作品タイトル不明
14.えっ?
精霊の背中から、47と書かれた飛び石に飛び乗る。
沈む気配なし!
「良かったぁ」
あと3つ。
というか、45番以降は飛び石が動き出すなんて聞いてないぞ!
47と書かれた飛び石から精霊に飛び移る。
「ありがとう。次に行こうか」
精霊が前に進みだすと、ヒヤッとした寒気を感じた。
「右に旋回」
ぐんと左に体が引っ張られる。
それを何とか耐えて、体勢を整える。
バシャーン。
後ろで大きな水しぶきの音がする。
良かったぁ。
曲がって正解だったな。
「あった! げっ、近くにもう一つ48がある」
激しく動き回っているから、魔力で詳しく調べるのが難しいんだよな。
何となくわかるんだけど、調べる対象が近いと分からなくなる。
「どっちだ? あっ、左、左に曲がって」
バシャバシャバシャ。
水中から、3匹の精霊が顔を出す。
ぎりぎりセーフだな。
あのまま直進に進んでいたら、下から精霊に突き上げられるところだった。
「うわ、動き出した」
48の番号が書かれている飛び石を見ると、先ほどより2つの石が近づいている事に気付く。
本当に、クリアーさせる気がないみたいだな。
もうこれは、勘で行くしかない。
どっちだ?
どっちに飛び乗ればいい?
「右、右の飛び石に行ってくれ」
俺の勘を信じるしかない。
48と書かれた飛び石に向かって、精霊から体を乗り出す。
頼む、こっちが正解であってくれ!
スカッ。
「げっ!」
飛び石が消えた!
不正解だったかぁ。
ドボーン。
「はぁ、疲れた」
水面に顔を出すと、ずっと俺を乗せてくれている精霊が傍に来る。
「ありがとう」
精霊に腕を乗せ、力を籠めて体を……うん、持ち上がらない。
かなり疲れているな。
腕がブルブルしているのが分かる。
「ヒール」
身体から疲れがスッと消えるのが分かる。
もう一度腕に力を籠めて、今度こそ精霊の上に乗る。
「はぁ、もう駄目だ」
今ので6回目。
あと3つだったのか、悔しい。
身体はヒールで癒したけど、集中力が途切れてしまった。
ん~、これはもう無理だな。
「リーダー、降参するよ」
「主、降参ですか?」
「あぁ、降参です」
俺、頑張ったと思うよ。
精霊の上で振り回されながら、飛び石に書かれている番号を調べてさ。
精霊の上で、仰向けで寝っ転がる。
涼しい風が吹いていて、気持ちがいい。
あ~……なんで俺、ここにいるんだろう?
「お疲れ様でした」
「ははっ。本当に」
精霊から飛び降りて、乗せてくれていた精霊の頭を撫でる。
「ありがとう。とても……楽しかったよ」
本当にスリル満点だったなぁ。
「そうだ、リーダー。降参してるけど、罰は?」
聞いておくのを忘れていたな。
「あっ、……ありません」
「えっ? 無いのか?」
それはおかしくないか?
もしかして、俺には言えない罰なのか?
「はい、ありません。主にとっては全く意味のない罰ですから」
罰はあるけど、俺には意味がない?
「難しい罰なのか?」
「いえ、とても簡単です」
簡単?
まぁ、リーダーがそう言うなら、そうなんだろう。
「分かった。よしっ、帰ろうか」
「はい」
んっ?
本当に俺は何をしに来たんだっけ?
「主、こちらにどうぞ」
「あぁ」
って、駄目だろう。
術式を刻んだ魔石の保管場所を確認しに来たんだから。
「リーダー。魔石の保管場所だけど」
「はい。こちらです」
えっ、この階にあるのか?
不思議に思いながらリーダーに付いて行くと、壁に設置された扉が見えた。
その扉から中に入ると、長い廊下に出る。
「こんな場所があったんだ」
「はい。この階には最も貴重な物を置いています。魔石はこちらです」
リーダーの案内で、ある部屋に入ると棚が並んでいた。
そしてその棚には、整然と並べられた魔石があった。
その1つを手に取ると、術式が刻まれている事に気付く。
「もしかしてこの部屋にある魔石には、全て術式が刻まれているのか?」
「はい。試作品の物も含めると500個ほどあります」
「ここに来るには、それぞれの階をクリアーしないと駄目という事か」
「いえ、案内役が一緒でしたら、直通で来られます」
えっ?
今、なんて言った?
……直通?
マジで?
だったら、俺のあの頑張りは?
「えっと。案内役がいない場合は?」
「各階のゲームをクリアーする必要があります」
「もし無理に、この場所に来ようとしたら?」
「絶対に無理だと思いますが、無理に転移した場合は、一瞬で体が刻まれます」
刻まれるって、なんだっけ?
あぁ、ミンチになるのか。
……そんな怖い場所なのか、ここ。
「あははっ、そうか」
ちょっと過激なような気もするけど、ここにある魔石は絶対に盗まれる訳にはいかないし。
……まぁ、良いか。
うん、こういう場所も必要なんだろう。
「主、この場所を案内しますね」
「頼むよ。魔石以外にも何があるんだ?」
「この階には、魔石や武器などがあります」
武器?
皆の戦い方を見ているけど、魔法や素手だよな。
あっ、そういえばクウヒやウサ、子供達が武器を持っていた事があったな。
「こちらです」
「えっ。凄いな」
魔石が置かれていた部屋の隣。
その部屋には、壁一面にずらっと剣が飾られていた。
なんだろう?
獣人達が持っていた剣と少し違うような気がする。
「これらは、どうしたんだ?」
「作りました」
作った?
「素材はミスリルとオリハルコンです」
ミスリルとオリハルコン?
……あっ、家の地下にあった鉱物だ。
ミスリルをナイフにしたら、凄い切れ味で扱いに注意が必要になったんだよな。
オリハルコンの方は、魔法を通しにくくて扱いづらかった。
この2つの鉱物を利用した剣?
「その2つの鉱物を使った理由でもあるのか?」
「はい。ミスリルとオリハルコンの剣は、他の鉱物で作った剣より折れにくく欠けにくいです」
「そうなんだ。武器に向いている鉱物という事か」
「はい。それに術式を刻む事も出来るので、かなり重宝すると思います」
つまり、この部屋の剣にも術式が刻まれているのか。
重宝するというけど、一体何を想定しているんだろう?
……確認は大事だけど。
「誰かと戦争を、しようとしている?」
例えば、神とか。
「いえ、そんな事は一切考えておりません。これらの武器は、防御の為です」
「防御?」
もしかして「攻撃は最大の防御になる」という、考えなのかな?
「分かった。まぁ、あまり強い武器を作らないようにな」
武器を使わなくても、強いんだから。
「分かりました」
武器が置いてある部屋を出て廊下を左右に見る。
右に行けば、魔石が置いてある部屋。
その隣がこの部屋で、左には……3部屋。
「左の部屋にも何か置いてあるのか?」
「主が、ギュッと濃縮させた力を籠めた魔石が大量にあります」
あ~、あれか。
この世界に来て、暫くは色々考える事があったけど、それも落ち着くと暇だったんだよな。
特に夜。
で、つい手元にあった魔石に、どこまで魔力が詰められるのか試したんだよ。
魔力を濃縮すれば、膨大な量の力を詰める事が出来るし。
まぁ結果、普通では取引出来ない魔石が、大量に出来上がったと。
いつの間にか部屋から消えていると思ったら、ここで管理してくれていたのか。
「ありがとう」
「いえ、あの魔石の新たな使い道も分かりましたので、大変助かりました」
新たな使い道?
「主の力がギュッと濃縮されているため、魔石に大きな傷をつけると大爆発を起こす起爆剤となるんです」
……えっ?
大爆発を起こす起爆剤?
やっぱり誰かに戦争でも吹っ掛けるつもりなのかな?
……神とかに。