軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

05.とりあえず、作る。

「何をするつもりだ?」

オアジュ魔神が、不思議そうな表情で俺の隣に並ぶ。

「魔珠宝を作れないか、試そうと思って」

「「「はっ?」」」

オアジュ魔神だけでなく、マカーシャとカーシャの声も後ろから聞こえた。

「そんなに驚く事か?」

自然に生まれなくなったのなら、生まれなくなった原因を改善する。

それが難しいなら、他の方法を考える。

これは当然の事だ。

魔神力を溜めるだけで本当に魔珠宝が生まれるのかは、正直分からない。

だけど、挑戦する価値はあると思う。

「自然に生まれる物という認識だから、今の状況でも作ろうと思わなかったな」

「そうなんだ」

魔珠宝は、自然に生まれるという思い込みが強いのかな?

「それに魔珠宝を作る事が出来れば、魔神や魔族に恩を売れるしな」

魔界はお隣さん。

その世界が不安定な状態なのは困る。

でももっと困るのは、魔界がこの世界と敵対する事だ。

強硬派だと、元神力で作られたこの世界に敵意を向けるかもしれない。

可能性は少ないと思う。

今は呪いの世界にあるからな。

でも、絶対に無いとは言えない。

「ただ楽しそうだったから作ろうと思ったけど、これからの事を思えばいい案だったかも」

今の魔界は、これからの方向性を決める重要な問題に直面している。

まずは、その問題に巻き込まれないようにする事が大切だ。

でももっと重要なのは、解決した後の魔界と友好的な関係を築く事だ。

そのための布石をばらまいておく必要がある。

「魔珠宝は、良い布石になると思うんだよな」

穏健派と強硬派。

どちらにも魔珠宝を求める者はいるはず。

魔珠宝が作れれば、どちらにも恩を売った者がいる事になる。

うん。

やっぱり魔珠宝を作りたいな。

「んっ? どうした?」

リーダーが、ジッと俺を見ている事に気付く。

なぜかその視線に、不穏な物を感じたような気がする。

「いえ、大丈夫です」

ゾクッ。

えっ?

今の感じは何だろう?

リーダーを見る。

気のせいだったのかな?

今のリーダーからは、いつもの穏やかな雰囲気だ。

「主、あと少しで目的の洞窟に着きます」

「あぁ、分かった」

リーダーから殺気なんて……まさかね?

「こちらです」

リーダーが案内してくれた場所は、オアジュ魔神の家から歩いて10分ほどの岩で出来た洞窟。

「ここか」

洞窟の出入り口は少し狭く、俺だと問題ないがオアジュ魔神は少し引っ掛かりそうだ。

洞窟の中を覗き込む。

「あっ、中は広いんだな」

「はい。この洞窟は出入り口を抜けると広い空間に出ます。そして奥に続く道があり、奥にもう1つ空間があります。最初の空間より狭いですが、魔神力を溜めるなら適度な広さだと思います」

リーダーがそう言うなら、そうなんだろうな。

「分かった」

洞窟に入ると、すぐに広い空間に出る。

「外からの空気が、あまり入らない構造みたいだな」

空気が淀んでいるせいか、少し独特の臭いがする。

「浄化しますか?」

「待て」

浄化をしていいのかな?

魔神力が濃ければ、魔珠宝は出来るんだよな。

でもその場所が、浄化されていたら?

「オアジュ魔神、魔神力が溜まっている場所はどんな場所なんだ?」

洞窟に入ってきたオアジュ魔神を見る。

「どんな場所か……黒く淀んだ空気が充満している空間だな」

黒く淀んだ空気?

「それは魔神力が溜まった影響で起こる現象か? それとも、元々空気が淀んだ場所なのか?」

流れの滞っている場所だからといって、黒く淀んだ空気になるか?

「ん~……どうだろう? 俺は魔珠宝を取りに行った時に、その場所を見ただけだから」

詳しくは分からないという事だな。

「すまない」

「いや、大丈夫だ。リーダー、浄化は止めておこう」

「はい、分かりました」

えっと、奥の空間に行くには……あった。

広い空間の一部に、奥に繋がっている道を見つけた。

あまり広くない道だが、出入り口よりは広いのでオアジュ魔神も問題なく奥まで行けるだろう。

「奥に行こうか」

奥に続く道を歩いていると、独特な臭いが濃くなってくる。

それに少し顔を歪める。

「ちょっと慣れない臭いだな」

「そうだな」

オアジュ魔神もくさいのか、顔をしかめている。

あれ?

そういえば、広い空間にはマカーシャとカーシャがいたけど、ここにはいないな。

「2人には、さっきの空間で待つように言ったんだ。大丈夫だと思うが、2人は弱いから」

「そうか。初めて魔珠宝を作るから、何が起こるか分からないもんな」

……そうだよな。

何が起こるか、分からないんだよな。

ははっ。

失敗して何か起こる可能性を、全く考えてなかったな。

魔珠宝は魔神力の塊だ。

力をギュッと濃縮した物なんだから、問題が起こる可能性はある。

「結界を厳重にしてから挑戦だな」

魔神力がもし爆発しても、被害が結界内だけですむようにしないとな。

魔神力の力を抑えるなら、魔神力だけの力で作った結界の方が良いのかな?

それとも魔神力と対の神力だけで作るべきか?

……それぞれの力で結界を作って、重ね掛けしよう。

魔神力の結界で防げなかったら、神力の結界で防ぐように。

まぁ、まだ爆発すると決まったわけじゃないから……きっと大丈夫のはず。

「ここだな。凄く、くさいな」

これはちょっと我慢できないかな。

浄化は使えないから結界で臭いを防ぐか。

結界内に入る空気を清浄するイメージを作って、

「臭いの結界」

ついでにオアジュ魔神とリーダーにも。

「臭いの結界」

よし、くさい臭いを防ぐ事が出来たな。

何度か深呼吸をするが問題は無し。

良かった。

「やはり、主の結界は凄いな。全く臭いがしない。というか、臭いを防ぐ結界なんて初めてだ」

オアジュ魔神に張った結界は、問題ないようだな。

リーダーは……あっ、ゴーレムは臭いが分からないよな。

リーダーを見ると、リーダーが顔を上げて俺を見た。

「リーダーには必要が無かったな」

「そうですが、嬉しいです」

「そうなのか?」

「はい」

力強く頷くリーダーに、笑みが浮かぶ。

リーダーが嬉しいなら、無駄ではないよな。

「さて、ここに魔神力を溜めるんだけど。まずは、何か起こった時の事を考えて厳重に結界を張らないとな」

溜まった魔神力が爆発しても、結界内だけでおさまるようにイメージを作って。

他には何が予想できるだろう?

魔神力に影響する負の感情に対する結界は……でも、この世界では魔神力の認識が魔界とは異なるよな?

……あれ?

これって結構重要な事じゃないか?

魔界とこの世界では、魔神力の質が異なっている。

だってこの世界では、魔神力が負の感情に影響する事が無いからな。

まぁ、根本的なところは変わっていないみたいだけど。

……この世界の魔神力を集めて魔珠宝は生まれるのか?

生まれたとしても、魔界の魔珠宝と同じなんだろうか?

「……現物を見ないと判断は出来ないか。生まれるかどうかも、まだ分からないんだからな」

よしっ、気にせずとりあえず結界を張って、魔神力を溜めよう。

そういえば、この呪いの世界に来てから初めて力を使うかも。

駄々洩れしている力は意識してないから、使っている感覚は無い。

さて最初は、さっきの結界のイメージをもう一度作り上げて、

「魔神力の結界! 神力の結界!」

洞窟内の中心から洞窟全体に、光が2回広がる。

よしっ、たぶん成功。