作品タイトル不明
109.疲れた。
オウ魔界王と創造神が、パネルから消える。
「はぁ」疲れた。
椅子に深く座って目を瞑る。
考えていた以上の成果だな。
うん、創造神はかなり話の分かる神だった。
フィオ神が選んだ理由が分かったような気がする。
「それにしても、疲れた~」
正直、どんな創造神が来るかかなり緊張した。
「いい結果になって、本当によかった」
テーブルの上の果実水を飲む。
コップに温度キープの魔法を付与しているので、冷たいままだ。
「おいしい」
コップ1杯の果実水を飲み干し、ピッチャーに入った果実水も飲み干す。
かなり喉が渇いていたみたいだな。
緊張のせいで、喉が渇いていた事に気付かなかった。
「……」
ここまで緊張したのは、神と言う存在が少し怖いからだろう。
俺は強くなった。
でも、落ち神に襲われた時の絶望感を忘れたわけではない。
「アイオン神やフィオ神は大丈夫なんだけど」
彼等以外の神だと、どうしても無駄に警戒してしまう。
まぁ、それは仕方ないよな。
あれほどの殺気をぶつけられたのは初めてだった。
しかも仲間を殺されかけ、俺は死にかけた。
その結果が今だから、あれも必要な事だったのかもしれないと思っている。
でも、気持ちの面では別だ。
「まぁ、これも徐々に収まって来るだろう」
焦っても仕方ない。
きっと、時間が解決してくれるだろう。
「俺には、長い時間があるからな。長い時間か」
その時間を考えると、憂鬱になるよな。
コンコンコン。
「主。今、大丈夫ですか?」
執務室の扉が叩かれ、クウヒの声が聞こえた。
「大丈夫。入って来ていいぞ」
扉が開くと、クウヒとウサが入ってくる。
今日、創造神と話をする予定だと話すと、仲間達にかなり心配された。
落ち神の記憶は俺だけではなく、仲間達にも傷を残してしまった。
まぁ、これも時間が解決してくれるだろう。
「話し合いは無事に終わった。いい結果になったから、よかったよ」
俺の言葉に、ホッとした表情を見せるクウヒとウサ。
「心配してくれてありがとう」
「いえ。あの、創造神はどんな感じだったの?」
ウサの心配そうな表情に、彼女の肩をポンと叩く。
「いい奴だったよ。彼は神国を変えると思う」
俺の言葉に、驚いた表情を見せるウサとクウヒ。
この2人は、神に全く期待していない。
それどころか、憎しみに近い感情を持っている。
でも、それも仕方ない事だ。
見習いとはいえ、神に近い存在のせいで奴隷として苦しんだのだ。
原因となった存在を、憎むのは当然。
俺はそれを悪いとは思わない。
「そっか。いい奴なのか」
クウヒが複雑な表情をする。
「クウヒ、ウサ。『いい奴』と言うのは。俺の意見だ。2人が気にする事はない。創造神がどんな者なのか、それは自分の目で確かめたらいい。すぐに答えを出す必要もない。彼との関係は、これから長く続くだろうから、ゆっくり答えを出したらいいよ」
俺の言葉に、ウサとクウヒが頷く。
「分かった。自分達で判断する。それで嫌いになってもいいのか?」
クウヒの言葉に頷く。
「もちろん。それが考えて出した2人の答えなら、問題ない」
2人の肩をぽんぽんと軽く叩く。
前までは頭を撫でていたけど、今は2人とも俺より背が高い。
獣人の第2成長期らしい。
普通は10歳前後で起こるらしいが、栄養が足りていなかったため通常より遅いそうだ。
「そういえば、何か用事か?」
「あっ、そうだった。フィオ神から伝言があって、今日の夕方に来るらしいよ」
フィオ神からクウヒに伝言?
ロープに頼めば直で伝言が俺に届くのに、どうしてクウヒに?
「その伝言は、クウヒに届いたのか?」
「違うよ。アイオン神が伝言を預かって来たの」
アイオン神?
「アイオン神が来ているのか?」
ウサを見ると、首を横に振られる。
違うのか?
「来たけど、マッシュがすぐに迎えに来て帰ったよ。主を待ちたかったみたいだけど、時間が無かったから近くにいた俺達に伝言を頼んだんだ」
クウヒの言葉に首を傾げる。
マッシュが、来てすぐのアイオン神を迎えに来た事は今までに無い。
彼女に何があったんだ?
「アイオン神は、会いたくない神から逃げ回っていたみたい」
ウサの言葉に溜め息が出る。
問題が起こったわけではないみたいだな。
「分かった。伝言をありがとう」
お礼を言うと、2人は嬉しそうに笑った。
「フィオ神が来るなら、何かうまい物でも一つ目に作ってもらうか」
彼は何が好きだったかな?
「それは大丈夫だと思う。一つ目達の指示で魔族達が何か用意し始めていたから」
ウサの言葉に苦笑する。
あの一つ目達が、俺の指示を待つわけがないか。
くっ、悲しくなんてないからな!
「それなら任せて大丈夫だな」
そう言えば、創造神が気になる事を呟いていたな。
「でもフィオ神は、一度俺を裏切った」と。
おそらく彼は、この言葉が口から零れた事に気付いていない。
神妙な表情で考え込んでいる時に、ポロッと零れた言葉。
自分の中で考えを纏めているのだろうと思ったから、あの時は何も聞かなかった。
でも、落ち着いてくると気になる言葉だよな。
「フィオ神が来るなら、聞いてみるか」
本当の事なのか。
それとも、何か事情があったのか。
もし誤解なら、創造神が「裏切られた」と思っている可能性があると、言っておかないと。
テーブルに並ぶ料理に笑みが浮かぶ。
そう言えば、フィオ神はトマトが最近は好きだったな。
「見事に、赤い色の料理ばかりだな」
「はい。フィオ神の好きな物を並べるとこうなりました」
一つ目リーダーの頭を撫でる。
「ありがとう。魔族達にもお礼を言っておいてくれ」
「はい、分かりました」
ウッドデッキのいつもの席に座ると、フィオ神が来るのを待つ。
彼の事だから、きっと夕飯の時間前に来ると思うんだけどな。
「あっ、来た」
庭の隅に、馴染みの気配を感じた。
見ると、フィオ神が呪界に降り立ったところだった。
「いらっしゃい」
フィオ神が俺を見て片手を上げると、ウッドデッキに来た。
「お邪魔します」
「どうぞ。まずは食事にしよう」
テーブルに並んだ料理を、次々に食べるフィオ神。
いつもより勢いがある。
「どうしたんだ?」
「悪い。忙しくて昼を抜いたから腹が減っていて」
「そうか。忙しいみたいだな」
俺の言葉に、苦笑するフィオ神。
そして俺を見ると、
「創造神を巻き込んだ問題で、11柱の神がその地位を失った」
そんなに関わっていた神がいたのか。
懲りないな。
「はぁ、また調整が必要になりそうなんだ。今いる神だけで、色々な事を回さないといけないから」
疲れた表情で笑うフィオ神。
今までも神が足りないと言っていたのに、ここにきて11柱が抜ける。
かなり大変そうだ。
「あっ、星をいくつか呪界に移動させる事になったから」
「助かる」
少しは手助け出来そうかな?
まぁ、本当にちょっとだけど。
そう言えば創造神が、魔界に星が移動出来るか試すと言っていたな。
他にも、このままでいけば半分の星が崩壊する事が分かったとも。
この話は、俺がフィオ神にしていいものか?
……駄目だな。
うん、創造神が自分で言う事だ。
「それで、どうだった?」
フィオ神の言葉に首を傾げる。
「どうとは?」
「創造神だ。話してみて、どう思った?」
フィオ神を見ると、不安そうな表情をしている。
あぁ、それが聞きたくて来たのか。
「大丈夫だろう。これから神国は変わるよ」
「そうか」
ホッとした様子のフィオ神に、裏切ったか聞くのは止めた。
誤解があったんだろう。
「創造神とよく話した方がいいぞ」
「えっ? そうか?」
「あぁ、ここで俺と話すように話せばいい」
「そう、か。そうだな。変わっていかないと」
これで大丈夫だろう。