作品タイトル不明
36.2個目の魔珠宝。
地下神殿から家に戻った瞬間感じた、肌への違和感。
「またか」
ここ1週間ほど、神国からこの世界に入ってこようとする神族が絶えない。
いい加減、無駄な事だと分かってくれてもいいと思うんだけど。
「もしかして彼らは陽動か?」
侵入しようとする神族に気を取られている間に、別の場所から侵入するつもりなのでは?
考え過ぎかな?
でも、警戒した方がいいよな。
「とはいえ、別の場所から侵入?」
自分で考えた事だけど、無理があるよな。
だってこの呪国には、許可のない者や害のある者の侵入を防ぐ結界を何重にも張ってある。
ちなみに反撃するタイプの結界だ。
色々考えて作った自信作。
オアジュ魔神とアイオン神に、この世界の守りについて聞かれたので説明したら引かれた。
理由を聞けば、「やり過ぎ」らしい。
ただフィオ神だけは、大爆笑していたけどな。
で、3柱から「絶対に破られない結界」だとお墨付きを貰った。
だから、別の侵入方法は……無いと思うんだよ。
ただ、完璧にし過ぎると予期せぬ事が起きやすい。
だから呪国に侵入できるルートを作っておいた。
それが、神族が侵入しているルートだ。
あえて警戒がゆるい場所を作って、そこに誘導している。
まぁ、すぐに見破られるかと思ったけど、未だにそこから侵入しようとするんだから……あっ、見破られているのか。
「と言う事は、やっぱり別の侵入方法が見つかった?」
「いや、無理だろう」
んっ?
「オアジュ魔神か?」
振り返ると、なぜか呆れた表情をしたオアジュ魔神がいた。
隣には、息子のオアイスがいる。
彼等は、この世界に来てから関係がいい方向へ改善したみたいだ。
マカーシャさんとマイスさんが、嬉しそうに報告に来てくれた。
まぁ、報告相手は俺ではなく紅葉になんだけど。
知らない間に、彼女たちは交流をしていたみたいだ。
それより、どうして俺が呪国の結界について考えていると分かったんだ?
俺が首を傾げると、オアジュ魔神が広場へと視線を向けた。
釣られて視線を向けるが、いつもと変わらない風景だ。
今日も元気に魔法攻撃が、飛び交っている。
あっ、後で広場の結界を強化しないと駄目みたいだな。
ここのところ、子供達がまた強くなっている。
そういえば、いつの間にか広場の方での訓練が当たり前になってるな。
前までは、庭と広場の両方を使っていたのに。
今では広場でしか姿を見ない。
子供の成長は早いものだ。
「俺達が来た時に、エイトがものすごい勢いで空に向かって消えたから」
エイトか。
農業隊の1体で、どうやら呪国を守る結界の警備に当たっているみたいだ。
詳しくは聞いていないが、侵入者が現れる度にエイトの魔力を感じるようになったから間違いないだろう。
「そうか」
「で、その後に主が空を見て『別の侵入方法』と呟いていたから、何を考えていたのか分かったんだ」
なるほど。
俺の行動は分かりやすいみたいだな。
「言っておくが、あの結界を超える神族や魔族なんていないからな。下手に侵入しようとすれば、命の危機にさらされるんだから」
命の危機だなんて大げさだな。
他人の力が体内に入ると苦痛を味わうらしいから、結界に無理に触れたり攻撃したりすると、俺の力が対象の体内に侵入するようにしただけだ。
まぁ、ちょっと侵入する力には変化を与えておいた。
俺は守る力が強いと言っていたので、体内で攻撃するように。
一応、自分が思っているより強いらしいから、ほんのちょっとだけ。
だから、命の危機にはならないはずだ……たぶん。
……まだ、誰も試した事が無いので、絶対だとは言えないけどさ。
「そんな事より、今日はどうしたんだ?」
何となく居心地が悪いので、話を変えよう。
「あぁ、新しい魔珠宝が出来たと聞いたから、確かめたくて来たんだ。見せてもらえないだろうか?」
そうだ。
今日は2個目の魔珠宝が、出来たんだった。
オアジュ魔神に報告に行ったけど、オアイスと出かけていたので伝言だけ頼んで帰って来たんだよな。
親子水入らずを邪魔したら駄目だろうから。
「いいぞ。今、リビングに置いてあるから、一緒に行こう」
すぐに魔界に持って行きたいが、サブリーダーがいないので置いてある。
魔界の事は、サブリーダーに任せているので俺が余計な事をしては駄目だ。
「えっ、リビングに置いてあるのか?」
オアジュ魔神が焦った様子を見せたので、眉間に皺が寄る。
何か問題が、あるのだろうか?
「あぁ、リビングのテーブルに置いたけど……どうしたんだ?」
「大丈夫なのか?」
えっ、何が?
「悪い。オアジュ魔神が何を心配しているのか分からないんだが」
「えっ? 魔珠宝の周りに異常は出ていないのか?」
魔珠宝の周りに異常?
地下神殿へ行く前に確認したけど、特に変化は無かったよな?
「出ていないけど……置いておくと何か起こるのか?」
「あれは魔神力だから、周りに悪影響を及ぼす事が多々あるんだ」
「そうなのか?」
知らなかった。
急いで確かめないと。
リビングに入って、魔珠宝が置いてあるテーブルを見る。
「「「ん?」」」
どうして、子天使のスミレとモモが魔珠宝を真ん中にして寝ているんだ?
テーブルの傍に寄って、2人の頬を撫でる。
「おはよう」
「「…………」」
完全に熟睡しているな。
これは、珍しい事だ。
モモもスミレも、気配に敏感だ。
傍に寄ったら、絶対に起きる。
もう一度、頬を軽く撫でて様子を見る
……起きないな。
「悪影響と言うのは、深い眠りに誘うとか?」
「そんな影響は、聞いた事が無いけどな」
「そうか」
オアジュ魔神の言葉に首を傾げる。
違うみたいだけど、2人は起きない。
……大丈夫だよな?
2人の中で流れる力を見てみるか……問題は無いな。
「その子達の真ん中にあるのが魔珠宝だよな?」
「あぁ、そうだ」
スミレとモモの間にある魔珠宝を取って、オアジュ魔神に渡す。
彼は魔珠宝を見ると、すぐにオアイスに渡した。
「俺が受け取った魔珠宝と、同じだと思う」
オアイスの言葉に首を傾げる。
「同じ」とはどういう事だろう?
「オアイスから話を聞いて、俺が知っている魔珠宝とはかなり違うと分かったんだ」
「そうなのか?」
もしかして魔珠宝として使えない?
あれ?
でも、「問題なかった」と報告が来ているよな?
「魔珠宝である事は間違いない。オアイスとマイスの力は、魔珠宝のお陰で反発しなくなっているから」
「よかった」
んっ?
それじゃあ、何が違うんだ?
「体に馴染んで落ち着くまでの影響が全く違うんだ。俺とマカーシャは本当に大変だったから」
「そう言っていたな」
マカーシャが数年も苦しんだと聞いて、洞窟に魔神力を放出する時に「攻撃的じゃない魔珠宝」になるように祈ったんだよな。
まぁ、これは関係ないだろうけど、何かの影響でいい方向へ魔珠宝が変わったという事か。
「苦痛が無いならいい事だと思うが、駄目なのか?」
ただ、変化をもたらした物が何かを調べる必要はあるな。
「いや、駄目な事はない。2個目も1個目と同じなのか確かめたかったんだ。子供達が苦しむことがないなら嬉しい事だ」
あっ、そうか。
2個目が出来た事を喜んでいたけど、1個目と同じ物が出来たとは限らないんだ
これからは、出来た物をオアジュ魔神とオアイスに確かめてもらおう。
と言うか、2個目が本当に大丈夫なのか、不安になってきたんだけど。