作品タイトル不明
12.ここも、特訓場所?
「あっ! 私とした事が……」
誘導していたリーダーが、急に立ち止まって頭を抱えた。
えっ、何?
「どうしたんだ?」
「さっきの落とし穴の階ですが、ある設定を無効化したままでした」
えっ、そうなのか?
「えっと、どんな設定だったんだ?」
「空気弾の中に、魔力補充弾を紛れ込ませる設定です」
魔力補充弾?
「それを叩き落としたら、立っている場所がどんどん削れていくはずだったんです」
良かったぁ。
その設定が無効化されていて。
あっ、その魔力補充弾が落とし穴の階の罠だったのか。
「この魔力補充弾を有効にしていた場合、7割ほどがマグマに落下しました。主、申し訳ありません。完璧な状態で提供できるように調整していたのですが、有効ボタンを押し忘れました」
いやいや、俺としては大変助かりました。
なんて事は言えないから、
「俺には今のものでも、十分だったよ」
本当に。
最後、思いっきりぶつかって来られて焦ったからね。
「それでは、とっさの判断力を鍛える事が出来ません」
ん?
鍛える?
もしかして、この場所って特訓場所でもあるのか?
「最初の場所では何を鍛えるんだ?」
「己の欲望や欲求に負けない心です」
えっ、欲望や欲求に負けない?
……それは、失敗していると思うけど。
ほとんどの者が、呪われると知りながら酒とつまみに手を伸ばしているんだろう?
「ただ我々の予想を大きく超えて、挑戦者は欲望に真っすぐでした。迷いなく欲しい物の為には、呪いに掛かりに行ってしまうので驚きです。いずれは、あの場所を大きく変化させたいと思っています」
呪いに掛かって植物に襲われても、完食する者もいるらしいからな。
確かに欲望に迷い無し、だな。
「次の闇の階は、魔力を自由自在に扱えるように鍛える場所です。主の魔力は傍にある他者の魔力を包み込んでしまうので、かなり繊細に魔力を動かして調べる必要があります。そのためには、自分の魔力を自由自在に操れないと駄目なのです。主の魔力の性質は、魔力を操る特訓にとても最適です」
俺の魔力が、役に立っているのか。
それなら、嬉しいかな。
「凄いな。ちゃんと考えられているんだな」
……あれっ?
俺は今から、術式を刻んだ魔石を保管している場所に向かっているんだよな?
いつの間に、特訓場所に来たんだ?
「ほ――」
「次は、鏡の階です」
まぁ、ここまで来たら付き合うしかないか。
「鏡の階?」
「はい。左右、上下、全て鏡張りとなっています」
鏡か。
そういえば、小さい頃に行った遊園地に鏡の館があったな。
あれは左右だけが鏡だったような気がするけど、どうだったかな?
「ここが入口です」
リーダーが、鏡になっている扉を開ける。
中に入ると、目の前には俺の姿が見えた。
既に、全面鏡張りになっているので、どこを見ても俺がいる。
その事に違和感を覚えながら、中に進む。
「ここでは何を鍛えるんだ?」
「魔力制御です」
魔力制御?
魔力の出る量を調整するという事か?
「この鏡は迷路になっています。正しい道を選んで進めば、何も起こらずゴールに出る事が出来ます」
鏡の迷路か、鏡の館も迷路だったな。
「迷路には、行き止まりの道も多く、小さな罠も仕掛けられています。それらを調べるには、魔力を周辺に流し、魔力の淀みや濃い場所を見つけて、罠などから回避します」
それが通常だよな。
「ただこの場所で魔力を周辺に流すと、攻撃されます」
「えっ、攻撃?」
「はい。鏡に魔力が少しでも触れると、いろいろと動き出すようになっているんです」
いろいろ?
なんだろう、言わないところが凄く怖いんだけど。
「リーダー、いろいろとは?」
「マグマ球、雷球、水球などの攻撃です。他にも、立っている場所の消滅もあります。本当に思いつく事を詰め込みました」
なんて恐ろしい場所なんだ。
「あっ、前に主に作ってもらった巨大な一つ目ゴーレムも参加しています」
巨大な一つ目ゴーレムか。
のろくろちゃん用にゴーレムを作った後、巨大なゴーレムが欲しいとお願いされたんだよな。
用途を聞いたら、防犯のためと言っていたから作って渡したけど、まさかここで活躍しているとは。
「主。とりあえず、先へ進みましょう」
リーダーを見ると、ジッと俺を見ている。
これは、俺が先に進むのを待っているんだろうな。
「鏡に触れたらアウト。つまり、いつものような探索はできない」
えっと、どうすればいいんだ?
とりあえず、この場所から動かないと駄目だよな。
全面鏡だから、どこに道があるのかも全く分からない。
あっ、魔力を見えるようにしてゆっくり鏡に近付けて、映らない場所を探したらいいのか。
「魔力玉」
ゆっくりと鏡に近付けて……あっぶない。
鏡に近付き過ぎた。
あっ、あの場所は魔力玉が映らない。
という事は、あそこは通れる場所という事か。
「とりあえずこっちに行ってみよう」
歩きだすと、隣を楽しそうにリーダーが歩き出す。
次は……目が疲れてきたな。
「はぁ」
なんとかぎりぎり進んできたけど、この道であっているのか分からない。
これで行き止まりだったら泣きそう。
「次は……こっちか?」
通れる場所を何とか見つけ、次に進む。
そろそろゴールでもいいのでは?
というかお願いゴールして!
「あっ、行き止まり?」
マジか。
ここまで頑張って、行き止まり?
ふふふっ、本気で泣きそう。
「リーダー。降参」
魔力玉をゆっくり動かすのが疲れたし、どこを見ても俺がいる状況も無理!
気が狂いそうだ。
「降参ですか?」
リーダーの言葉に、その場に座り込んで頷く。
「凄いよこの場所、ゆっくりゆっくり精神的につらくなる」
「はい、そうなるようにしました」
ははっ、やっぱりそうなんだ。
「魔力制御は精神が安定している時は一番できます。精神が乱れた時も、魔力制御が出来る状態がベストです。主は、さすがですね。一度もぶれませんでした」
だって、攻撃されるのだけは嫌だったからな。
「では、ここを出ましょうか」
「あぁ、頼む。ここをクリアー出来なかった時の罰は?」
パコッ、スー。
「んっ?」
リーダーが行き止まりの壁の一ヶ所を押すと、壁の一部が移動した。
「こちらです」
「……緊急用の出口?」
「いいえ、正規の出口です」
道は合っていたのか。
あの出口は、どうやったら見つけられたんだ?
魔力で鏡に触れたら駄目だと言っていたよな?
……魔力で触れたら?
「もしかして、体から出ている魔力を完全に制御したら鏡を触っても問題なかったのか?」
「はい、その通りです」
「もしかして最初から?」
「はい」
そうだな。
リーダーは、「魔力で鏡に触れたら」と言っていた。
「主以外は、魔力を体の内に閉じ込めておくのは難しいです」
「そうなんだ」
「はい。なので、通常する説明を主だけ、しませんでした」
「ははッ、そうか」
その説明を誰よりも欲しかったよ。
リーダーの言葉はしっかり理解しないと駄目だな。