軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

257.竜巻を駆け抜ける

スザザザーー!!

白い竜巻のなかをステラ達は軽快に走り抜ける。

「ぴよぴよぴよ! すっごいぴよー!」

「とりゃー、です!」

ただいまのステラは腹ばいのナナの背中に乗っている。

そう、今のナナは例えるならスノボの板のよう……。

「ちょちょちょっー!」

「滑りまくってるんだぞー!」

竜巻の内部は凍りついたスロープの連続である。

巻き上げられた雪や氷がコースを形成しているのだ。それを赤い光のステラ達が高速で滑っている。

そして四方八方から押し寄せるのは、アイスクリスタルの群れ。

手を伸ばせば届く距離にもアイスクリスタルはいる。それらはときおり光っては、青白い冷凍ビームを放ってくる。

しかし超人ステラには全てが見えていた。

前方のみならず、横や背後のビームさえステラ達にはかすりもしない。

「えーい!」

「ちょーー!?」

だが、さすがに様々なテクニックなしには回避は不可能だ。

滑りながら、器用に両足を操って重心を変える。

ナナは滑りながら……くるくるくるー!

スピンする。

「まわってるぴよー!」

「ウルトラテクニックだぞー!」

ディアとマルコシアスは大喜び。

ナナも困惑しながら、くるくると回っている。

否、回るしかないのだ。

三半規管の強いヴァンパイアは、この程度で酔うことはないのだが。

「どーやってるの!?」

「水の上を歩く技の応用です!」

「そんなのあるの……!?」

「今度、教えますね……! 要は水の上を歩くコツは氷の上でも通じるというだけです!」

氷も水ならば、魔力を通すことでうまく移動することができる。

これは古今東西、あらゆる流派で重視されていることだ――つまり地の利を得るということである。

ステラの闘法は脳筋のゴリ押し戦法にあらず。

十二分の力を発揮することにこそ、主眼を置く。

……それがナナスノボになったのは、全くの偶然に過ぎない。

他に板になりそうなものがなかったのだ。

そしてステラの手にはデュランダルとフラガラッハ――愛用の二本のバットが握られていた。

「それでこれからどーするのさ。まともな攻撃は効かないよ!」

「ええ、そうですね……!」

ステラがいかに超絶的なパワーを持つとはいえ、アイスクリスタルの群れは厄介だ。

ナナの見立てでは、いかにステラと言えどもアイスクリスタルの復元力を超えるには至らない。

攻撃してもすぐに元に戻ってしまうだろう。

「――そこです!」

ステラは叫ぶと、二つのバットを閃かせる。

カッキーン、カキーン!

宙を舞うアイスクリスタルが弾かれ、飛ばされる。

「その攻撃だと……」

「ええ、もちろんアイスクリスタルは砕けないでしょう。しかし……」

カッキーン、カキカキカキカッキーン!

ステラの弾き飛ばしたアイスクリスタルが、竜巻の中を飛び回る。

砕けない結晶は、勢いが止まるまで跳ね続ける。

そして――。

ピキィッ!!

あるところでアイスクリスタルの衝撃が限界に達し、白い光を発する。

「ぴよ……!? なんか、われたぴよ?」

「カンカンと弾かれまくって、上で何か起きたんだぞ?」

限界まで上を見上げるナナが驚愕する。

彼女の目にははっきりと映っていた。

竜巻からアイスクリスタルの小さな群れが分離する瞬間が――それは初めて見る光景であった。

「そんなことが……!? 群れが分解されたの!?」

「まだわずかですが。うまくいきましたね」

そう、今の攻撃で分解されたのは竜巻のほんの一部に過ぎない。

しかしこの規模のアイスクリスタルから一部を分離させるだけでも、途方もない労力がかかるはずだった。

それをステラはたったひとりで成し遂げたのだ。

「なにがおきたぴよ?」

「アイスクリスタル同士が繋がっている魔力の結束点、そこを崩したんです」

「めちゃくちゃだ……。そんなの、フツーできないよ」

「まぁ、動き回るアイスクリスタルをうまくぶつけないといけないですからね。このばびゅーん状態でないとさすがに無謀です」

うんうんとステラが頷く。

「この状態なら、ベストな位置を……よっと!」

カッキーン、カキーン!!

ステラがまたも二本のバットを振り抜く。

そのスイングはアイスクリスタルをとらえ、上空へと弾き飛ばした。

カキカキカキカッキーン!!

またも連鎖反応が起きて、白い光とともにアイスクリスタルの小さな群れが分離する。

ピキッ……!!

「あともう一つは、分離させた群れですが……これはこれで倒さないと。この私の攻撃は、まだ分割しただけですから」

「……いや、それなら大丈夫」

ナナがぴっと羽を竜巻の外へと向ける。

白い竜巻の向こうに――うっすらと黒い影のようなものが浮かんでいた。

かなりの大きさである。

その黒いシルエットに、ディアは見覚えがあった。

「……からすぴよ? おっきい、からすぴよ?」

「大きすぎるんだぞ」

「あれは……!」

ナナにはあのシルエットに見覚えがあった。

「強い魔力を感じますね」

ステラがそう言った直後、黒い影から小さな鳥のような影がいくつも放たれた。

【影魔法 黒鳥】

それらは分離したアイスクリスタルの群れに命中し――小さな氷の破片へと砕いていく。

「まほーぴよ!」

「影魔法なんだぞ」

「うん……あれは僕の身内、兄の魔法だ」

「お兄さん……ナナのですか!」

ごくりとステラは喉を鳴らす。

ナナの兄ならば大貴族なのは間違いない。

しかしそういうことや影魔法よりも、気になることがある。

「……まずいです」

ステラは思った。

今のステラは思いっきりナナの背中に乗って、スノボ軌道をしているのだ。

この姿のナナを見たら、どう思われるか……。