作品タイトル不明
110.私のせい?
―アイオン神視点―
「あ~、ムカつく!」
「アイオン神、声量を抑えて下さい。聞かれますよ」
私の護衛でもあるマッシュから窘められるが、苛立ちが収まらない。
「今の創造神が属していた派閥だから何だというんだ?」
落ち神の時代では、力を持てただろう。
でも今は、違う。
神国が変わってきている事に、いい加減気付きやがれ。
「何を言われたんですか?」
「管理者のいなくなった星の暴走が、私のせいらしい」
「はっ?」
「確かに私があの星の監視をしていたが、星の暴走を事前に察知するのは無理なんだ。それを知っていながら」
「アイオン神のせい?」
マッシュの声が少し低くなる。
「元は管理していた神が、落ち神と一緒に愚かな事をしていたせいでしょう? しかも、その次に選ばれた神が能力不足で管理出来なかったため、仕方なくアイオン神が監視していただけです。早く専任の神を選んで欲しいとお願いしていたのに」
その通り。
しかも、あの星に関わった2柱の神と私は一切関係が無い。
それなのに、私のせいだと言って来た。
「屑どもが、無理難題を吹っ掛けてきやがって。しかし、何が奴等をここまで突き動かしたんだ?」
あんなに強気に出られるのはどうしてだ?
「奴等の派閥が少しずつ力をつけてきたのは事実だけど」
何かが、おかしい。
今、神国には大きな派閥が3つある。
1つは、元落ち神の派閥。
前に比べると権限も所属している神も減ったが、まだまだ力がある。
抱えている神が多いからな。
次に、現創造神が属していた派閥。
所属している神は多くないが、今の創造神を支えているという事で態度が悪くなってきた。
でも、今日の様な無理難題を言う事は無かったのに。
最後に、現第1位のガルアル神が代表の派閥。
所属している神の数が、今一番多い派閥だ。
と言っても、ここは自由な考えの神達が集まったような感じだな。
派閥と言われているが、実際は他のところに所属したくない者達の集まりだ。
「無理難題とは、なんですか? 奴等アイオン神に何をさせようとしているんですか?」
「『管理者のいなくなった全ての星について、現状を速やかに把握し暴走前に星を破壊しろ』と、言われたよ」
星の破壊。
それは決して簡単な事ではない。
星に属している全ての魂を移動させ、星に残った力を暴走させる事なく抜き取った後でなければ、周りの星に破壊の時に起こる波動で攻撃してしまう。
いや、どんなに準備をしても、少なからず影響を与えてしまう。
そもそも魂の移動は非常に繊細な作業だし、残っている力を抜き取るのは命がけだ。
やれと言われて、すぐに出来る事ではない。
「『破壊しろ』なんて、ありえませんよ」
「あぁ、星の破壊は少なからず周りに影響を与えるからな。だから、他に手が無い時にだけ、許される行為だ」
説明はしたが、笑っていたよな。
しかも周りに影響を与えず破壊する方法があると言っていた。
その方法を聞いたが、道具を使うだけで簡単だと詳しい話をしようとはしなかった。
これは、かなり怪しい。
「星を破壊する道具か。いったい、どんな道具なんだ?」
「その星に属している魂を使って、内部爆発させる道具だよ」
「なんだと!」
驚きの内容に声を荒げ、声が聞こえた方を見る。
「えっ、誰?」
視線の先には、子供?
「あれ?」
ジッと子供を見る。
何処かで見たような気がする。
でも、何処で見た?
「久しぶり」
子供は私に向かって片手を上げる。
「あぁ、久しぶり」
知り合いなので、会っているはず。
でも、何処で会ったのかが思い出せない。
「呪界王に、似ていらっしゃいますね」
マッシュの言葉に、ハッとする。
そうだ!
翔の……子供?
えっ、翔にいつの間に子供が出来たんだ?
そんな報告は貰っていない。
「君は誰ですか?」
マッシュが、翔の子供だと思われる子に視線を合わせる。
「ロープだよ」
翔の子供はロープと……ロープ。
あれ?
ロープと言えば、魔幸石と同じ名前だな。
翔のネーミングセンスは問題があると思っていたけど、子供にそれは無いだろう。
「可哀そうに」
マッシュも同じ事を思ったのか、ロープの頭をそっと撫でてあげている。
「可哀そう? えっ。何が?」
ロープの質問に、答える事が出来ない。
「お父さんのせいで、名前が残念だ」なんて、言えない。
「んっ? もしかして誤解してない? 俺は、魔幸石のロープだけど」
「「…………えっ?」」
魔幸石のロープ……魔幸石のロープ?
いつも声だけの?
呪界でロープの本体を見たけど、こんな姿ではなく大きな魔石だった。
「いつの間に、姿を変えたんだ? えっ、魔幸石はそんな事まで出来るのか?」
「魂を2つに分けたんだ。1つは魔幸石の中に、もう1つは新たな体に入れたんだよ。神は挑戦しない方がいいよ。おそらく魂が崩壊するから」
今、ロープから恐ろしい話を聞いたような気がする。
魂を2つに分けた……気のせいかな?
うん、気のせいだろう。
魂を2つに分けるだなんて……あってはならない事だから。
「アイオン神、残念ながら本当の事だから」
「……そうか」
まぁ、ロープが嘘を言うはずが無いから、本当なのだとは思った。
でも、認めたくなかった。
「でも、どうやって?」
「落ち神が指示を出して行っていた研究の1つだよ。見なかった? えっと……『魂の有効活用法』の中にあった『1つの魂を分けて利用する方法』を利用させてもらったんだ」
魂の有効活用法……確かに、見たな。
あの報告書の中に、魂の分け方が載っていたのか?
読んだ気はするけど……詳しくは思い出せないな。
「それは違法だろう?」
神のルールで完全にアウトだ。
あっ、ロープは呪界の者だから神国のルールは関係ないか。
「そうだけど、必要だったから」
「そうか」
ロープは呪界に属している者だ。
神国に属している私が、口を出す事ではない。
分かっているけど、呪界が不利になるような事はしない方がいい。
「神達には、知られない方がいいぞ」
まだ、神国には不安要素があちこちに転がっているから。
「分かっているよ。アイオン神とマッシュだから話したんだ」
それなら、大丈夫か。
マッシュを見ると、真剣な表情で頷いた。
我々から、この事が漏れる事は無いな。
「あっ、そう言えばさっき」
翔に似た子供の出現で、忘れていたけど。
「魂を使って内部爆発させようとしているのは、本当なのか?」
魂を使うなんて、違法だ。
「うん、本当。リースリア神は、ピスリアリ神と手を組んだみたいだね」
リースリア神は、現創造神が属していた派閥のトップ。
ピスリアリ神は、落ち神が作った派閥の現トップだ。
しかもピスリアリ神は、ガルアル神が警戒している神の1柱だ。
「どうして、そんな事を知っているんだ?」
奴等が手を組んだ事を知れたのは嬉しいが、どうやって知ったのかが気になる。
危険な事をしているのでは?
「主がこの世界の事を気にしているから、皆で協力して情報を集めているんだ」
情報を集めているのは、前からだから知っている。
呪界が出来る前からだからな。
それより「皆」が気になる。
「皆って?」
「ふふふっ。お茶会で出来た主の友人達。それと、この子達」
お茶会?
翔はそんな事をしているのか?
それに、ロープの手の中にいる小さな存在に視線を向ける。
形は孫蜘蛛だよな?
「どうして真っ黒なんだ?」
ロープの手の中にいる孫蜘蛛達は、なぜか真っ黒な色をしている。
それに微かに感じるこれは、呪い?
「呪いの結界で守られた孫蜘蛛達だよ」
「はっ?」
呪いの結界?