作品タイトル不明
90.お疲れだな。
ウッドデッキでお茶をしながら庭を見る。
神族の子供達が魔族達と遊んでいる。
一緒に生活をしたせいか、とても仲が良い。
子供達の親も、驚きはしたが楽しそうなので見守っている。
「魔族と仲良くなっているけど、大丈夫?」
神国に戻ってから問題になったりしないかな?
もしなるなら、このままここで生活してもいいけど。
「大丈夫です。神族の間では、魔神や魔族への心象が少しずつ良くなっているので」
「そうなんだ」
保護した子供達の1人ピリースの父親マルリガ。
彼の言葉にちょっと安心する。
「はい。ただ、魔神や魔族が神族を襲って魔界に引きずり込むと信じている神族もいます。目撃者もいるので」
「はっ?」
えっ、何それ?
「マルリガも、それを信じているのか?」
俺の言葉に、神妙な表情をするマルリガ。
「私は目撃したことが無いので、なんとも言えません。ただ実際に襲われた神族がいて、神に保護されたという話もあります」
マジで?
あれ?
「それは、どこで襲われたんだ?」
「神国です。魔神と魔族が、神国に入って来て神族を襲ったと聞きました。目撃した神もいます」
「いや、待て。そもそも魔界の者は、結界に阻まれて神国に入れないからな」
どうして神国に入る事が出来ない者に襲われた事になっているんだ?
その目撃した神の目的は……魔神と魔族に悪印象を植え付けるためか?
「えっ?」
俺の言葉にビックリした表情のマルリガは、「結界?」と不思議そうにつぶやいている。
まさか、神国を守っている結界の事を知らないのか?
「おい、アイオン神」
問題無いと判断した神が起した事にショックを受け、机に突っ伏しているアイオン神を見る。
「そろそろ復活しろ。聞きたい事がある」
「あぁ、なんだ? というか、まずは神族の保護をありがとう。アルスリも、いい判断だった。ありがとう」
「はい」
アイオン神の傍に控えているアルスリが、嬉しそうに笑う。
尊敬しているアイオン神からの、感謝の言葉は嬉しいんだろうな。
昨日、ようやく星の問題が収束し、自分の執務室に戻って来たアイオン神。
アルスリは、疲れた様子を見せるアイオン神に話すかどうか迷ったそうだ。
でも、早い方がいいと俺に助けを求めた事を話した。
そして今日、朝から呪界に来たアイオン神。
子供達から話を聞き、そのまま机に突っ伏してしまった。
「翔、どうした?」
俺を見るアイオン神。
目の下の隈が凄い事になっている。
「魔神や魔族が、神国を守る結界で入れない事は公表していないのか?」
「昔は公表していたが、いつの間にか極秘扱いになっているな」
極秘か。
そのせいで誤解が生まれているんだな。
「そうか。それなら、結界の事を公表してくれ」
アイオン神は神国に戻ったら今回の問題に取り掛かるだろうけど、公表ぐらいならすぐ出来るだろう。
「あぁ、そうだな。マルリガの話を聞くと、どの神が扇動しているのか知らないが、嘘を流しているみたいだからな。公表はした方がいいだろう。すぐに取り掛かるよ」
アイオン神が、アルスリを見る。
彼女は頷くと、先に神国に戻って行った。
「翔。子供達の事だが、暫く保護をしてくれるか?」
このまま保護を続けてくれという事だな。
「もちろん、大丈夫だ」
魔族達も子供達が一緒で楽しそうだしな。
そう言えば、ここに来た魔族達にパートナーはいないのだろうか?
10日に1回は魔界に戻っているから、その時に会ってるのかな?
「良かった。ここなら安全だ」
アイオン神を見る。
本当に疲れているな。
「星の暴走はよく起こるのか?」
原因は何なんだろう?
「上位神の処分が下って、彼等が管理していた星が今、管理者不在となっているんだ。それでも、これまでしっかり管理していれば、数十年は正常に回るので問題はないはずだった」
「管理されていなかったのか?」
「あぁ、放置されていた星も多いし、余計な事をされた星も」
大きな溜め息を吐くアイオン神。
「星が暴走すると、どうなるんだ?」
「周りを巻き込んで爆発する事が多い。その星に住む者達が一斉に亡くなるから、大変なんだ。問題のある星だと、苦しみながら死んでいく者が多いから」
「星を管理する者がいれば、暴走はしないのか?」
「あぁ、暴走はしない。ただ、今まで放置されて来た星だから、色々と問題を抱えている。一番問題なのが、魂の循環が滞っている事だな。これが上手く回らないと、いずれ星に負荷を与え滅ぶ。星が滅ぶと、暴走のように巻き込まれて爆発はしないが、影響はある」
「魂の循環を元に戻す方法は?」
「……今、調べている」
「えっ?」
「魂に関する場所は重要だから、管理する神にも手が出せないようになっていた。これまでは……違うな。私が確認したのは本当に昔だ。でも、その時まではそうだった。いつの間にか、管理する神が勝手に変更できるようになっていた」
もしかして、落ち神の置き土産か?
「ロープ、いるか?」
「いるよ!」
あっ、すぐに応えた。
最近は神国に遊びに行っていて、なかなか話が出来なかったんだよな。
「神国の用事は終わったのか?」
「まだ! 面白いぐらいに、後から後から色々出て来るから」
あっ、アイオン神が落ち込んだ。
「少し確認なんだけど、神国に属している星を、呪界に移動出来ないかな?」
「えっ?」
まぁ、アイオン神は驚くよな。
でも、少し前から考えていたんだよな。
正直、星に興味がある。
それに、神獣である龍は一つの星に対し1体か2体が普通なんだ。
この星のように集まり過ぎているのは良くない。
今更だけど彼等に星を与えたい。
だけど、俺では星が作れない。
だったら、貰えないかと思っていたんだよな。
「出来ますよ」
「出来るのか!?」
アイオン神が空中に向かって叫ぶのを、不思議そうに眺める神族の子供達。
少し遠いから話している内容は分かっていないよな。
チラッとアイオン神を見る。
空中に叫ぶ神。
おかしくなったと思われてそう。
「アイオン神、落ち着け」
「えっ?」
「子供達が、不思議そうに……違うな。心配そうに見てるぞ」
アイオン神が神族の子供達に視線を向けると、さっと視線を逸らす子供達。
アイオン神が、心配だけど怖いみたいだな。
「もしかして、怖がられた?」
「まぁ、それはしょうがないだろう。急に神に暴力を振るわれたんだ。怖くもなるよ」
「そうだけど。はぁ、私は頑張っているんだけどなぁ……何もかも、放り出したくなる」
あっ、これは相当疲れているな。
「アイオン神。少し寝て行ったらどうだ?」
「無理だ。そんな時間は無い。もう帰るよ」
と言いつつ、立たないな。
やはり、かなり疲れているな。
「リビングのソファで寝ればいい。こっちだ」
アイオン神の腕を引っ張ると、少しふらつきながら付いて来る。
その様子を見ながら、苦笑する。
星の爆発を止めるためとはいえ、疲れすぎだ。
「ここで寝ろ」
大きめのソファを指すと、アイオン神は無言で近づきバタンとソファに倒れ込む。
そしてそのまま、寝た。
「そうとう疲れていたんですね。まさかこんな簡単に寝るとは思いませんでした」
リーダーが、毛布をアイオン神に掛ける。
「そうだな」
星の移動については、しっかり休憩してもらってから話そう。
まずはアイオン神を納得させて、次にフィオ神かな。
最終的には創造神に判断を任せる事になるんだろうけど。