作品タイトル不明
08.寝ている間に。
「ただいま」
「「「「「おかえり」」」」」
家に戻ってくると、広場にいる仲間達から元気な声が返ってくる。
それに手を振っていると、ダダビス達が少し緊張した面持ちで頭を下げたのが見えた。
「ん~、まだあの調子か」
この世界が、神の管轄から離れて呪いの空間に移動したことは、この世界に住む者達は知らない。
ただ、この世界が襲われた事は強烈に心に刻まれたため、記憶から消す事は出来なかったらしい。
そのため、この世界の力を手に入れようとした「落ち神」に襲われたという事にしたと聞いた。
そして、その「落ち神」の攻撃を凌ぎ倒したのが俺になっているそうだ。
その話を聞いた時、あまりの内容に頭を抱えた。
ちなみに「落ち神」なんて呼ばれる存在は、いない。
ただ、リーダーが何となく言った言葉らしい。
なのに、アイオン神が気に入って第1位の神を「落ち神になった初めての神」として記録した。
神の世界全体に悪影響を及ぼした神の事を指すそうだ。
まぁ、それはどうでもいいのだが、起きた時には森の神の地位がもの凄い事になっていた。
起きている時なら全力で止めたのに、どうして俺は呑気に眠っていたんだ。
と、何度も後悔したが、それも後の祭り。
もうどうする事も出来ないので、諦めた。
そしてそのせいで、ダダビス達の態度がよそよそしくなってしまった。
少しだけ、近くなって喜んでいたのに。
残念だ。
まぁ、世界を救った存在を目の前にしたら、しょうがないのかもしれない。
俺だったら……とりあえず、機嫌を損ねたら大変なので近づかないな。
「はぁ」
ダダビス達のあの態度は、仕方ない。
またゆっくり、仲良くなっていこう。
「主? どうかしましたか? まだ力が安定しませんか?」
「大丈夫だ。力は完全に安定しているから」
さっき、魔神力だけを出す事も出来たんだから問題はない。
なのに、俺が倒れた事が影響しているのか、リーダー達が過保護になってしまった。
まぁ、それだけ心配させてしまったからなんだろうけど、こちらも時間を掛けて大丈夫だと分かってもらおう。
「あっ、子供達も戻って来たな」
森から帰ってくる子供達が俺に気付いたのか、大きく手を振っている。
それに振り返すと、桜達の姿が一気に近付いた。
「「「主、ただいま!」」」
桜と月と紅葉の声に、苦笑する。
「おかえり。走るのが、また速くなったみたいだな」
森を出た場所から、俺のいる所まで少し距離がある。
なのに、一瞬で俺の傍まで来た。
前までは、もう少し時間が掛っていたと思う。
と言っても数十秒の違いだろうけど。
「ふふっ。この世界に来てから体がすっごく軽いんだ」
月の言葉に、桜と紅葉を見ると頷いている。
「そうか。体に合ってよかったよ」
この世界の力は、光の魔力に闇の魔力。
神力に魔神力、そして呪いの力が混ざり合っている。
普通は、光の魔力と闇の魔力が、神力と魔神力が反発し、呪いの力はどの力とも相反するらしい。
それなのに、この世界では5つの力が綺麗に混ざり合っている。
それぞれの力の役割を、俺とヒカルが変えてしまったからだ。
そしてその混ざり合った力は、仲間達や子供たちに良い影響を与えている。
あと、俺が作った神力に似た力は、俺の中だけに存在している。
以前は垂れ流した力の中に紛れ込んでいたそうだけど、今はなぜか含まれなくなった。
原因は、もちろん不明。
問題なさそうなので、様子見状態だ。
「主。今日は新たな大地へ行くと言っていたけど、どうだった?」
「こっちの森とは違った植物があって、楽しめたぞ」
翼の興味津々の質問に答えると、後ろを振り返る。
子供達の視線が俺の後ろへ向く。
「オアジュ魔神と……誰だ?」
風太の言葉に、マカーシャとカーシャが子供達に頭を下げる。
「初めまして、オアジュの妻でマカーシャです。今日からよろしくお願いしますね」
「マカーシャの娘で、カーシャです。よろしくお願いします」
「オアジュ魔神の妻? うわっ、綺麗で品があるね。ビックリした」
桜の言葉に、月も驚いた表情で頷く。
「うん。本当にビックリだね。凄くガサツな人が来ると思っていたから」
おいおい、本人を前にして何を言い出すんだ?
「うん。俺もそう思っていた」
雷の言葉に首を傾げる。
どうやら子供達の様子から、皆が同じ意見だと分かる。
「どうしてガサツな人が来ると思ったんだ?」
「だって最初のオアジュ魔神を知っているから。あの時のオアジュ魔神は凄くガサツだったでしょう?」
あぁ、あの時のオアジュ魔神か。
確かに、彼は横暴で身勝手だったな。
でも、ガサツ?
……荒っぽい感じで品が無かったから、ガサツと言えばガサツか。
「魔界にいるとあんな性格になるんでしょう? だから、この世界で変わるとしても最初の頃は凄い性格なんだろうなって皆で話していたの」
「そうなんだ」
そういえば、魔界にいたわりには穏やかだったな。
「あっでも、魔界から来たテフォルテもオアジュ魔神とは違って、最初から話が出来るほど落ち着いていたぞ。まぁ、ちょっと威嚇はされたけど」
ケルベロスは凄い力を持っている。
あの時は、威嚇はされたがその力で何かをされる事はなかった。
ただ、子供達の無事を喜んでいた。
「あれは、アルト達の力を感じていたからだって言っていた。なんでもほわほわする力を感じていたんだって」
ほわほわする力?
「その力を感じたら、ただ生きていた事が嬉しくて他の事はどうでもよくなったらしい。ただ結界に邪魔された時は、ちょっと苛立ったみたいだけど」
翼の言葉に、あの時の事を思い出す。
俺が結界を解除しようとすると、問題ないのかと心配してくれたよな。
あれが、アルト達から感じたほわほわした力のせい?
「そうだったんだ。それでオアジュ魔神とは違ったのか」
「悪かった」
んっ?
オアジュ魔神を見ると、神妙な表情をしている。
それに首を傾げる。
「だから、最初の時の態度が悪くて……申し訳なかった」
あっ、責めるような言い方になっていたな。
「悪い、オアジュ魔神。既に謝って貰っているから気にする必要はない。えっと、彼女たちの態度が違った理由は何だろうと気になっただけだから」
「俺とマカーシャは魔珠宝で繋がっているから、この世界の力の影響を魔界にいながらマカーシャは受けたんだと思う。そしてカーシャはマカーシャと魔珠宝で繋がっているから、カーシャにも影響を与えたのだと思う」
魔珠宝の繋がりか。
凄い物なんだな。
「オアジュ魔神、ごめんなさい。私が変な事を言い出したせいで」
桜がオアジュ魔神に頭を下げる。
それに慌てて手と首を横に振るオアジュ魔神。
「大丈夫です。綺麗で品があると言ってくれたのは嬉しかったので」
少し照れた様子で言うオアジュ魔神に、桜達が顔を見合わせる。
あぁ、これは揶揄われるな。
よしっ、ここから避難しよう。
リーダーはどこに……横にいたのか。
「リーダー、術式を刻んだ魔石が置いてある場所を見たいんだけど、今から大丈夫か?」
「すみません。今からだと辿り着くのが明日の明け方になるかもしれません」
明日の明け方?
本当に、どんな場所に魔石は保管されているんだ?
時間がたてばたつほど、確かめるのに勇気が必要になるな。
「それなら明日の朝からで頼むよ」
こういうのは早めに終わらせよう。
どうせ、確認するんだから。