軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

290.意外な特性

ぱらぱらとめくり、その都度わからないところを確かめること一時間。

やっと一通り読み終えた。

「ふぅ……とりあえずはこんなところか」

書類を揃えてテーブルの上に置く。ナールも俺に続いて書類を読んでいる。

「にゃー……」

ナールも書類をいったりきたりして読み終えたようだ。難しい顔をしている。

「にゃー……」

イスカミナがずいっと身を乗り出して俺とナールを見る。

「どうですもぐ? もちろん、これは叩き台ですもぐ!」

「技術的なことはさておき、想定されるコストとリターンはわかった。この村とザンザスを繋げられれば、確かに利益は大きいと思う」

問題は資金面。もし魔導トロッコの路線をザンザスまで伸ばすとする。

そうすると最低でも金貨五千枚かかる……らしい。

もちろんこれは道や地下広場が適切であるならば、という但し書き付きだ。地下通路がアップダウンしたり、狭くなったりしたらその限りではない。

「一部だけでも効果はありますにゃ。全線を繋ぐのは財政的には……なかなかの大金ですにゃ」

「そうだな。でもとりあえず、短距離路線でチャレンジしてみるのは悪くなさそうだ」

第二地下広場を倉庫や農地にするのだけでも、魔導トロッコで結ぶ利益はあるように思える。

使える土地は貴重だからな……。水も流れてるし。

「そうですにゃ、それならば長期的に回収はできるかと思いますにゃ」

「もぐ! 魔導トロッコは長い目で……もぐ!」

「そうだな、なにせ大事業だ」

「あとは可能なら、ドワーフの国との繋がりも欲しいところですもぐ」

「ふむ……。魔導トロッコの技術はドワーフが進んでいるからか……」

「もぐ。わたし達も作れますもぐが、メンテナンス部品だとか……鉄に関する部分はドワーフが一番ですもぐ」

モール族は地下で土を見たり、技術を統合させる部分ではドワーフを凌ぐらしい。

……見た目は喋って歩くモグラだしな。

しかし鉄の調達や加工では、やはりドワーフに分があるようだ。

魔導トロッコは設置して終わりではない。メンテナンスは当然必要であり、部品もいる。

そして長い年月が経過すれば、車両を更新といった大掛かりなことも必要である。

ふむ……。

あとはひとつ、気になることがある。

リターンが見合うかどうかはわからないが……。

「ちなみにこの魔導トロッコは地上で走らせることも出来るんだよな?」

「もぐ! 魔石が必要ですが可能ですもぐー!」

魔石というのは、文字通り魔力が含まれている鉱石の総称だ。主に魔法具のエネルギー源になっている。

天然モノだけでなく人工魔石も出回っており、人の生活を豊かにしてくれている。

「でもおそらく、この辺りだとパワーは足りませんもぐ。多分かなり遅いですもぐ」

「にゃ。何かお考えがおありですにゃ?」

さすがナール。

俺が何か新しいことを考えていると察したか。

「湖とこの村を結んで、リターンは見込めるかと思ってな。マルデ生物をこの村に持ってくるのは……利益的にどうなのかわからんが」

魔導トロッコの問題点は、空間に魔力が必要ということ。なければ馬車よりも遅く、運べる荷物の量も少なくなる。

だがこの叩き台の計画書によると、魔導トロッコの速度は馬車の三倍ほどを見込んでいる。

もちろんそれは魔力ある地下の話だが……。

それでも馬車より二倍でも速ければ、メリットはあるんじゃないか?

地下通路の路線よりはメリットがないかもだが、ちょっとの積み重ねが大きな変化になっていく。

路線のひとつ、バスのひとつ、車輪のひとつが日本の利便性を支えている。それを俺も踏襲したい。

「仮に馬車の二倍で行き来できれば、それだけ時間が空く。他の仕事ができるだろう」

元から高価なものを運ぶなら、長期的には元が取れそうな話だ。これはマルデホタテ貝の量と価格にもよるが。

「にゃ……。それは盲点でしたにゃ……!」

「もぐ。水産物の輸送に……重さ辺りの価格……もぐ」

ん?

ナールとイスカミナが意外そうな顔をしている。

いや、それほど突飛な話ではないと思うが……。

売れそうなものは速く運ぶのが利益になる。

現代日本では速さは正義だ。宅配だけでいくつの大企業が存在するか……。

「……この考え、珍しいのか?」

「そうですにゃ。魔導トロッコはモール族とドワーフの得意分野。それ以外ではまともなモノは……あまり聞かないですにゃ」

「でもモール族もドワーフも世界中にいるだろう?」

モール族とドワーフは大陸北部に大きな勢力圏を持っているが、そこだけに住んでいるわけではない。

現にこの村にもドワーフの技術者はいるし、ザンザスにもいるはずである。

「……もぐ。わたし達、海や川にはあんまり住まないですもぐ」

「あっ……」

どこかで読んだ気がする。

さらっとした記述だったから、忘れてた。

俺の顔を見たイスカミナがぐっとサムズアップする。とてもイイ笑顔である。

「もぐ。わたし達とドワーフ、泳ぎが不得意ですもぐ!」