作品タイトル不明
15.報告書とこれからの事。
-保管場所管理担当 一つ目のガンガ視点-
主が数日前に、洞窟に挑戦してくれました。
その報告書を、隅から隅まで確認していきます。
きっと、洞窟内の仕掛けや罠は、まだまだ進化出来るはずですから。
「最初の扉に主は一切反応せずですか」
まぁ、当然です。
あんな怪しい扉に、何の疑いもなく近付く者などいません。
まぁ、ダイアウルフ達とアリ達は自分達を見たいと近付き罠に掛かりましたが。
「1階は呪いの階でしたね。えっと主は……全く罠に掛かっていませんね。少しの迷いも無しですか」
この階は、かなり改善が必要ですね。
今のままだと、欲望に忠実な者しか罠に掛かりません。
主のような、欲望とは無縁の存在にはただの通り道です。
まぁ、欲望の塊にはかなり有効な階なのですが、仕掛けが甘かった。
龍とフェンリル達は、呪いに掛かっても次の攻撃が効きませんからね。
最近の彼らは、呪いにどうやったら掛からずにいられるかを研究しています。
そしてその研究成果が出始めています。
ん~、これについてはトレント達と相談ですね。
もっと深く濃い呪いを掛けるには、どうしたらいいのか。
攻撃ももっと、効果のあるものを探さなければいけません。
「次は、闇の階ですね。さすが主です。灯りが消えても、慌てる事は無かったみたいですね」
蜘蛛達は大騒ぎして、最初の挑戦では約9割がのろくろちゃんの呪いに掛かりましたよね。
ガルム達もすぐに灯を点したせいで呪われてました。
そうだ、1階のトレントの呪いとのろくろちゃんの呪いを組み合わせる事は出来ないでしょうか?
もし出来たら、凄い呪いが生まれそうですが。
あとで、トレントやのろくろちゃんに相談してみましょう。
「主の魔力探知は流石ですね。まさか、最後の挑戦まで行くとは思いませんでいた」
主の魔力はかなり特徴的です。
まるで他者の魔力を守るように包み込んでしまうのですから。
まぁ、威力が強いので弱い魔力は主の魔力に飲み込まれるか、消滅してしまうのですが。
「龍達の魔力しか主の魔力に耐えられないというのは問題ですね」
第1位の神が攻撃してきた時、主が全開で力を使ったため近付く事さえ出来ませんでした。
あれでは主を手助けする事が出来ません。
「守られるだけでなく、共に戦える存在になりたいですね。そのためには、魔力を強化しなければなりませんが、今のままでは不可能です。難しい問題です」
そういえば、この階を作る事で魔石の限界などを知る事が出来たのでした。
これからはもっと、魔石が活躍する場が増えそうですね。
「んっ? 無料奉仕の日数を減らして欲しいという要望が大量に来ていますね。もちろん、却下です。だいたい最初の挑戦で挫折するのが駄目なのです。ですが、挫折する場所によって無料奉仕の日数を変化させるのはいいかもしれません。今はどこでも挫折したら1ヶ月ですからね」
えっと、付箋に「挫折した場所によって日数を変化させる事にする」と書いて、貼り付けておきましょう。
「次は落とし穴の階ですね」
この階は、かなり人気なんですよね。
人気になるのが良い事なのかは、ちょっと疑問ですが。
んっ?
魔力補充弾を紛れ込ませる設定を忘れていたようですね。
まぁ、もう過ぎた事なので仕方ないです。
「それにしても、さすが主です。結界解除の魔法を跳ね除けてしまいましたか」
ですが、ここで感心していては駄目ですね。
主の結界も解除できるような魔力強化の方法を考え出さなければなりません。
やはり魔力の、いえ違います。
魔力だけではなく、全ての力を強化する必要がありますね。
「そういえば、マグマの威力を上げるように毛糸玉さんにお願いしていたんですが、出来たのでしょうか?」
えっと、返答が来ていたような……ありました。
毛糸玉さんからの返答は、「今が最大威力なので只今研究中」ですか。
もっと下から恐怖を掛ければ、判断力を揺さぶる事が出来ると思うのです。
これは、これからに期待しましょう。
「それにしても主の魔力調整は凄いですね。空気弾に合わせて自然と魔力を調整して叩き落としている」
あの空気弾は、弱い力だと立っている場所から叩き出され、強い力だと目の前で爆ぜるようになっています。
主は1度も、空気弾を爆ぜさせていないようです。
龍達とコアが全ての空気弾を爆ぜさせていたので、罠に問題があるのかと心配したのですが、大丈夫ですね。
「んっ? リーダーから注意事項ですか? えっと、『主の使う力の割合が、変化してきている』ですか。つまり、これまで主は魔力を中心に使っていましたが、そのバランスが変わってきているという事ですね。確かに、世界に流れる力に変化が起こっていると飛びトカゲが言っていましたね」
主の力は、ほぼ守りに特化しています。
だから、変化が起こっても安心して様子を見ていられますね。
「次は鏡の階ですね。えっ? 鏡に何も映らなかった?」
おかしいですね。
あの階の鏡には、主にとって心を揺さぶる物や人物が映し出されるはずなのですが。
リーダーの報告から、1度も無かったみたいですね。
何故でしょうか?
この世界に来るまでの記憶が無い子供達でさえ、鏡には色々な物が映りました。
ん~なぜ主は……考えても、分かりませんね。
「仕方ないですね。ここでは思うような結果が出なかったという事にしましょう。罠も発動していませんし」
考えられるありとあらゆる仕掛けを用意したのですが、どれも活用できなかったのは悲しいですね。
せめて巨大ゴーレムが動くところは見て欲しかったです。
我々一つ目達の力作だったのですから。
まぁ、次に期待しましょう。
「あっ、主は降参したようですね。一度でも仕掛けが発動しないと、出口のマークが表示されないせいですね。まさか一度も仕掛けを動かす事なく、しかも最短ルートで進むとは思いませんでしたからね」
ここも改善する必要がありますね。
「次が最後の精霊の階ですね」
精霊達が「階」と言ったら嫌がるので「精霊の空間」と呼んでいますが、なぜ嫌なんでしょうね?
精霊達の事は、今もまだ色々と不思議な事が多いです。
今回も協力を求めると、勝手にあの空間を作りあげましたからね。
いったいどこから水を運んできたのか、いまも疑問です。
ふふっ、勝手に空間を作りあげてしまったので最初の予定とは大きく変わったんですよね。
あの空間を生かす飛び石を使った遊びを思いついた時は嬉しかったですね。
「精霊たちもあの遊びに満足しているみたいですし、良かったです」
ただ、精霊の様子をリーダーに教えて頂いたのですが、移動スピードがどんどん速くなっているそうなんです。
そろそろ制限をお願いした方が良いのでしょうか?
それとも彼らに任せるべきか……これはリーダーと相談しましょう。
「主は一度も精霊から落とされなかったんですね」
他の者達は、みな振り落とされたんですよね。
あれ?
主の時は、精霊が持つ場所を作らなかったみたいですね。
では主は、精霊の何を掴んでいたんでしょうか?
まさか、ちょっと出っ張っている部分でしょうか?
まぁ、掴もうと思えば掴めるとは思いますが。
リーダーの報告書では、「主は、振り落とされないための魔法を使った形跡は無し」とありますね。
ん~、あの小さな出っ張りを掴むだけで振り落とされないなんて、ありえるのでしょうか?
もしかしてリーダーが探知できない力が存在しているかも……なんて飛躍し過ぎですね。
「ただ主の力は未知数なんですよね」
今まで光の魔力、闇の魔力、神力に魔神力、そして主が作りだした新しい力。
これらを混ぜ合わせた力など、存在したことはありません。
何がどんな働きをするのか、まだまだ研究する必要があります。
「ガンガ。少しよろしいですか?」
「サブリーダーがここに来るのは珍しいですね。どうぞ」
ここは、保管場所を監視する場所。
洞窟の最下層です。
「神国から神族が忍び込もうとしていました」
またですか。
「それで、どうしましたか?」
「いつも通り呪いの空間に誘導し、力を削ぎ確保済みです。アイオン神に連絡し、引き取りに来てもらう予定です」
この世界を守るために作った異空間。
この洞窟と同じ罠を使用したのですが、見事に引っ掛かりますね。
「神族って、今まで来た全員が呪いの空間で確保されていますよね?」
サブリーダーの言葉に、今まで来た神族29名を思い出します。
「はい、その通りです。見事に全員が、呪いの空間で捕まります」
神族があれほど欲の塊だとは。
魔族でも、半分……いえ2割ほどは呪いの空間を突破できるのに。
とはいえ、魔族も次の空間で全員が捕まっているのですが。
これでは、神族や魔族の研究が進みません。
どうしたらいいのでしょうかね?