作品タイトル不明
13.最後だ!
「次が、最後の階です」
最後か。
ようやく終われる。
「もっと作りたいのですが、罠の制御が意外に難しく、なかなか次に取り掛かれませんでした」
「もう、十分だと思うぞ」
絶対にまた、体験させられるような気がする。
その時の為にも、これ以上の階は作らせないようにしないと。
「そうですか?」
「うん」
だからここで終わり。
「分かりました」
よっしゃぁ!
「では、罠の精度をもっと上げていきますね」
んっ?
罠の精度?
リーダーを見ると、どことなく楽しそうな雰囲気を醸し出している。
これは、止めても無駄だな。
罠の精度が、上がるのか……はぁ。
「ほどほどにな。間違っても死んでしまう事が無いように」
さっきの落とし穴の空間は、ぎりぎりのような気がするんだよな。
「もちろんです。ゲームで死ぬような事故は起こりません」
あの落とし穴の空間は、問題ないみたいだな。
「えっと……大怪我も駄目だぞ」
「当然です」
本当に、分かっているのかな?
大丈夫だよね?
あれっ?
日頃の訓練でも、脚が無くなった蜘蛛達やアリ達がいるよな。
特訓では、フェンリル達でさえ脚や体から大量に血を流している事もある。
あれって……大怪我になるんじゃないか?
でも、あれを大怪我に入れてしまうと日頃の訓練も駄目という事になるよな?
ん?
リーダーにとって、大怪我とはどれくらいの事を指すんだろう?
訓練中によくある、脚がもげたり、足が燃えて無くなったりは……通常の怪我かな?
特訓でよくある、全身が燃えたり雷が通過したりするのは?
「あれっ? 大怪我の範囲が、間違ってないか?」
普通、脚がもげたりしたら大怪我だよな。
でもそんな怪我は、日常的にあるし……ははっ、この世界に毒されているなぁ。
「主、どうかしましたか?」
「いや、大丈夫。それよりリーダー、大怪我ってどれくらいの事を指すんだ?」
分からない時はリーダーだな。
「死ぬ一歩手前です」
…………なるほど。
とても簡単に答えてくれたけど、それって正解なのかな?
そもそも、死ぬ一歩手前なんて俺には分からないんだが。
「もう二歩手前ぐらいの怪我で止めようか」
分からないけど、もう少し安心できる範囲にして欲しい。
「二歩手前ですか?」
不思議そうに首を傾げるリーダー。
それに笑って誤魔化す。
「うん。よろしく」
「分かりました、調整します。では、次に行きましょう」
調整できるんだ。
凄いな。
「あぁ、行こうか」
「次は、精霊の空間です」
精霊?
あのアメーバみたいな子達が、いっぱいいる空間という事だよな。
これまで関わった精霊達は、皆いい子だったよな。
一段高くなっている円の中に立つと、スッと視界が変わる。
「うわ~、綺麗だな」
変わった視界の先には、一面に広がる青。
どうやら、かなり広い湖のようだ。
「凄いな」
光がさして水面がキラキラ光っているし、風で穏やかな波まで起こっている。
凄い再現だよな。
ここだけ見ていると、洞窟の中だとは思えない。
「飛び石があるんだな」
湖には、飛び石が一定の間隔で置かれている。
それを視線で追うと、湖の奥に続いている事が分かった。
「ただの飛び石という事は、無いんだろうな」
これまでの事を考えると、この飛び石を使って何かするかもしれない。
「罠かな?」
罠を仕掛けるとしたら、どんな罠が考えられるだろう?
近付いたら、呪われるとか?
乗ったら、どこからか攻撃されるとか?
実はこの湖の水には、毒があるとか?
まさか毒までは、使わないか。
あっ、精霊の空間だから、水の中には精霊がいるはずだ。
毒の心配はいらないな。
「うわぁ、凄い。湖の底までしっかり見える」
湖を覗き込むと、水が澄んでいるのだろう、底がはっきりと見えた。
ジッと湖を覗き込んでいると、何かがスッと横切った。
それを追うと、見知ったシルエット。
「アメ、じゃなくて精霊か」
ときどき、昔の呼び方で言ってしまうんだよな。
泳いでいる、他よりも大きな精霊を見ていると、スッと水面から顔を出した。
「おはよう。元気か?」
俺の言葉に、嬉しそうに寄ってくる精霊。
「ははっ、んっ? 待て待て、数が多い。皆で来られると対応できないから!」
最初は1匹だったのに、気付いたら沢山集まってきている事態になっていた。
というか、ちょっと多くない?
いったいどれだけの精霊が、ここに集まっているんだ?
というか、ここで精霊達と何をするんだ?
「リーダー。精霊と何をすればいいんだ?」
「追いかけっこです。あっ、場所は水上です」
水の上で追いかけっこ?
「ちなみに、挑戦者にはあれに乗ってもらいます」
リーダーが指す方を見ると、1匹の大きな精霊がいた。
「んっ? 精霊に乗って、精霊を追いかけるのか? それとも逃げる方?」
あれ?
精霊達って、早く移動出来たかな?
イメージではのんびりぷかぷか……これは川遊び時のアメーバだな。
「主には逃げてもらいます。一度でも捕まったらアウトです」
なるほど。
「飛び石には1番目から50番目までの番号が書いてあります。逃げながら順番に飛び石に乗ってもらいます。そして50番目に飛び乗るとゲームの終了」
飛び石に番号か?
逃げながら、書いてある数字を確認して飛び乗る。
結構、大変だな。
……罠は?
「順番通りなら、どの飛び石に乗っても大丈夫なのか?」
怪しいのはやっぱり飛び石だよな。
「はい。ただ、同じ番号が書いている飛び石があります。正しいのは、1個です」
つまり、番号通り乗って行っても中に不正解の飛び石があると。
「これ、水に落ちたら失敗? 失敗した場合はどうなるんだ?」
「水に落ちたら失敗です。そして最初からやり直しです。その場合は、飛び石の数字も変わります」
やり直しは、1回か2回ならいいけど、それ以上はつらいな。
「分かった。あっ、同じ番号を持つ飛び石はどれくらいあるんだ?」
「15個です」
結構あるんだな。
「ありがとう。よしっ、行くか」
これがクリアー出来たら、終わり。
なら、頑張ってとっとと終わらせよう。
準備してもらった精霊に乗って、動く事を考えて四つん這いになる。
精霊の一部を手で掴み動き出すのを待つ。
が、精霊は動こうとせずジッとしている。
「えっと、これは……」
どうやって精霊を動かすんだ?
川遊びを一緒にした精霊は、乗ったらゆっくり泳いでくれたんだよな。
あっ、精霊が俺を見た。
というか、精霊も困っているみたいだな。
えっと、俺が指示を出せばいいのかな?
「直進してくれ」
パシャン。
なるほど。
言葉で指示を出せばいいのか。
簡単……さすがに、遊びの時と違って速いな。
パシャンパシャンパシャンパシャンパシャンパシャンパシャン。
んっ?
後ろを見る。
パシャンパシャンパシャンパシャンパシャンパシャンパシャン。
追いかけて来る精霊が多すぎないか?
というか、追って来る精霊のスピードが上がっている。
「悪い、もう少し速く、うわっ」
急にスピードが!
というか、持っている手が離れそう。
あ、飛び石。
「番号?」
隣を通り過ぎたけど、番号なんてあったか?
あっ、また飛び石。
12番!
番号が書かれていない飛び石まであるのか。
えっ、1番はどこだ?
「あ~、右、右に旋回」
えっ、スピードは落ちないのか?
パシャンパシャンパシャンパシャンパシャンパシャンパシャン。
「げっ。というか、あの精霊たちは追いかけて来てどうするんだ?」
バシャッ。
「うわっ、冷たっ!」
水の球が飛んで来た方を見る。
あ~、精霊達はかなり楽しそうだね。
これ……クリアーは無理かも。