということだ。

そうしてナナの家をステラと後にする。

ステラはるんるん気分のようだな。

「楽しみですね〜」

「そうだな、どうなるのか……」

と言っても、不安はそんなにない。

ナナの着ぐるみを見過ぎたせいか、レイアの帽子のせいかどうも感覚が麻痺しているかもだ。

「思い切り、かわいくしましょうね……!」

「お、おう……」

これで大体、必要な人間には話をした。

討伐隊は俺の家族とナナ、レイア……あともう一人か。

村を歩いているとお目当ての人物がちょうど視界に入ってきた。

果樹園でお仕事をしているな……。

「やはり彼女にも声を?」

「水のお仕事なら、彼女も適任だろう」

近付いていくと、彼女もこちらに気が付いたのか手を止める。

獅子の頭がついた杖、水色の魔術師の服。

それと頭に乗っているコカトリス帽子。

「エルト様、何かありましたか?」

関西弁ぽいのはやめた、ジェシカである。

理由――他の人との意思疎通に問題があったらしいのだ……。

「今、ちょっといいか?」

「大丈夫ですわ」

ジェシカは今、主に水関係で働いている。

レインボーフィッシュの飼育やドリアードへのお水の供給など……。

彼女の水魔法のおかげで、ぽんぽん水が出せるからな。

俺にとって関西弁ぽく聞こえた喋り方は、他の人にはもっと変わって聞こえていたらしい。

なので今はこの口調になっていた。

「実はな――」

あらましを説明すると、ジェシカはふむふむと頷いた。俺が参加することもついでに伝える。

着ぐるみ着用での参戦は、まぁ……伝えるのはあとでもいいだろう。

「なるほどですわ! それでしたら私の魔法が役に立ちますわね。同行いたしますわ!」

ステラが興味深そうに尋ねる。

「ほうほう、どんな魔法があるのでしょう?」

「水中で呼吸できるようになる魔法とか……」

「…………」

ステラがピシっと固まる。

おや?

その魔法があったら、もしかして――。

「……それは便利な魔法だな」

着ぐるみを着たまま、潜らなくても良くなるわけか。

変装はどうあれ必要だろうが。

「べ、便利な魔法ですね……!」

ステラの目があっちこっちに泳いでいた。

多分、俺と同じことに思い当たったのだろう。

「でも万能ではありませんわ。同時だと数人にしか効果がなく、私自身も魔力を使いますので――戦闘員としては全力が出せなくなります」

「な、なるほど……!」

ステラが気を取り直した。

「つまり潜水できる人は、自前で潜水したほうが良い……と!」

「そういうことですわ」

「ということらしいので、エルト様……!」

ぐっーとステラが親指を立てる。

その様子にジェシカが首を傾げる。

「???」

「深くは考えないでくれ……」

「わ、わかりましたですわ」

ジェシカの同行も取り付けた。

これでリヴァイアサン討伐のメンバーは決まりだな。

Sランク冒険者のステラ、ナナ。ジェシカもAランク冒険者だ。

ウッドも水中で戦えるし、戦力としては十分だろう。

そしてふと、水中呼吸の話で思い出してしまった。

「どうかされました? なんだかはっとしたような顔をされていますが……」

「い、いや……大丈夫だ」

ステラは鋭いな。

こういう変化はほぼ見逃さない。

だが、すっかり抜け落ちていた。

とても重大なことなんだが……。

俺、泳げるか?