作品タイトル不明
04.まじゅほう?
オアジュ魔神達の家に戻ると、丁度彼らが外へ出て来るところだった。
「終わったのか? 何か足りない物はないか?」
俺の言葉に、オアジュ魔神達が首を横に振る。
「主。こんな凄い家を借りてもいいのか?」
「あぁ、もちろん。あれ? 借りる?」
この家はオアジュ魔神の家だよな?
「借りるのではないのか?」
不思議そうな表情をするオアジュ魔神に頷く。
「この家は、オアジュ魔神の物だけど」
言いながらリーダーを見ると、頷いてくれた。
やっぱり正解だな。
「俺の物?」
「そのつもりなんだけど」
「買い取りという事か」
ん?
あっ、そうか。
家だもんな。
普通は、借りるか買い取るかだな。
「あ~、この世界に住んでくれる記念に、プレゼントするよ」
この世界の住宅事情なんて全く知らないから、売買価格とか分かるわけがない。
それに、この家はきっとこの世界では規格外だろうし。
借りるにしても買い取るにしても、値段をどうするのか考えるのが面倒くさい。
なので、プレゼントという事にしておこう。
「「プレゼント? この家をですか?」」
マカーシャとカーシャの驚いた声に、笑って頷く。
これで面倒な事はなし!
「あぁ、気に入ってくれれば嬉しいよ。あっ、そんな事より子供達がそれぞれ恋人? 妻? 旦那? を連れて来る予定なんだろう? 最終的には何人ぐらいになりそうなんだ? あと、いつ頃来るのか分かるといいんだが」
「この家を、そんな事で済ませていいのか分からないが」
いいの、いいの。
「子供たちの事は、まだ分からないんだ。今のところ全員来られるなら12人の予定なんだが」
分からない?
それに12人?
「子供は5人だったよな?」
5人のパートナーだとすると10人。
子供?
あっ、魔族と魔神は多重婚が出来るんだったな。
複数の相手がいる者がいるという事か。
「そうだ。子供達と恋人達の関係はとても良好だから、この世界に来ることも了承を既に貰っているそうだ。ただ、魔界に流れる力が最近悪くて、 魔珠宝(まじゅほう) が手に入らないんだ」
……んっ?
お互いに関係は良好で、ここに来ることは嫌がっていない。
それだけで十分だと思うんだが、「まじゅほう」?
魔界の力に影響する物みたいだけど、それが手に入らないとこっちには来られないのか?
「『まじゅほう』というのは、なんなんだ?」
「魔力の結晶だ。魔神力が集まるところに自然と生まれる物なんだ。それをお互いに贈りあう事で対になれるんだ」
対って、二つそろって一組みとなるという意味があったよな。
要するに、魔界に住む者達が相手と結ばれるためには、「まじゅほう」という物が必要という事か。
「大変そうだな」
「普通は簡単なんだ。魔珠宝は、魔神力濃度が濃い場所にすぐ生まれるから。だから探しても見つからない状況が、凄く異常なんだ」
「そうなんだ。原因は?」
俺の言葉に、少し嫌そうに顔を歪めるオアジュ魔神。
原因は分かっているみたいだな。
それなら、それを排除するか解決すればいいと思うのだけど。
「魔界の始まりは、神達に利用された者達だ」
そうだな。
「力を奪われ、不要な力を押し付けられて捨てられた存在」
アイオン神から、聞いたから知っている。
「神の中でも穏やかな者達が多いんだ。まぁ、だから利用されたんだろうけど」
強烈な性格な者達が神として残り、穏やかな者達が魔神となった。
神と魔神、印象から真逆だな。
「ただ、魔神達が命を繋いでいけば色々な性格の魔族や魔神が生まれる」
それは当然だな。
「新しい命が生まれる度に、神に対して怒りを抱える者達が増えて行った」
完全に神達の自業自得。
「だがこれまでは、魔界王がその不満を抑え込んでいた。どうしても怒りが抑えられない者達からは、力を奪い落ち着かせていた」
かなり強い魔神の王がいるんだな。
「力を奪ったら、怒りが落ち着くのか?」
「魔神力は負の感情を増幅させる。力を奪えば、落ち着くんだ」
あぁ、そう言う事か。
「魔界王が、魔族や魔神達の不満をずっと抑え込んでくれていたんだが、魔界王も年を取る。とうとう、力の衰えが見え始めてしまったんだ」
つまり、次の魔界王の座を狙った争いが始まったのか。
「次の魔界王の話が出たあたりから、今の状態をキープすればいいと思っている穏健派と、神への嫌悪感を隠さない強硬派に分かれてしまって」
なるほどね。
「お互いを力で威圧するものだから、魔界に流れる魔神力に影響が出て不安定に揺れているんだ。そのせいで魔神力が溜まりにくくなって、魔珠宝が生まれなくなった」
「その『まじゅほう』という物が無いと、絶対に対になれないのか?」
「魔族も魔神も他者の力とは、なぜか相容れないんだ。長く一緒にいると、お互いの力が反発しだして傷つけあってしまう。それを防ぐために必要なのが魔珠宝なんだ」
魔界に住む者は、誰かを好きになるのも大変なんだな。
気持ちだけでは解決しない力の問題か。
「魔珠宝に、自分の力を込めて相手に渡すんだ。そして相手からも力の込められた魔珠宝を貰う。お互いにそれを体内に収める事で、長く一緒にいても力で傷つけあわないようにするんだ」
「なんだか、大変だな」
「そうか? それが当たり前だから特に何かを思う事は無かった。それに、好きな相手から魔珠宝を貰えた時の喜びは最高だぞ」
オアジュ魔神がマカーシャを見ると、彼女が嬉しそうに笑みを浮かべる。
この2人の関係は良好みたいだな。
かなり長い間いるような話をしていたが、凄いな。
「だから、魔珠宝が手に入らない状態が続くのはかなり危険なんだ。それでなくても魔神力の影響で、
穏健派と強硬派はかなりギリギリの状態だ。何かのきっかけで全面戦争になってもおかしくない。それが無くても、魔珠宝を手に入れたい者達が、原因となっている者達を排除するために動き出すかもしれない」
あ~、かなりやばい状況か。
穏健派と強硬派の問題は手に負えないな。
出来るとしたら、「まじゅほう」を作れば少しは落ち着くのか?
「まじゅほう」は魔神力が集まったら自然と生まれるんだよな。
「『まじゅほう』は、どんな物なんだ?」
「これだ」
「オアジュ!」
オアジュ魔神が、胸の辺りから直径3㎝ほどの透明の球を取り出すと、マカーシャが焦った声を出した。
「主だから大丈夫だ」
待て。
マカーシャの反応から、「まじゅほう」はそんな簡単に見せていい物ではないという事だよな。
「大切な物なんだから、そんな簡単に出すなよ。でも、ありがとう」
オアジュ魔神にお礼を言って、彼の中から出て来た「まじゅほう」を見る。
「魔力の魔に、丸く小さい物を意味する 珠(たま) に、 宝(たから) と書くのか?」
何となく頭に浮かんだ言葉を口にする。
「あぁ、そう書くな」
やった、正解。
目の前にある魔珠宝を見ていたら、自然と思い浮かんだんだよな。
「なぁ、この魔珠宝は魔神力が集まったら自然と生まれるんだよな? 他に必要な物があったりするのか?」
「いや、魔神力だけだと聞いている。他の物は必要ない」
「そうか」
問題は、魔界という場所が必要かどうかだな。
もし、魔神力だけでいいならこの世界でも魔珠宝を生み出す事は出来るんじゃないか?
「楽しそうだな」
新しい何かを生み出すのは、ワクワクする。
「主、すぐに場所を確保いたします。そうですね。この近くに洞窟がありましたので、そこを使用しましょう」
リーダーを見ると、力強く頷いた。
さすがリーダー。
俺が何をしたいのか、言わなくても分かってくれたみたいだ。
「そうだな。そこで試してみるか」
「はい」
魔珠宝を作れたら楽しそうなのもあるけど、不安要素を減らしたいのもある。
魔界は隣にある。
隣の世界が不安定になったら、この世界にも影響があるかもしれない。
この世界の不安要素がようやく無くなったんだ。
穏やかに過ごしたいじゃないか。