軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

92.神達の暴走

―神国 ある神の視点―

まずい、まずい、まずい。

創造神を守る我々の調査が再度行われたが、どうもそれから何かがおかしい。

魔界に通じる穴については、全て隠せたはずだ。

なのに、この日々増していく不安は何だ?

「やばいぞ! 連れて行かれた!」

スイピス神が、青い顔をして部屋に飛び込んでくる。

その後ろには、ツイーリー神の姿もある。

「連れて行かれた?」

まさか、ここにいない彼が?

「オバシュ神が、カルアタ神に連れて行かれたんだ!」

「カルアタ神?」

スイピス神の言葉に唖然とする。

カルアタ神が、なぜ動く?

奴の調査は、少し前に終わらせた。

そして問題なしと結果が出た。

だから……まさか、再調査にカルアタ神が関わっていたのか?

だが噂で、再調査はアイオン神が言い出したと聞いた。

「アイオン神とカルアタ神が、繋がった?」

あの2柱は、仲が悪かった。

目指した未来が違ったから。

だから、繋がるはずはないと思っていたが。

「もう1つ報告があるの」

ツイーリー神に視線を向ける。

彼女の表情から、その報告が悪い物だと分かる。

「魔界に繋がっていた穴が、見つかってしまったわ」

そんな、隠せたはずなのに。

「全てか?」

「いえ、見つかったのは7ヶ所のうち5ヶ所よ。ただ、神族を落としていた穴も見つかってしまったの」

「ははっ。なんて事だ」

神族を落としていた穴には、光の魔力を闇の魔力に、神力を魔神力に変える魔法が組み込まれていた。

まさか一番重要な場所を発見されるとは。

「くそっ」

多くの仲間が、フィオ神によって断罪された。

残った神達も、これまでの行いにより寿命が植え付けられた。

そのせいで、彼等は行動する事を恐れ離れて行った。

あり得ない。

神が何かを恐れるなど。

神は、この世界の絶対者でなければならないのに!

「このままだと、我々の事を嗅ぎつけるのもすぐだろう。もう、あきら――」

「ふざけるな!」

スイピス神を睨み付ける。

諦める?

何を弱気な事を!

「絶対に、諦めるものか」

「ここから挽回する方法はあるわ」

ツイーリー神を見ると、真剣な表情で俺を見ていた。

「どんな方法があるんだ?」

「かなり大事になるわ。でも成功すれば、我々の望みが叶うと思う」

大事?

ふっ、ここまできたら何でもいい。

「何をするんだ?」

「大量の神族を、魔界に落とすのよ。神達には、魔神が襲って来たと報告すればいいわ。そして魔界に落ちた神族は、きっと魔神や魔族が殺してくれるわ」

なるほど。

ツイーリー神の言葉に頷く。

「その作戦は無理だ。フィオ神が、神国は結界で守られているから、魔族や魔神は侵入できないと発表したから」

確かに、少し前にそんな発表がされたな。

本当に、忌々しい。

「ふふっ、結界なら破壊すればいいのよ」

あっ、そうだ。

ツイーリー神の力があれば、結界は破壊出来る。

それに神の世界を守る結界を、まさか神が破壊するとは思わない。

破壊するとすれば、魔族や魔神だ。

「結界を壊した魔神が神族を襲った」と言えば、誰もが信じるだろう。

「ツイーリー神はいいのか?」

破壊が出来るだろうが、かなり神力を使う事になる。

そうなれば、彼女の事が心配だ。

「大丈夫ですわ。もしもの事を考えて、力を溜めておりましたから」

さすが、ツイーリー神だな。

「ありがとう」

俺の言葉に、にこりと笑うツイーリー神。

やはり彼女は、素晴らしい。

「では、創造神の居住区にある穴に神族を集めて下さい。私は結界を破壊する準備をしますので」

「分かった」

神族を集める方法を考える必要があるな。

どうやって集めれば、違和感がないか。

「そういえば、今日は補佐達の会合がありますね」

スイピス神の言葉に首を傾げる。

会合とはなんだ?

「アイオン神の部下達の動向を探っていて分かったんですが、神達の補佐を務める者達が集まる日があるんです。それが今日ですね」

なんて事だ。

運が我々に味方をしている。

「その者達を魔界に送ろう。神の補佐だからな、失ったと分かれば怒り狂うだろう」

「それはいいですね。それでは私は、結界を破壊するために先に行きますね」

ツイーリー神が、部屋から出て行く。

「どこで会合は行われているのだ?」

「神達が集まる部屋のすぐ近くです」

断罪が行われたあの部屋の近くか。

気分が悪いが、まぁしょうがない。

それに、あの場所なら創造神の居住区に近いな。

「使いに出す神族を呼べ」

「どう言って誘導しますか?」

「創造神から極秘に神達に渡したい物があると伝えろ。役目を終えた神族も一緒に魔界に落とせ。魔神に誑かされ、神族を誘導したことにしたらいい」

「分かりました」

部屋を出て行くスイピス神を見送る。

「もし失敗したら、スイピス神に罪を被せるか」

実際に動いて指示を出しているのはスイピス神だからな。

俺が捕まるわけにはいかない。

あの方の目指した世界を実現するまでは。

スイピス神が出て行ってから約1時間後。

世界が振動した事に気付き、にやりと笑みが浮かぶ。

「結界の破壊か」

ツイーリー神の力は、本当に素晴らしい。

あの破壊する力が無ければ、魔界に穴を開けられなかったからな。

彼女とめぐり合わせてくれた、あの方には本当に感謝だ。

んっ?

部屋の外がかなり騒がしいな。

意識を少し部屋の外に向ける。

「落ちた」や「魔界」などの言葉が微かに聞こえた。

「ふふっ。成功したようだな」

あぁ、今日はなんて良い日だ。

酒でも飲んで、今日という日を祝うか。

外の喧騒を聞きながら、酒を飲む。

あれからどれほど時間が経っただろうか?

魔界に対する憎しみが、膨れ上がった頃だろうか?

「あれ?」

スイピス神もツイーリー神も、戻ってこないな。

何をしているんだ?

ガチャッ。

「なんだ?」

誰だ?

急に部屋に……えっ。

「カルアタ神、どうして?」

「フリギス神、やってくれたな。屑が!」

カルアタ神が一気に距離を詰めると、頭を掴まれた。

「やめっ!」

体から神力が抜けてくのが分かる。

なんとか頭から手を離させようとするが、全く力が緩まない。

それどころが、掴む手に力が入り頭に痛みが走る。

「ぎゅあ、いたっ」

「殺すなよ~」

場違いな声が聞こえた。

だが神力を無理やり奪われた俺は、眩暈を起こしそれが誰か分からない。

「殺すわけがない、こいつには色々聞きたい事があるからな」

大丈夫。

きっと、あの方が助けてくれる。

―アイオン神の部下マッシュ視点―

なぜか創造神から呼び出された。

それを少し不審に思ったが、創造神の命令は絶対だ。

少し警戒しながら、ある神族の後を追う。

他の補佐達もかなり警戒している。

「大丈夫か?」

「分からない」

最近よく会う、カルアタ神の補佐がそっと俺に問う。

だが、俺もよく分かっていないため応えられない。

創造神の居住区に入ると、緊張が増す。

この場所に入るには、創造神の許可がいる。

やはり創造神から呼ばれているのか。

まさか、創造神がいたりしないよな?

「ここで待つよう言われています」

神族の言葉に、立ち止まって周りを見る。

何をする場所なんだろう?

かなり広い場所だ。

「えっ?」

急に光に包まれた。

何が起こっているんだ?

ここまで連れて来た神族を見るが、怯えた様子で光から出ようとしていた。

「出られない!」

誰かの言葉が聞こえた瞬間、足元が消えた。

ドサッ。

「ぐぁあ」

ぐっと息が詰まる。

呼吸が出来ない。

「はぁはぁ」

ここは何処だ?

苦しい。

「神族だ!」

えっ?

滲む視界で周りを見る。

まさか魔界?

ぐっと肩を押される。

やばい、死ぬのか。

「大丈夫か?」

えっ?

「苦しそうだ。結界内に運ぶぞ」

体がもち上げられて、どこかに運ばれるのが分かった。

ここが魔界なら、俺を運んでいるのは魔族か魔神のはず。

「もう少しだ、耐えろ。あっ、サブリーダー! 神族が苦しそうだ。どうすればいい?」

「えっ、助けるのですか? あっ、結界内に。結界の外は負の力が強いので、神族には負担がかかりすぎるのです」

「了解。俺より親アリの方が速いな。親アリ頼む~!」

「任せろ」

一気に速度が上がった事に気付いた。

あぁ、意識が……。