軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32.忘れていた!

楽しそうな雰囲気で、魔界に行く親アリ達を見送る。

最近、アリ達の中で魔界に行くのがブームになっている。

いったい魔界で何をしているのか不安になって、リーダーに聞いてみた。

答えは「大丈夫です。彼等は、新しいおもちゃを見つけてはしゃいでいるだけです」らしい。

魔界に、アリ達が楽しむおもちゃがあるそうだ。

少し不安を感じたけど、リーダーが力強くもう一度「アリ達は、大丈夫です」と言ったので、信じよう。

アリ達は大丈夫なんだと。

んっ?

「アリ達」は、大丈夫?

では、誰が……魔界に住む魔神や魔族は?

「大丈夫です。友好的な者に不利になるような事はしません」

俺の不安を感じ取ったのか、リーダーが言ってくれた。

まぁ、それなら大丈夫だろう。

こちらに敵意を向ける者まで、守る必要は無いからな。

そうだ。

とうとう俺が作った「魔珠宝らしい物」を試してくれたそうだ。

試してくれたのはオアジュ魔神の、一番上の息子さん。

今のところ、息子さんとその彼女さんに異常は見られない。

順調に体に馴染み出しているそうだ。

良かった。

使った瞬間に苦しんだり、最悪死んだりなんてならなくて。

俺の魔神力が、魔界の魔神力とは異なる事は分かっていた。

だから、その影響がどこまで出るか不安だった。

でも、今のところは問題なし。

魔珠宝が体に完全に馴染むまで、約2ヶ月掛かるらしい。

そこまで問題が出ない事を祈るしかないな。

親アリ達を見送った後、地下神殿へ行く。

妖精と合流して、毎日の日課となっている地下4階に下りる。

「ん~、全く変化がない」

地下神殿、地下4階。

棺桶が消えて、植物の芽が一面に広がった。

少し前に本葉が出て喜んでいたんだが、そこから全く変化が起きない。

そう、1㎜も育っていない。

「今日も駄目だね」

妖精が植物の上をふわふわと飛ぶ。

不安に思って、神力や魔神力を植物に注ぐべきかと考えたが、何が起こるか分からないため止めた。

力を注いだ結果、枯れる可能性だってある。

「でも、ここまで全く成長が無いと……」

神力ぐらいは試してみようかなと、思ってしまう。

……ちょっとなら、大丈夫かもしれないし。

いや、 凄く繊細だったら?

ちょっとした変化で枯れてしまうかもしれない。

「ん~、試す? いや、でもなぁ」

この植物が何かも分からないのに、手を出すのはやっぱり危険だよな。

「あっ! 主! この葉っぱ、変わってる!」

不意に聞こえた妖精の声。

慌てて、妖精の傍まで飛ぶ。

「どれだ?」

「これこれ。でもこれって成長なのかな?」

妖精がくるくる飛んでいる中心の部分を見る。

……確かに他の葉とは異なる葉が見えた。

ただ、成長かと聞かれると「違う」と答えるだろうな。

妖精が見つけた本葉は、葉先に行くと白くグラデーションになっていた。

元々は緑一色だったので、確かに変わっている。

ただ、これがどういう変化なのかがさっぱり分からないが。

そっと変化を見せた葉に、手を伸ばす。

ただし、触れないように注意する。

「んっ?」

手が葉に近付くと、指先にピリピリした力を感じた。

その力は、よく知っていた。

核の周辺にあった呪いから感じた力だ。

「主?」

変な位置に手を止めた俺を不思議そうに妖精が見る。

それに笑って、もう少しだけ変化した葉に手を近付けた。

「あれ?」

ピリピリと感じていた力が無くなった。

代わりに、温かい力を感じる。

「……まぁ、いいか」

とにかく成長は違うけど変化が起きた。

このまま様子を見るしかないな。

「墓場に行こうか」

「はい」

妖精と一緒に、地下4階から墓場に移動する。

そして湖まで来る。

「およ~」

「ぽわ~」

近付くと、のろくろちゃん達が湖からふわふわと飛び出してくる。

その姿に笑みが浮かぶ。

「おはよう」

声を掛けると、近付いてくるのろくろちゃん達。

「ぽあぽあ~」

「ほほるる~」

どうやら今日は、しっかりと話す事が出来ないのろくろちゃん達だけみたいだ。

この子達の場合は、湖の様子が聞けないんだよな。

「ちょっとごめんね」

のろくろちゃん達に断りを入れてから、湖を覗き込む。

今日もいつも通り、遠くにきらきら光る核が微かに見えた。

問題なし。

「ぽわ~」

んっ?

湖から出て来たのろくろちゃんを見る。

「あっ、この子は」

随分と強い呪いの力を持っている。

強い呪いの力は、のろくろちゃん自身を苦しめる事がある。

この子は大丈夫だろうか?

「きゃう」

あぁ、この子も会話は無理な子か。

「おはよう」

こっちの言葉は理解できるかな?

「ほん」

頷いたという事は、理解出来る子だな。

良かった。

「呪いの力が強いけど、大丈夫? 浄化が必要かな?」

「ほん」

頷くとスッと俺に近付くのろくろちゃん。

浄化をして欲しくて、湖から出て来たのかもしれない。

手をのろくろちゃんに翳す。

「浄化」

のろくろちゃんから出ていた、強い呪いの力がスッと消える。

「ほわっ、ほわっ」

嬉しそうに飛ぶのろくろちゃんをそっと撫でる。

過去の記憶に引きずられて、怨みや憎しみを募らせるのろくろちゃんがいる。

そうなると呪いの力が増して、本人を苦しめるのだ。

こうなってしまうと、俺の浄化が必要になる。

「ほう~」

のろくろちゃんが、俺の手を見る。

その手は、のろくろちゃんを撫でたので黒くなっている。

「大丈夫だよ。浄化。ほらっ」

元に戻った手を見せると、くるくると俺の周りを飛ぶのろくろちゃん。

しばらくすると落ち着いたのか、湖の中に戻って行った。

少し離れた場所で様子を見ていたのろくろちゃん達が、寄ってくる。

強い呪いの力に近付くと、巻き込まれてしまうみたいで近付かないのだ。

「もう、大丈夫だからな」

少しの間、のろくろちゃん達と遊ぶ。

と言っても、俺の周りを飛んでいるのを見ているだけなんだけど。

「そろそろ家に戻るな」

手を振ると、それに合わせて空中で揺れるのろくろちゃん達。

それを見ていると癒される。

たまに間違って黒い煙を出しているけど。

まぁ、癒される。

妖精と地下神殿に戻る。

「主、元古代遺跡があった場所の名前は決めたの?」

妖精の言葉に、ちょっと固まる。

「あっ」

すっかり忘れていた。

本当に綺麗さっぱり、言われるまで思い出す事も無かった。

「このちゃんが、いつ名前が決まるのかワクワクしてたよ」

このちゃんとは、三つ目の事だよな。

あぁ、悪いと思うが気が重い。

でも、自分の像がある場所を自分で名付けるなんて、もの凄く恥ずかしいんだよ。

「それなんだけど、このちゃんはどんなのがいいと言っていた?」

どんなに考えても、きっと思い浮かぶ名前はない。

なので、このちゃんが考えた中に良い名前があったら使わせてもらおう。

「それが、恐れ多くて何も考えられないって叫んでたよ」

そんなぁ。

「あっ、飛びトカゲ殿は、『呪王尊堂』って言ってたよ」

じゅおうそんどう?

あぁ、呪いの王で呪王か。

そんどうは、相手を敬っていう意味がある尊堂かな。

シンプルでいいな。

どうせ、どんな名前を付けても恥ずかしいんだ。

それなら、この『呪王尊堂』でいいんじゃないか?

呪王の代が替わって、石像が変わっても名前は使えるし。

ただ尊堂は、建物に付ける名前じゃなかったか?

……まぁ、細かい事は気にしなくていいよな。

「その名前、良いな」

「そうだよね。分かりやすく、主が凄い存在だって分かるから」

えっ、凄い存在?

そんな印象を受ける名前かな?

ただ、どんな存在かと表す名前だと思ったんだけど。

「このちゃんに言ってくるね」

「まっ……」

目の前から妖精が消える。

止める間も無かった。

「まぁ、大丈夫だろう」

……たぶん。