軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33.照明器具。

知らない間に、獣人達のエントール国とエルフ達のオルサガス国にヒカルがお店を開いていた。

いや、正確にはあと少しでオープンらしい。

最近、ヒカルの姿が見えないと気にはなっていた。

でもまさか、お店を開く準備に奔走しているとは思わなかった。

「これを売るのか?」

「うん」

ヒカルが持ってきた道具を見る。

まず第1段として、照明器具らしい。

「手を近づけてみて」

ヒカルに言われるまま、照明器具に手を近づける。

「あっ、点いた」

どうやら、道具に手を翳すと灯りが点く機能があるらしい。

これは便利だな。

それにしても、円柱で装飾が一切なしというシンプルなデザインが、少し気になる。

少し装飾があった方が、価値が上がりそうだけど。

「まずは一般の人が買える値段で売るつもりなんだ。だから装飾はせず、値段を抑える事にしたんだよ」

なるほど、売る相手が買える値段に抑えるためにこのデザインなのか。

凄いな。

「ヒカル。人のエンペラス国に、店は出さないのか?」

もしかして人に拒絶反応でもあるのだろうか?

ヒカルは、ウサやクウヒと仲が良いからな。

「少し遅れているけど、もう少ししたらお店が完成する予定だよ」

「そうなんだ」

遅れているだけか、良かった。

今、3国は話し合いを続け関係改善を図っている。

そこで、俺の関係者が3国に対して違いを出してしまうのは良くない。

「大丈夫。今は3国にとって、とても重要な時期だと分かっているから、決して邪魔はしないよ」

ふんわり笑うヒカルが、逞しく見える。

それに笑みが浮かぶ。

随分と、ヒカルは変わった。

前のように、周りの顔色を窺う事が無くなって自分の考えを持てるようになった。

「そうか。ヒカルがそう言うなら、安心だな」

俺の言葉に、嬉しそうに笑うヒカル。

この笑顔も、昔よりずっとよくなった。

最初の頃は、少し引きつっていたからな。

なんだろう、少し前の事なのに懐かしい。

子供の成長を目の辺りにしたからかな?

「主?」

「あぁ、ごめん。えっと『この照明器具を売っていいか?』という質問だったな」

「うん」

俺に聞く必要は無いと思うんだけどな。

これが、俺が作った農業隊のセブンティーンとナインティーンが作った物だとしても。

セブンティーンとナインティーンは、エルフ国から持ってきた道具の設計図に興味を持ち、いろいろ作りだした変わった子達だ。

俺の家でも彼らの作った道具が見られるようになった。

「もちろん問題ないよ。セブンティーンとナインティーンは何と言っているんだ?」

「主が許可したらいいと」

皆、俺を気にし過ぎだ。

「それなら、何の問題も無いな」

「ありがとう」

「これからは、俺の許可を取る必要は無いから」

俺の言葉に、嬉しそうに笑って頷くヒカル。

あっ、でも1つだけ約束をしておこうかな。

「ただ1つだけ」

「何?」

「故意に誰かを大怪我させるような道具は売らない事。これさえ守ってくれたらいいよ」

「大怪我させる道具……分かった。絶対に売らない」

「うん。頼むな。あっ! 包丁とか生活に必要な物ならいいぞ。あれは使う側の問題だから」

俺が少し大きな声で言うと、驚いた表情になったヒカル。

そして、小さく笑った。

「ははっ。わかった」

目の前にある照明器具に、手を近付ける。

ぱっと、点いていた灯りが消える。

反応がいいな。

「そういえば、どうして照明器具を最初に作ったんだ?」

「この世界の照明器具は、どれも性能が悪いんだ。魔力を食うくせに、そんなに明るくならない」

そういえば、ダダビス達がウッドデッキにある照明器具を見て、「明るい」と驚いていた事があったな。

驚く理由が分からなくて不思議に思っていたけど、この世界の照明器具はそんなに明るくならないのか。

「そうなんだ」

「うん。でも問題は明るさではなく、魔力の消費量なんだ」

魔力の消費量?

ヒカルは目の前の照明器具を持って、裏を見せてくれた。

そこには、魔石が嵌っていた。

「この魔石は、エントール国で一般的に出回っているレベルの物なんだけど、この魔石に入っている魔力量だと1週間に2個は必要になるんだ。魔石はそんなに安い物じゃない。だから、どの家も魔石代が負担なんだ」

そうなんだ。

「だから、魔石1つでせめて1ヶ月は使える照明器具を作ろうと思って。残念ながら、この照明器具では3週間が限度なんだけど」

1週間に2個必要だった魔石が、3週間で1個。

かなり、負担が減ると思う。

「凄いじゃないか。確かに目標には届いていないみたいだけど、これだって負担はかなり減るんだろう?」

「うん。1年を通すとかなりの負担が減るかな」

そうだろうな。

ヒカルは、凄い事を考えたな。

「それに目標に届くように、セブンティーンとナインティーンが研究を続けてくれている。だからそう遠くない未来に、1ヶ月に魔石1個の照明器具が出来ると思う」

「そうか。楽しみだな」

「うん」

ヒカルは、この世界の人達のために働く事にしたのかな?

俺が出来る事は応援ぐらいか。

「頑張って」

「ありがとう」

今からオルサガス国に行くというヒカルを見送る。

「ヒカルだけじゃなくウサもクウヒも、何か始めているんだよな」

ウサは、獣人国の王の娘……えっとエリトティールといい関係を築いているみたいだし。

クウヒは、エンペラス国によく行っているのを知っている。

最初はクウヒを心配した。

エンペラス国と言えば、彼を奴隷として扱っていた国だ。

今の王、ガンミルゼは前の王と違うと分かっている。

でも今も、奴隷が許されていた国に戻そうとする勢力がある。

だから、クウヒが傷つけられるのではないかと思った。

まぁそれは、無駄な心配だったみたいだけどな。

「昨日なんて、楽しそうにエンペラス国に行っていたからな」

いったい何をしているのか。

聞いても、笑って「後片付け」と言われてしまったし。

「ん~。後片付けって、何の後片付けなんだ?」

思い浮かぶのは、奴隷が許されていた国に戻そうとしている勢力の後片付け。

これを後片付けと言っていいのかは不明だけど。

まぁ、本人が楽しそうなので、もう少し様子を見ようと思う。

エンペラス国にも孫アリや孫蜘蛛、子アリ達や子蜘蛛達がお邪魔している。

クウヒに危険がせまったら、教えてくれるようにお願いしてあるから。

「主」

んっ?

呼ばれた方を見ると、どこか緊張感を漂わせたサブリーダーがいた。

「どうした?」

「魔界に行っている者達から、オアジュ魔神のパートナーであるマカーシャ殿の娘、カーシャ殿について報告がありました」

カーシャの?

雰囲気から、報告された内容に問題があるみたいだな。

「分かった。話を聞くのは、ここでいいか?」

リビングなんだけど。

誰にも聞かれたくないなら、俺の寝室がベストかな?

まぁ、天井には孫蜘蛛達がいるので、話は筒抜けだけど。

完全に内緒話をしたいなら、魔法で音を制御するしかないな。

それだったら、ここでも出来るし。

「ここでいいですし、聞かれて困る内容ではないです」

「分かった。それで?」

「魔界を牛耳ろうとしている勢力のトップ、ギュア魔神がカーシャ殿を狙っている理由ですが、力の強化が目的の様です」

サブリーダーの言葉に首を傾げる。

力を強化するのに、カーシャが必要だというのか?

「ギュア魔神の周りを探っていたら、彼の指示である研究が続けられている事が分かりました。その研究が、魔神達の力を強化する方法でした。その方法の1つが、魔族の核を魔神の核に取り込む方法です。しかも、魔族ならだれでもいいのではなく、魔族と魔族の間に生まれた光の魔力に耐性を持つ魔族みたいです」

魔族の核を魔神の核に取り込む?

核が奪われれば、奪われた者は死ぬ。

つまり、力を強化するためにカーシャを殺そうとしているという事か。

カーシャは俺が保護している者だ、

それを害そうとするなら、ギュア魔神は敵。