作品タイトル不明
02.オアジュ魔神の妻と?
「「主様に会う機会を頂けた事に、感謝をいたします。今日から主様に忠誠を誓い服従――」」
いきなり、2人の女性が俺に向かって跪いた事にビックリした。
そして驚いている間に、話し出した内容に慌てた。
「ストップ!」
忠誠って何?
服従って何?
そんなものは、一切求めていないんだけど?
女性2人の傍で、心配そうにしているオアジュ魔神に視線を向ける。
「忠誠とか服従とか、どういう事だ?」
まさか、移住する条件に俺への忠誠とか服従が入っているのか?
いや、まさかだよな?
「えっと、魔神は強い存在に忠誠を誓うのが当然となっているので、そのせいで今の様な挨拶になったんだと思う。この世界の説明は簡単にしたんだけど、忠誠や服従が必要ないという事は言い忘れていた。悪い。マカーシャ、カーシャ。ここではその挨拶は必要としないんだ。服従契約をしなくても、殺されたりしないから」
服従しないと殺されるのか?
魔界、怖い。
絶対に行きたくない所だな。
「……そうなの? でも、どうしたら」
女性2人が戸惑った表情で、オアジュ魔神と俺を見る。
忠誠と服従が当たり前の魔界しか知らない2人。
いきなり、今まで当たり前だと思っていた事が通用しない世界に来たら、戸惑うだろうな。
まぁ、ゆっくり慣れてもらうしかないか。
「初めまして、この世界を守る者で翔と言います。これから宜しく。この世界の常識は魔界とは異なるから、オアジュ魔神に教えてもらって欲しい。そしてゆっくり、この世界に慣れてくれたら嬉しい」
「あっ、よろしくお願いします? えっと、オアジュの妻でマカーシャと言います」
真っ白な長い髪を持つほっそりとした綺麗な女性が、オアジュ魔神の妻。
もう1人の女性の話は一切聞いていなかったけど、誰なんだろう?
マカーシャさんと、どことなく似ているような気がする。
「私は、マカーシャの娘でカーシャと言います。よろしくお願いいたします」
マカーシャさんの娘さんだから似ているのか。
髪色は薄緑で肩までの長さ。
2人とも目の色は、濃い灰色でちょっと吊り目かな?
「オアジュ魔神の子供の1人か」
子供は確か、5人だったよな。
残りの4人は、別の日に来るのかな?
「主、その者は私の子ではない」
ん?
あれ?
でも、マカーシャの娘って言ったよな?
「あの、この子は、前の前の……前ぐらい? 多分それぐらい前の夫の子です」
前の前の前。
まぁ、長生きだからな。
「そうなんだ。彼女もこの世界に移住予定だったかな?」
俺が、聞いた事を忘れている可能性がある。
「すまない。その……特殊な性的嗜好を持つ魔神にカーシャが目を付けられてしまって。魔界にいると力の関係で拒否が出来ないんだ。昨日、その魔神から『すぐに渡せ』と連絡が来たので、急いでこの世界に逃がした。許可を取らず、すまない」
やばい魔神から逃げてきたという事か。
それなら、急な事になってもしょうがない。
「分かった。彼女の事は問題無いよ。ここは安全だから、安心してくれ」
俺の言葉にホッとする3人。
特にカーシャさんは、本当に安心したのか泣きそうになっている。
追い出されないか、凄く不安だったんだろうな。
「ゴーレム達が、俺達のために家を建ててくれたと聞いたんだが、彼女も一緒で問題ないだろうか?」
「あぁ、問題ない」
だって、一つ目達が建てた彼らの家。
4階建ての豪邸だから。
ちょっとやそっと人数が増えたぐらいでは、全く問題にならない。
「家はあそこだ」
オアジュ魔神が振り返って首を傾げる。
まぁ、そうなるよな。
彼等には見えない様に、「カモフラージュ」の魔法を掛けてあるから。
「カモフラージュ解除」
ふわり。
カモフラージュの魔法を解除すると、家が建っている方から柔らかい風が流れた。
そして、彼等にも家が見えるようになると、3人とも唖然とした。
まぁ、そうなるよな。
本当に大きな家だから。
おそらく50人ぐらい増えても対応できるだろうな。
「主。こんな凄い家を、ありがとう」
オアジュ魔神が、俺に向かって頭を下げる。
「どういたしまして。家の説明は、一つ目のこの子、ウッズがするから」
「宜しくです~。案内するから、こっちです~」
少し戸惑ったオアジュ魔神達だが、ウッズの案内で家に向かった。
家の説明に少し時間が掛るだろうから、それまでは周りを少し見て回るか。
「リーダー。周辺を見てくるな」
「一緒に行きます」
「頼むな」
断っても落ち込まれるだけだからな。
それに一緒に来てくれた方が、いろいろ聞けるし。
オアジュ魔神達の家の前に広がる、畑。
たった2日で、見事に畝が並んでいる。
あとは、オアジュ魔神達と何を育てるか相談して決めるそうだ。
相談か。
俺の時は、相談なんて無かったな。
畑に植えてから、ようやく説明……も、無かったな。
収穫する時にも……。
あっ、食べる時に「新しい野菜です」と説明があったな。
あれが説明とするならだけど。
「どうかされましたか?」
「いや、なんでもないよ」
森に入ると、見慣れた葉っぱを付ける木を見つけた。
俺の家がある森にもたくさんある大木だ。
魔力が詰まっているらしく、切り倒す事など普通は出来ないらしい。
俺は普通に切っているけどな。
「この木は、まだ小さいな」
巨大に成長した木しか知らないから、ちょっと不思議だ。
今は、俺の身長と同じぐらいか?
「この高さなのに、幹は既に太いんだな」
大木になる前は、かなりずんぐりむっくりだったんだな。
「その木は、急に成長します」
「そうなのか?」
「はい。ある程度の高さまで細い幹で成長すると、数か月かけて幹が太くなり、そして一気に上に伸びていきます」
ずいぶん不思議な成長をするんだな。
「あっ、花だ」
少し遠くに見える青い花。
カラーの形に似ているな。
まぁ、俺の知っているカラーと比べるとかなり大きいが。
というか、あの大きさなら俺が入れそうだな。
初めて見るから、こっちの森だけにいる花か?
「そちらの花は、襲って来るので気を付けて下さい」
ん?
「襲う?」
「はい。魔力を持っている生き物を襲ってきます。動きが俊敏なので、最初は驚きました」
魔力に反応しているのか。
それより、俊敏な動きが気になるな。
どうやって動くんだ?
あっ、花がこっちを向いた。
「あれは、俺の魔力に反応しているのか?」
「おそらくそうだと思います。ただ、あの花は囮なので注意するのは上です! あぁ、やはり上から来ましたね」
えっ、上?
リーダーの言葉に急いで見上げる。
そこには、6つの巨大カラーの花が迫って来ているところだった。
「これは――」
「主、大丈夫です。主に手を出さないように、教えておきましたから」
……ん?
教えて?
あっ、止まった。
うわ~凄い勢いで、木々を登って……これは逃げて行った感じかな。
いったい、どうやって教えたんだ?
それに、あの花はどうやって動いているんだ?
不思議に思いながら、カラーの花が去った後を見る。
あっ、植物の蔓が木に絡みついている。
「さっきの花は蔓植物なのか?」
「はい。その蔓が、器用に動いて相手の不意打ちを狙って来るんです」
なるほど。
……いまいち、蔓がどう動くのか想像が出来ないんだけど。
それに、教えた方法が……あの花の逃げ方から凄く気になるな。