軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07.渦。

「あっ!」

魔神力をこのまま洞窟に溜めていくべきか悩んでいると、オアジュ魔神が声を上げた。

見ると、洞窟の上を見て驚いている。

視線を追ってみると、青い煙みたいな物がくるくると小さな渦を巻いていた。

「あれは?」

魔神力を溜めた事で何か起こったのだろうか?

「魔珠宝が出来る時に、力が渦を巻くんだ。もしかしたら、それかもしれない」

「えっ? この洞窟に溜まった魔神力は、まだそれほど濃くないと思うんだけど、そんなに簡単に魔珠宝は出来るのか?」

「いや、渦が出来たとしても、魔珠宝に成長するかは不明だ。魔珠宝の欠片が出来ても、途中で消えてしまう事も多いし。でも、渦が生まれたなら魔珠宝が作られる可能性がある」

なるほど、魔珠宝が出来る場所には必ず渦が生まれるという事か。

そしてその渦らしき物が出来たみたいだから、この洞窟で魔珠宝が出来る可能性があると。

ただし、魔界で作られる魔珠宝とは異なる物になるだろうけど。

「この洞窟で作られた物が、魔界で作られた魔珠宝と同じ力を持っていればいいけど」

「それなら俺の子供たちで試せばいい」

試すって実験台という事だよな。

「駄目だ。何かあったらどうするんだ?」

それこそ、生死にかかわる事が起きる事だってあるかもしれない。

「俺の子供達は魔神ではないが魔族の中ではそれなりに力を持っている。だからある程度の事には耐えられるはずだ」

「却下。そんな危険な事はさせられない」

この世界の魔神力で作った魔珠宝だから、そんなに危険な事は起きないとは思う。

でも、さすがに実験台なんてさせられない。

何か起こってからでは遅いのだから。

「そうか? 分かった。あっ、それならオウ魔神に調べてもらえばいい」

「あ~」

オウか。

色々この世界の事でもお世話になっているみたいなんだよな。

オアジュ魔神を通して俺も色々聞いたし。

これ以上、迷惑をかけるのも気が引けるんだけど。

「迷惑になると考えているなら問題ない。彼にとって新しい物は全て玩具だ。この世界の魔神力にもかなり興味を持っていた。その魔神力から魔珠宝が出来たなんて知ったら、何が何でも手に入れて調べようとするだろう。それこそ魔珠宝を手に入れるために、この世界に押しかけてくるかもしれない。いや、絶対に来るな」

「そうなのか?」

「間違いない。俺の魔神力が変わったという噂を聞いたオウ魔神は、真夜中に家まで押しかけて来て魔神力を奪っていったからな」

それは、なんというかご愁傷様。

「だから、この世界で作られた物を渡すのは、オウ魔神にとってご褒美にしかならない。魔珠宝もきっと渡すだけで隅から隅まで調べてくれるよ」

オアジュ魔神の言葉にリーダーが頷いている。

なるほど、研究好きか。

それも重度の。

それならお願いしようかな。

「分かった、それならお願いするよ。とはいっても、まだその魔珠宝が出来るか不明だけどな」

青い煙が渦を巻いているのを見る。

あっ、渦が3つに増えている。

魔珠宝が出来たらいいな。

「そうだ。この洞窟の魔神力の濃さはどうだ? もっと濃い方が良いのか?」

俺の言葉に少し困った表情をするオアジュ魔神。

「魔界で魔神力が溜まる場所は、空気が重く黒く淀んでいるんだ。この洞窟とはあまりに違い過ぎて、比較が出来ない」

「そうか」

違い過ぎて分からないか。

「勘になるけど、もっと魔神力は濃い方が良いような気がする。ただ本当に勘なんだけどな」

ずっと魔界で魔珠宝とそれが出来る場所を見てきたんだ、勘だって侮れない。

「分かった。今日はこの状態で様子をみよう。明日から魔神力を増やしていくよ」

空中に浮かんでいる魔石を見る。

まだ魔石からは、ゆっくりと魔神力が溢れている。

明日からこの魔石に、魔神力を溜めていけばいいのかな?

「主。この魔石は、倍増した魔神力を全て出し切ると砕けます」

「そうなのか?」

「はい。元の力を最大5倍にする事には成功しましたが、耐久性が無いんです。今のところ使い捨てです」

力を5倍にするのは、魔石にかなり負荷がかかるという事か。

「同じ効果のある魔石がありますので、明日用意しておきます」

「ありがとう。頼むな」

今日も力を増やす魔石が無かったら、渦が出来るまで魔神力を溜める事は出来なかったよな。

空中に浮かんでいる魔石を見る。

「元々魔石は凄い物だったけど、術式を刻んだ魔石はもっと凄い物になったな」

「そうですか?」

リーダーを見ると首を傾げている。

凄い物を作った感覚が無いのか?

あっ、「まだ研究が必要だ」と言っていたか。

リーダーたちが満足する完成品。

……ちょっと恐ろしい物かもな。

「リーダー。術式を刻んだ魔石は、絶対に我々以外の手に渡らないように注意してくれ」

「もちろんです。この種類の魔石の管理は徹底しているので大丈夫です」

リーダーがそう言うなら、大丈夫かな。

でも、ちょっと気になるな。

「あとで、管理している場所を見せてもらっていいか?」

「もちろんです! ご案内します」

ん?

なんでテンションが上がったんだ?

そんなに管理している場所に自信があるのか?

「ありがとう。頼むな」

「はい。ですがもしもの事があるので、絶対に私の傍を離れないで下さいね」

……えっ?

もしも?

いったい、管理している場所には何があるんだ?

ちょっと怖くなったんだけど。

いや、ゴーレム達の主人として確認はしておかないと駄目だよな。

うん。

「絶対に離れないから大丈夫だ」

確認は必要だけど、怖いものは怖いからな。

リーダーが離れるなと言うんだから、絶対に離れない。

「こわっ」

オアジュ魔神の言葉に、つい頷きそうになる。

いや、きっと大丈夫だ。

ただ、魔石を管理している場所を確認しに行くだけなんだから。

「主、大丈夫か?」

「ははっ。大丈夫だよ」

何となく帰る足が重くなった気がする。

まぁ、歩いていれば奥の洞窟から出てしまうんだけど。

「お帰りなさい。オアジュ、大丈夫だった?」

「あぁ、大丈夫だ」

オアジュ魔神がマカーシャを抱きしめると、カーシャもホッとした表情を見せた。

かなり心配させてしまったみたいだな。

何事も無くてよかった。

あれ?

カーシャは魔珠宝を持っているのか?

長く一緒にいると、お互いの力が反発しだすと言っていたよな?

子供なんだから親と長く一緒にいるよな?

それとも魔神や魔族は子供の期間が短いとか?

「オアジュ魔神」

「どうした?」

「魔神や魔族は、子供の期間が短いのか?」

俺の質問に、首を傾げるオアジュ魔神とマカーシャ。

「長く一緒にいるとお互いの力が反発すると言っていたから、子育ては短いのかと思って」

反発する前に離れるのかと思ったんだけど、違うのかな?

「この世界の者達と比べると、魔族も魔神も子育て期間は長いと思う。成人するまで100年ぐらいはかかるから」

「そんなに?」

あっ、そうか。

寿命が凄く長いから、時間の感覚が俺とは異なるんだった。

となると、「長く」というのは、100年以上の事だったりするのかな?

「あぁ。それと子供は成人を迎えるまで、両親から貰った魔珠宝の欠片が力を調整してくれているんだ。だから親とは長くいる事が出来るんだ」

大人になるまで両親の力が、守ってくれているという事だな。

「成人として認められるのは、いくつの時なんだ?」

「魔神が成人とみなされるのは、特殊な力が最終覚醒した時になる。そして魔族の場合は、体内の魔神力が充実した時になる。それまでは何年かかろうと成人とは認められない」

個人によって成人になる年が異なるのか。

どこか不思議な印象だな。