軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35.来た!

「…………んっ?」

オアジュ魔神の子供オアイスがパートナーと共に、魔界からやって来た。

魔珠宝が驚異的な早さで、オアイスとパートナーであるマイスの体内で安定したらしい。

2日前、安定したので移動する旨がサブリーダーから知らされた。

そして今日、オアジュ魔神達と一緒に出迎えたのだが、オアイスは俺を見て固まった。

もしかして顔に何か付いているのか?

そっと手で顔に触るが、特に何もついてはいない。

ではどうして彼は、全く動かなくなったんだ?

「サブリーダー。彼はどうしたんだ?」

「さぁ、どうしたんでしょう」

サブリーダーの様子から、オアイスの様子がいつもとは違うのは分かった。

ただ、ずっとここで固まっているのもおかしい。

「オアイス、大丈夫か? 体に異常でも出たのか?」

もしかしたら魔珠宝に何か悪い影響でも出たのか?

オアイスの中を流れる力を見た感じでは、どこにも異常はないように感じるが。

「あっ、いえ。あの……主様ですか?」

様付けは、却下だな。

「様は付けなくていいから。で、確かに皆にそう呼ばれているな。どうしたんだ?」

「いえ、想像していたような方で、あっ、……なんでもありません。申し訳ありません」

無意識に言ってしまったのだろう。

オアイスの表情が強張る。

ははっ。

皆から主と呼ばれるような存在には見えないって事だよな。

大丈夫。

それを一番感じているのは、俺だ。

「気にする必要は無い。それより体の方は大丈夫か?」

「はい。えっと、魔珠宝をありがとうございました。父から聞いていたような苦痛も全くなく、とても優しい力でマイスと2人で驚いたほどです」

「そうか。良かった」

魔珠宝は、自分の力とは異なる力が体内をめぐるため、通常はものすごく苦痛を味わうらしい。

それが俺の作った魔珠宝だと、全く痛みは無かったそうだ。

それを聞いたマカーシャが、何度も羨ましいと言っていた。

彼女は、オアジュ魔神と分けた魔珠宝で数年間を苦痛の中で過ごしたそうだ。

「あの、これからどうぞよろしくお願いいたします」

深く頭を下げるオアイスとマイス。

「うん、よろしく。それと俺の作った魔珠宝を試してくれてありがとう。オアイスとマイスのお陰で問題がない事が分かったから、これからどんどん作って行けるよ」

2人の様子を聞いて、問題が無いと思ったので魔神力を溜めこむ洞窟を増やした。

今、稼働しているのは5ヶ所。

元々あった洞窟では、2個目の魔珠宝が作られている。

他の場所でも、欠片が出来始めたので期待している。

「お役に立てて良かったです」

オアイスの言葉に頷く。

「それにしても勇気があるな。どんな結果が出るのか分からない物を試すなんて」

「サブリーダーやアリ達、蜘蛛達から、主の力がどれだけ素晴らしいか聞いていました。それに皆が、主の力が他者を傷つける事は、絶対にないとも自信満々に言っていたので、信じる事にしたんです」

なるほど、それで試してもいいと思ってくれたんだ。

これは、サブリーダーの戦略かな?

「信じてくれて、ありがとう」

まぁ、良い結果になってよかった。

ただ、予想外の事があったけどね。

オウ魔神から怒涛の手紙攻撃を受けている。

内容は「魔珠宝を1つ譲って欲しい」と。

どうやら研究対象として興味を引いたらしい。

まずはオアジュ魔神の子供たちに渡してからだと返事を返したのだが、「彼らは絶対に守るから、1つだけ」という内容の手紙が返って来た。

「無理」と返事を返した翌日から毎日手紙が届くようになった。

研究者に興味を引かれる事は、面倒くさいのだと初めて知ったよ。

毎日手紙を運ぶ親アリ達にも迷惑なので、サブリーダーに落ち着かせてほしいとお願いした。

今日は手紙が届いていないので、サブリーダーが上手く取り成してくれたんだろう。

「オアジュ魔神、今日は俺の家でお祝いパーティーがあるから、夕方には来てくれ」

リーダー達が昨日から、かなり頑張って準備をしていたからな。

まぁ、後半はいつもの状態になるんだろうけど。

「パーティー?」

オアイスが不安そうな表情をするので、首を傾げる。

「あぁ。今日は、2人がこの世界に来たお祝いをするつもりなんだ。オアジュ魔神が案内してくれるから、夕方に来てくれ」

「あっ、お祝い。あの美味しい物を食べて楽しむやつですよね?」

んっ?

オアイスの言葉に首を傾げる。

まるでパーティーを理解していないような言い方だ。

ただ、彼の言っている事は正しいので頷く。

「あれは、楽しかったね」

マイスもオアイスと同じような雰囲気だ。

もしかしてパーティーを知らない?

「主、魔界でパーティーはその……こことは全く違うんだ」

オアジュ魔神が困ったような表情を見せる。

「そうなのか?」

「あぁ、とても……魔界のパーティーは……血生臭いから」

…………血生臭い?

それって……よしっ。

考えるのは止めよう。

「オアイス、マイス。この世界でのパーティーは、皆で楽しく騒ぎましょうって事だから。楽しんでくれ」

「「はい」」

おっ、良い笑顔だ。

「家族で積もる話もあるだろうから、俺達はこれで帰るよ。また、夕方に」

俺の言葉に、驚いた表情のオアイスとマイス。

何を驚くことがあるのかと、マカーシャを見る。

「魔神と魔族では親子でも親しくすることはないので、オアイスはオアジュとはほとんど関わっていないんです」

「そうなんだ」

オアジュ魔神を見ると、気まずそうな表情で視線を逸らした。

今の彼の様子から、関係は変わってくると思うけど。

まぁ、それには時間が必要か。

「分かった。でも、久々に会ったんだから話はした方がいいと思う。だから、また後で」

俺の言葉に、オアジュ魔神が小さく頭を下げた。

それに小さく笑うと、手を振って一気に上空に飛ぶ。

今日は気分がいいから、空を思いっきり飛びたい気分だ。

コアとチャイが慌てて追いかけて来るのが見えた。

あっ、護衛がいるのを忘れていた。

「悪い。家に戻ろう」

「主。急に行動するのは止めてくれ。まぁ、いつもの事だけど」

コアの言葉にチャイが頷く。

あははっ。

コアとチャイは俺と一緒にいる時間が誰よりも多い。

だから、俺の行動の被害に一番遭っているよな。

「ごめん、飛びたい気分だったんだ」

実は、魔珠宝の成功が思ったより嬉しかった。

なので、オアイスとマイスと会った時、思いっきり喜びを表現したかった。

オアイスの「想像していたのと違う」という言葉で、抑えたけど。

「一気に行くぞ」

「「わかった」」

コアとチャイの諦めた声に、笑ってしまう。

どうせ、途中で俺に負けじと飛ばす癖に。

空へ飛びながら、地上を見る。

新たに出来た大地の森は、順調に成長を続けている。

元の世界ではありえない成長速度なので、見ていて面白い。

んっ?

また、神国から神族が侵入をしようとしているな。

毎日、毎日懲りないよな。

「愚かな」

チャイの言葉にコアが唸る。

2匹も気付いたのだろう。

「大丈夫だ。すぐに処理される」

ほら、気配が消えた。

どんどん消えるまでの時間が短くなっているんだけど、神族は大丈夫か?

まぁ、俺が心配する事ではないか。

「今日こそ、呪いの空間をクリアー出来る神族かな?」

コアの言葉にチャイが笑う。

「無理だろう」

最初に移動する異空間は呪いの空間なんだ。

でも、あそこは簡単にクリアー出来るよな?

「主、今まで侵入した神族はみんな、呪いの空間で確保されている」

「みんな? 嘘だろう?」

ありえないだろうと思ってコアとチャイを見るが、どうやら本当らしい。

神族……馬鹿だろう。