軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

88.内緒の友人達

魔石から視線を周りに向ける。

誰の気配もしない。

もう一度魔石を見る。

「今の声、魔石から聞こえたよな?」

この魔石は神国の呪いを持って来てもらうために、俺が用意した物だ。

つまり魔石は普通の物。

声と言えば呪いだけど。

その可能性は……無いな。

この魔石に入っていた呪いは、凄く弱い。

呪詛もようやく届く程度だ。

だから、あんなにはっきりした声を出せるわけがない。

「えっ、本当に誰の声だったんだ?」

声は男性だった。

そして、「殺されるだろうな」と予想していた。

アイオン神の話では、呪いを籠めた魔石を置いた神は殺されている。

もしかして、その神の言葉か?

でもどうしてその神の声が聞こえたんだ?

「そういえば、会話みたいだったな」

魔石を置いた神には、仲間がいたのか?

というか、それは当たり前か。

カルアタ神の様子から『魂を生み出す場所』はかなり重要な所だ。

そんな場所に簡単に入れるわけがない。

間違いなく協力者がいただろう。

「でもアイオン神から、そんな話は出なかったよな?」

俺には必要のない情報だから、話さなかった?

「いや、それは無いな」

アイオン神は、なぜか神国の事を逐一報告してくる。

以前、「情報を洩らしていいのか?」と聞いたら、笑っていた。

おそらく、駄目なんだろう。

それでも報告するのは、神国がかなり不安定だと思っているからかな?

そして、もしもの時は俺に助けて欲しいんだろう。

まぁ、助けてくれと言われなくても、出来る範囲で助けるつもりだ。

神国に問題が起こったら、間違いなく呪界と魔界に影響があるからな。

ようやく落ち着いた呪界と魔界に、それは困る。

ロープにも、神国が本当に危なくなる前に教えて欲しいとお願いしてある。

「つまりアイオン神が言わないという事は、彼女は気付いていない可能性が高い」

でも、神達を全て調査したんだよな?

……まさかと思うけど、気になった神だけ調べたとか言わないよな?

「ありえそうだな」

神達の様子を聞く限り、手抜きが好きだからな。

「神族達に、どこまで調べているのか聞いてみようかな。あと、今の声に思い当たる事が無いかも」

今日も、来ているだろうからな。

墓場から出て地下神殿に戻り、そのまま神国から侵入してくる神族を誘いこむ「呪いの空間」に移動する。

「やはりいたな。久しぶりだな。新しい子もいるのか、初めまして」

今、呪いの空間で行われているのは、神族達のお茶会だ。

そして今日は、アリ達が相手をしているみたいだ。

その日によって、蜘蛛達だったりゴーレム達だったりするんだよな。

「「「「「呪界王様、お久しぶりです」」」」」

「「「「「呪界王様、初めまして、宜しくお願いいたします」」」」」

笑顔で迎えてくれる神族達に苦笑してしまう。

ずっと続いた侵入者問題。

アイオン神に言っても一向に改善されないため、一度侵入してきた者に会う事にした。

侵入してきた神族に会って分かった事は、かなりの数の神達が屑だという事。

そして、そんな神に仕えている神族には、拒否など許されないという事だった。

ちなみに、仕える神を変えられないのか聞いたら、真っ青になって首を横に振られた。

いつものようにアイオン神やフィオ神に言おうと思ったが、少し考えて止めた。

アイオン神の話から、神の数が減ってしまい色々と手が回っていないと聞いていたからだ。

これ以上の神が減ったら、本当に過労死しそうだ。

だから、少し落ち着いてから彼等に指示を出した神達の問題を報告する事にした。

残念ながら、今もまだ報告が出来ていないが。

そして心配になった。

呪界への侵入は、ずっと失敗している。

そのせいで、神族達は処罰を受けたりしないのだろうかと。

でもその心配はないそうだ。

呪界を調べろと命令した神達は、何度も失敗してもいつかは上手くいくと思っているらしい。

侵入している神族が、全くやる気がないにも拘わらず。

その自信はいったいどこから来るのか、一度彼等に指示を出す神に会ってみたいものだ。

それからは侵入という名の、なんだろう?

まぁ、来たら呪いの空間で遊んでもらい、その後はゆっくりとお茶やお菓子を楽しむ時間になった。

神族の間でこっそり噂になり、内密に此処に来る子達もいる。

そして回数が増していくと、彼等から神国の現状が聞けるようになった。

最初はもちろんそんなつもりは無かった。

でもある神族をきっかけに、彼等から神国の事を聞くようになったのだ。

そのきっかけとなったのが、仕える神の秘密を知って怯えていた神族との出会いだ。

気持ちを軽くしようと秘密の内容を聞いたけど、さすがに首を横に振られてしまった。

だから俺は、神族にそっと寄り添い、感じている不安を言葉にするように促した。

不安な気持ちだけでも話せたらきっと落ち着くはずだと思ったのだ。

少しずつ気持ちを話し出す神族は、なぜか途中から仕える神の愚痴になり、いつしか暴言になり、最後には知ってしまった秘密を話していた。

まぁ、聞かなかった事にした。

なぜなら、話に出た神にはもっと重大な問題がある事を知っていたからだ。

そしてその日から、お茶会は神達への愚痴を発散する場にもなった。

そうとう鬱憤が溜まっていたのか、まぁ、出るわ出るわ。

その話の中には、色々問題になりそうな物もあり、ちょっと頭を抱えた。

でも話すと、みんな元気になる。

だから、好きなように話して貰っている。

憂さ晴らしも必要だからな。

「今日は少し教えて欲しい事があるんだけど」

神族の視線が俺に集まる。

「アイオン神達が、神達を調べたと思うけど、全員調べたのかな? 知ってる者はいる?」

俺の言葉に神族達が顔を見合わせる。

そして1人の神族が手を上げた。

「調べたのは、神国に影響力がある上位神と、問題が明らかになった上位神と繋がりのある中位神だけです。あとは、時間が出来た時に調べると言っていました」

調べたのは、気になった神達だけか。

となると、あの声の仲間は見つかっていない可能性が高いな。

「そうなんだ。教えてくれてありがとう。もう1つ、君たちは『魂を生み出す場所』を知ってるかな?」

先ほどとは違う神族が手を上げる。

「『魂を生み出す場所』を知らない神族はいないと思います。ただ、知っているだけで中に入った者は少ないでしょう。私は数回、仕える神と一緒に入った事があります」

おっ、入った事がある神族がいた。

「そこに呪いの籠められた魔石があるんだけど、見た事はある?」

「はい。神が攻撃して反撃されて吹っ飛んだので笑い、いえ、驚きました」

笑ったんだな。

「その魔石の周辺で、男性の声を聞いた事はない? 仲間と話している様子の声なんだけど」

「声ですか?」

神族が首を傾げる。

そして少し思案すると、首を横に振った。

「分からないです。ごめんなさい」

「いや、大丈夫。ありがとう」

お礼を言うと、嬉しそうに笑う神族。

そう言えば、今話をした神族は初めて見る顔だな。

「あっ!」

お茶会の常連さんの1人。

ミルシーという名の神族が、俺に視線を向ける。

「どうした?」

「『魂を生み出す場所』には、呪われた神がいるらしいです」

呪われた神?

あっ、他の神族達が頷いている。

「見た仲間がいるんです。なんでも、真っ黒で私達と同じ姿をしていたそうです」

「そうなんだ」

声だけでなく、呪われた神?

関係があるのか??

「あの、ちょっとした噂なんですけど。あの魔石を置いた神達は、どこかの星に逃げたと言われているんです」

神達か。

やはり、神より横のつながりが強い神族達の方が色々知っているよな。

「逃げた星が何処か分かるか?」

「ただの噂だと思ったので調べてないです。調べましょうか?」

それはありがたいけど、この神族の仕える神は……色々問題があるし、神族の扱いが酷い。

「いや、こちらで調べるよ。でも、重要な情報をありがとう」

「これぐらいの情報でしたら、いつでも!」

神族の言葉に、周りの神族達が頷く。

頼もしい、友人達だな。

「ありがとう。でも、仕える神達にはばれないようにな」