作品タイトル不明
114.この世界は?
「確かに、勇者でもありますね」
リーダーの言葉に首を傾げる。
勇者でも……でも?
他にも何かが俺に当てはまるのか?
今までは、神力もどきのせいで人にも、神にも、魔神にもなれなかったんだけど。
「主、この世界の事についてなのですが、話してもいいですか? 疲れているようでしたら、別の日にしますが」
この世界の事?
それは、なるべく早く聞いておいた方が良いだろうな。
勇者以外の当てはまる者が気になるけど、今は世界の方が重要。
まずは現状をしっかり把握しないと。
「大丈夫だから、話してくれ」
「分かりました。主の命を維持するために、子供達や仲間達だけでなく、呪いの者達からもかなりの力を提供してもらいました」
そうなんだ。
俺は、皆に助けられたんだな。
「呪いの力が一番多く提供されたため、世界のバランスが崩れ、呪いの力が世界に溢れました」
マジか!
ものすごく大変な事になってる。
「まぁ、主の思いが呪いの者達を変えていたので、溢れた呪いの力が世界に悪影響を及ぼす事は全くありませんでしたが」
俺の思い?
それが何かは分からないけど、大変な事にならなくて良かった。
「今までは、主の神力に似た力が多く充満していたため神達の世界に属していました。ですが、呪いが溢れた以上は神達の世界に属していると、いろいろと厄介な事になる可能性があると思い、属する世界を変更しました。今は呪いの世界に属しています」
呪いの世界か。
そんな世界があったんだな。
イメージ的には……墓場の下みたいな真っ暗な闇に包まれた世界を想像するけど、大丈夫かな?
リーダーの様子から、心配はなさそうだけど。
「呪いの世界に属した影響は?」
「ありません」
無いんだ。
という事は、俺の想像したような世界ではないという事か。
それにしても、いろいろと厄介な事か。
オアジュ魔神から聞いた神達の話や、アイオン神から聞いた神達の話を考えると。
「間違いなく、神達には敵対視されるだろうな」
最悪、この世界を消そうと動くだろう。
「はい。そうなる確率が高いと思いました」
リーダーは凄いな。
神達の事までしっかり考えている。
「呪いの世界ですが、アイオン神とフィオ神、オアジュ魔神に認めてもらいました」
んっ?
認めてもらう?
「無事に世界は安定し、元々いた場所から移動し、あと少しでこの世界も問題なく動き出します」
えっと、認めてもらって安定?
それは……呪いの世界が安心して住める世界になったという認識でいいのかな?
ただ「動き出す」の意味は、なんだろう?
……分からないな。
「動き出すとは?」
「元々いた魂に、呪いの力が慣れるまで時が止まっているんです。その間は魂も眠った状態です」
時が止まるなんて、ファンタジーみたいだな。
いや、この世界には魔法があるんだ。
いまさら、ファンタジーを感じるのも変だよな。
でも、時が止まるんだよな?
想像は出来るけど、現実味がない。
俺もクウヒもリーダーも、動いているからだろうな。
「といっても、元々この世界の魂は色々な力に晒されてきたため順応性が高いそうです。そのため、数日で動きだすとフィオ神が予想していました」
いろいろな力に晒された原因は、間違いなく俺だな。
まぁ、そのお陰で数日だけで順応できるみたいだし。
「あっ、順応できない者が出たらどうするんだ?」
「『そんな者は現れないだろう』と、アイオン神が言っていました。なんでもこの世界の魂は、異常なほど受け入れ態勢が良いとか。オアジュ魔神には『なんでも、来い』の精神だなと言われました」
「何でも来い」か。
はははっ。
まぁ、問題がないならそれでもいいか。
「終わりよければ全てよし」とも言うし。
うん。
そういう事にしておこう。
「この世界の為にありがとう。リーダーがいてくれて本当に良かったよ」
俺に意見を求めていたら、考え過ぎてこんなに早く事は進まなかっただろう。
俺が眠っている間に終わっていたのは、良かったかもしれない。
「いえ……私がいて……良かった、なんて!」
ん?
声が小さくて聞きづらいな。
リーダーをみると、両手で顔を押さえている。
もしかして、照れているのか?
「そういえば、俺はどれくらい眠っていたんだ?」
さっきのリーダーの様子から、少し長い時を眠りについていたような気がするけど。
「5日です」
えっ?
……想像以上に短かった。
というか、たった5日なのにリーダーのあの状態。
まぁ、消滅寸前まで行ったから、あれもありなのかもしれないが……でもやっぱりちょっと大げさだよな。
あっ、クウヒが隠れて笑っている。
やはり、大げさだと思っていたんだな。
「主」
クウヒが俺の前に数枚の紙を差し出した。
受け取って、中を確かめる。
「フィオ神からの手紙?」
手紙には、第1位の神が起こした行動のお詫びと、それを止める事が出来なかった事のお詫びが丁寧に書かれてあった。
また、呪いの世界が安定した事で、全ての世界に変化が起きたそうだ。
なんでも、神と魔神の世界にあった不安定さが消えたらしい。
「不安定さが消えたのなら、どの世界にとっても良い状態になったという事でいいよな」
神達が、その結果を認めるかは知らないが。
そういえば、コアや親玉さん。
子供達はどうしたんだろう?
それに今気付いたけど、家の中が異様に静かだ。
時が止まった影響でも、受けているのか?
でも、クウヒを見る限り大丈夫そうだけど。
「皆はどうしたんだ?」
「連絡を飛ばしたので、急いで帰ってきていると思います」
リーダーの言葉と態度に首を傾げる。
どうして、空に視線を向けたんだろう?
それに、連絡を飛ばした?
まるで空に向かって連絡を……嫌な予感がする。
まさか、……この世界から飛び出しているとか、無いよな?
いや、まさかな。
「ただ少し遠い世界まで行っている者もいるので、数日かかる可能性もあります」
ははっ、遠い世界かぁ。
やっぱり嫌な予感は嬉しくないけど当たるよなぁ。
だって、どんなに遠い場所にいたとしても、この世界にいるなら1日もあれば帰って来られる。
以前は、森から出るのにも数日は必要だった。
でも今は、いろいろな魔法を重ね掛けして数時間で森から出られるようになっている。
子供達も同じだ。
本気になれば、数時間で森を走り抜けられる。
それが、数日かかる?
「いったい、どこに行っているんだ?」
「第1位の神に協力しておきながら、バレそうになったら見捨てて逃げ出した神達のところです」
やっぱり、この世界から出ていた!
「えっと、どうしてそんな神達の下へ?」
「主。悪い事をしたら謝るのは当たり前です。それをせずに逃げるなど。ふふふふっ、許すわけにはいきません!」
うわっ。
リーダーから、なんか黒い煙が出ているんだけど!
これって呪いの力か?
「主。しっかりと主の前で謝罪をさせますので、暫くお待ちくださいね」
リーダーの迫力に、無意識に頷いてしまう。
クウヒにちょっとヘルプを……あっ、クウヒもリーダーに賛成みたいだ。
「神達と敵対するのは、危険だと思うぞ」
神は多くいる。
数で攻められると厄介だ。
「問題ありません」
リーダーの自信に満ちた声に、苦笑が浮かぶ。
「ははっ。そうか」
まぁ仲間達が、馬鹿な事をするとは思えないし、任せても大丈夫だろう。
……たぶん。
俺は、最悪な事態にならないようにしっかりと見ておこう。
窓から外を見る。
お昼なのか、畑で働いている子蜘蛛達や子アリ達の様子が良く見えた。
そういえば、呪いの世界に来たわりには明るいな。
まるで、今までと何も変わりが無いみたいだ。
「不思議だな」
呪いの世界か。
これから俺が、お世話になる世界。
「まぁ、どこにいたとしてもそんなに変わらないか」
ゆっくり過ごせれば、それでいい。
……過ごせるよな?
ちらっと浮かんだ仲間や子供達の姿に、ちょっと不安を感じたけど。
きっと大丈夫……きっと…………たぶん。