軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

91.弾かれる力。

―サブリーダー視点―

魔界にある洞窟から出ると、目の前に広がるのは平坦な大地です。

あの崖しかなかった大地が、見事なまでに平坦です。

さすが蜘蛛達とアリ達が力を合わせただけはありますね。

本当に凄いです。

そして、その大地に徐々に作られていく家。

今はまだどの家も途中ですが、あと少しで完成していくでしょう。

これでようやく、魔族達の生活の土台が出来ます。

「サブリーダー。確認してもらいたい物があるのですが、いいでしょうか?」

魔族の声に、片手を挙げて応えます。

「どうしましたか?」

「これが、地面を掘ったら出てきました。石とも違うようで、何か分かりますか?」

魔族の手の中には、大きな……種でしょうか?

直径5㎝ほどあります。

「種だと思います」

この魔界では、植物はほとんど育ちません。

育っている物もありますが、どれも小さな種しか作りません。

だから、大きな種があるのはおかしいのですが、どう見ても種です。

「種ですか? これが?」

不思議そうに種を見つめる魔族に、少し笑ってしまいます。

「はい。見つけたのはこれだけですか? 他にもありますか?」

魔族から種を受け取り、彼を見ます。

「これだけです。周りを掘っても何も出てきませんでした」

私と視線が合ったせいか、魔族は少し緊張しているようです。

なぜか私は、ちょっとだけ恐れられているんですよね?

どうしてでしょうか?

「報告をありがとうございます。これはこちらで調べてみますね」

「はい。では、失礼いたします」

ホッとした表情をする魔族を見送ります。

本当に、どうして恐れられているのでしょう?

何かした覚えはないのですが。

「さて、これはどんな植物の種でしょうね」

とりあえず、種の中の力を調べてみましょうか。

「あれ? 種の中に強い力を感じます。という事は、もしかしたら発芽するかもしれませんね」

魔界で育つ植物の種には、闇の魔力が内包されています。

そしてその強さによって、発芽するかしないか分かります。

この種の中の力は、発芽する強さを持っています。

これは、挑戦するしかないですね。

でもどこで育てましょうか?

「種の大きさから、なるべく広い場所がいいですよね」

発芽するか分かりませんが、育った場合の事も考えて場所を探す必要があります。

家が建つ場所からは少し離れた広い場所が理想ですが、あるでしょうか?

「どうしたのですか?」

傍に来たボルナック魔神に持っている物を見せます。

もしかしたら、これが何か知っているかもしれません。

「……石ですか?」

残念、知らないようです。

「これは植物の種ですよ」

「これが?」

ジッと種を見つめるボルナック魔神。

この反応は、先ほどの魔族と同じですね。

やはり、この大きさの種はかなり珍しいのでしょう。

「この種を埋める場所を考えていました」

「育てるのですか?」

ボルナック魔神の驚いた表情を見ながら頷く。

「発芽するか分かりませんが、せっかくなので挑戦しようと思います」

まぁ、今まで土の中にあったのに発芽していないので、あまり期待はできませんが。

でも、もしかしたら発芽して育つかもしれませんからね。

やはりちょっと期待してしまいます。

「それなら、この町の中央にどうですか?」

「えっ?」

この町ですか?

今、家を建てている場所は、いずれ町にする予定です。

そのため、家を建てる前に区画整理を行いました。

だから、町の中央には公園がある事を知っています。

「それはつまり、公園で育てるのですか?」

どんな植物なのか、しかも育つのかも分からないのに?

「はい」

まぁ、公園はかなり広めにとってあるので、もしも育って大きな木になっても問題ないでしょう。

そして育たなかったとしても、それは仕方ないです。

「あの場所なら、魔族達が管理してくれると思います」

確かにお願いしたら管理してくれるでしょう。

「そうですね。公園にしましょうか」

その公園は、まだ柵で囲ってあるだけで何もありませんけどね。

「では、さっそく埋めに行きましょう」

ボルナック魔神を見ると、好奇心が隠しきれない表情をしています。

「このまま埋めてもたぶん発芽しませんよ。そうですね……水に数日浸けてから埋めてみましょう」

今の状態で埋めたら、これまでと同じです。

なので、とりあえず水に数日浸けてから挑戦してみましょう。

「分かりました。埋める時は声を掛けて下さいね」

「はい」

かなり楽しみにしていますね。

発芽するといいのですが。

バチン。

バチン。

「もうお昼ですね」

音が聞こえた上空を見上げます。

今の音の正体は、結界に「何か」がぶつかり、弾かれた音です。

初めてこの音を聞いたのは、結界を張った初日。

あの日は、ぶつかって来た物を探しました。

でも、見つかりませんでした。

この「何か」は毎日ほぼ同じ時間に結界にぶつかり弾かれます。

結界を張った初日から、毎日、毎日。

休みなくです。

オウ魔界王の指示で調査しましたが、分かった事は「力」がぶつかっているという事だけ。

その力が何処から来ているのか、今のところ不明です。

何処から来るのか分からないため、対処も出来ないんですよね。

あの音にはなれましたが、時々とても不快に感じます。

「あっそうでした。サブリーダー、結界に弾かれている力ですが。負の感情が籠められている可能性があるそうです」

負の感情ですか?

「力の解析が出来たのですか?」

結界にぶつかる場所が毎回異なるため、捉えられないと聞いていましたが。

「結界に残った痕跡から、調べたみたいです」

なるほど。

負の感情ですか。

魔界で生まれた力なら、ありえるでしょう。

「あの……あれは?」

ボルナック魔神の指す方を見ると、空の一部が歪んでいます。

「空間が何処かに繋がるようです」

魔界に無理やり繋がってくるのは神国です。

また、何かするつもりなのでしょうか?

「ボルナック魔神、すぐに他の魔神達に警戒態勢を取るように言って下さい」

「分かりました」

ボルナック魔神が、オウ魔界王の城に向かいました。

空間が繋がるまでに俺が出来る事は……特にないですね。

何をしてくるのか、見極めるのが大切ですね。

「サブリーダー。神国が襲ってくるのか?」

親アリさんの言葉に、首を横に振ります。

「そこまで愚かではないですよ」

……たぶん。

「そうか。あっ、繋がった!」

早いですね。

さて、神は何をするつもりだ?

「「えっ?」」

空の歪みが消えると、穴が出来た。

そしてその穴から、パラパラと何かが落ちて来るのが見える。

「なんだ? あれ……もしかして、神族か?」

親アリが不思議そうに首を傾げます。

形から判断すると、神族でしょう。

神が落とされる事は少ないでしょうから。

それよりも、落ちて来る神族達が、苦しんでいるように見えるのは気のせいでしょうか?

「行きましょう」

「危険では?」

「勘ですが、すぐに彼等が落ちてくる場所に行かないと駄目なような気がします」

俺の言葉に、親アリは他のアリ達に付いて来るように言うと俺の後に続きます。

「場所は……あっちですね」

結界の外に出て、穴の位置と落ちてくる場所を確認します。

「飛ばしますよ」

「了解」

神国から落ちてきた神族に向かって、一気に速度を上げます。

近づくにつれ、苦しそうなうめき声が聞こえてきました。

「神族だ!」

結界の外で作業をしていた魔族の声が聞こえます。

これは、急がなければ!