作品タイトル不明
87.神国の呪い
「ありがとう」
リーダーから魔石を受け取る。
この魔石には、神国にある魂を生み出す場所にいた呪いが入っている。
最初は、ロープにお願いしてこっそり持って来てもらおうと思った。
でも厳重に守られている場所らしく、無理だった。
という事で、アイオン神にお願いしてみた。
さすがに呪いのいる場所が場所だけに「無理かな」という気持ちだったけど、すぐに許可が貰えた。
これには俺もビックリした。
許可を取り付けてくれたアイオン神に「良いのか?」と2回も聞いてしまったぐらいだ。
彼女の話では、やはり最初は渋られたらしい。
でも、呪いの王でなければきっと何も分からず、このままの状態が続き、いずれ神国の役目がなくなって滅ぶかも。
なんて事を、大げさに言ったらしい。
一緒に来ていた補佐も楽しそうに笑っていたので、かなり面白い事をしてきたみたいだ。
思ったより簡単に手に入った、呪い。
リビングで調べるのは何かあった時の事を考えて止め、地下神殿の墓場に持って来た。
目の前には大きな湖。
「おはよう」
湖に向かって声を掛けると、ふわっと水面が揺れた。
パシャッ、パシャッ。
「おはおは」
「あさ、です!」
今日ののろくろちゃんは、2体だけかな?
パシャッ、パシャッ。
「元気ですか?」
「今日もほわ~」
今日は4体ののろくろちゃんか。
「俺は元気だよ。今日も、穏やかだね」
俺の言葉に反応しているのか、のろくろちゃん達が周りをふわふわと飛ぶ。
「くるくる~」
その内、1体ののろくろちゃんが目の前でくるくると回り出す。
しばらく様子を見ていると、のろくろちゃんから煙が出始めた。
「今日は何色かな?」
のろくろちゃんから出る呪いの煙の色は、最初は黒色。
少し前から、黒色から青色に変わった子が出始めた。
半分以上ののろくろちゃんは、黒い色のままだけど。
「あっ、新しい色の方だよね」
そして10日前から、かなり少ないが水色の煙を出す子が現れた。
今、目の前にいるのろくろちゃんは、水色の煙を出す子のようだ。
色が変わった原因は未だに不明。
黒色でも青色でも、新しい水色でも触ると指は黒くなる。
つまりどの色も呪い。
なので、今のところ「ただ色が変わるだけ」という認識だ。
それに俺は、呪いはそのままでいいと思っているので、変化をしようとしまいと気にしない。
「うわ~、うわ~」
水色の煙を出したのろくろちゃんが、喜んでいる。
他ののろくろちゃん達も、俺の傍に来てはくるくる回り出す。
結果、黒が1体。
青が2体で、水色が1体。
黒の煙を出したのろくろちゃんが落ち込んでしまった。
「黒、黒……黒」
そこまで落ち込まなくてもいいと思うのだが。
「気にしない、気にしない」
俺の言葉に、上下に激しく動くのろくろちゃん。
その動きを見て、少し感動してしまう。
今までのどの子より、動きが素早い。
「せめて、青色!」
のろくろちゃんの叫びに、湖からポチャンと音がした。
視線を向けるが、湖は静かなまま。
首を傾げながら、叫んだのろくろちゃんを見る。
「そんなに青色が良かったのか?」
ここまではっきりと意思を伝えたのろくろちゃんは、初めてだな。
「うん、青色がいい!」
「黒色と青色は何が違うんだ?」
「ん~?」
青色と叫んだのろくろちゃんの体が、空中で左右に揺れる。
「知らないのか?」
「ん~、うん!」
知らないのに青色がいいんだ。
何か感じる事でもあるのだろうか?
「これも、変化に関係しているのかな?」
最近、呪いの事で気にしている事がある。
5日前に、魔界王にオウ魔神が就いたと魔界から正式発表が来た。
その翌日、急に呪いの存在を近く感じたり、遠く感じたりして驚いた。
そして、数日かけて分かった事が、「呪いの変化」だ。
ただ、どう変わったのか調べたが、分からなかった。
なんというか、形が見えないというか、まだ決まっていないというか。
おそらく変化している最中なのだろう。
だから、この色の変化もいずれ原因がわかるかもしれないと思っている。
ちょっと心配なのは、色の変化はもっと前から起こっていた。
全く関係ない可能性もある。
呪王なのに、呪いについてはまだまだ分からない事が多すぎる。
「次は、青色の煙が出るといいな」
そして呪いが変化し始めたと分かった日、呪界と魔界も変化し始めた。
理由は、よくわからない。
だが、遠かった2つの世界が近くなったような、不思議な感覚だ。
特に悪い事では無かったので、今は様子を見ている。
「うん」
やはりこののろくろちゃんは、意思がかなりしっかりしている。
そっと手を伸ばし、強さを見る。
他の子と、あまり違いは無いな。
「ばいばい」
いきなりだな。
「ばいばい」
1体が湖に戻ると、他の子も戻って行く。
「もど~る~」
「かえれば~」
「……」
湖に消えて行くのろくろちゃんを見送ると、その場に座って魔石を出す。
「さて、何が分かるかな」
魔石に触れると、じんわりと中にいる呪いを感じる事が出来た。
新しい子達なので、ちょっとドキドキする。
「この子達は、かなり弱いな」
呪界が出来てから、呪いという存在をしっかりと感じられるようになった。
でも、この魔石の中の呪いはどうも存在が不安定だ。
いるのに、いないというか。
おそらく、神国でこの子達が認められてこなかったせいだろう。
「後でしっかり存在を証明するからな。今はもう少しこのままで」
魔石の中の呪いに、俺が持っている呪力をゆっくり流す。
「あっ!」
何かが聞こえると思ったら、呪詛だ。
「懐かしいな」
最初に呪詛を聞いた時は震え上がったけど、もう全く怖くない。
あの時と今の俺の違いも原因の1つなんだろうな。
「……それにしても、呪詛すら小さい」
呪いは集団になると強くなる。
魔石に呪い達を集めたのだから、ある程度力を持ってもいいはずなんだけど、弱い!
想像以上に弱すぎる。
存在を認められていない場所だから、仕方ないのかな?
『これ、以上は……』
んっ?
今、呪詛とは違う雰囲気の声が混ざっていたような気がする。
魔石に耳を近付け、ジッと耳を澄ます。
……ん~?
『やつら……すき……はか、い』
「やっぱり聞こえる」
それに呪詛とは違うようだ。
呪詛は、心が揺さぶられるのに、今の声には何も感じない。
「聞こえた言葉は『これ以上は』と『奴等』、『すき』に『破壊』か?」
……だめだ。
考えてもさっぱり意味が分からない。
「ん~……とりあえず、浄化を掛けて苦しんでいる子を助けるか」
魔石を手で包み込み、浄化を掛ける。
ゆっくりと魔石が温かくなると、呪詛は聞こえなくなった。
「成功だな」
魔石の中にある呪いを調べてみる。
「もう大丈夫」
弱いながらも、俺の力を得たのか存在感がある。
これで――
「バレたら殺されるだろうな」
んっ?
「もう、覚悟した。お前たちは、他の方法で」
さっきまで聞こえづらかったのに、今ははっきり聞こえた。
魔石を見つめる。
「誰の声だ?」