作品タイトル不明
113.数年越しの?
体が重い?
ん?
違うな、動こうとすると痛いのか?
……筋肉痛か?
この世界に来てから、筋肉痛にはなった事が無かったんだけど。
あれ?
この世界……えっと、何か重要な事を忘れているような気がするな。
そもそも、なんで筋肉痛になんてなっているんだ?
昨日は、いつものように墓場で呪いの……呪い?
「あっ! 痛っ」
痛い、全身が痛い!
ちょっと動いただけなのに、こんなに痛みに襲われるなんて。
ん?
痛み?
……生きているのか?
うん、生きているみたいだな。
あの時、体の奥にあった力。
たぶん、魂の力を使ったと思う。
そうだ。
間違いなく使った。
だから、死んだというか消滅したはずなんだけど……ここはどこだろう?
「俺の部屋だな」
見おぼえがある部屋の作りに天井には、孫蜘蛛達が……今日はまた沢山いるな。
それに孫アリ達までいるのか?
なんだか、慌ただしく動き回っているけど、どうしたんだろう。
あぁ、落ちる、落ちる。
良かった糸を持つ孫蜘蛛だったか。
それにしても……天井の梁にいるのはもう慣れたけど、今日は多過ぎないか?
なんで梁の上でぎゅうぎゅうに押し合っているんだ?
あぁ、また落ちそうになっている。
バター―ーン!
「主~! おぎだのでずね~」
…………えっ?
なんて言ったんだ、今。
起きた?
それに一つ目のリーダーのこの様子。
もしかして、かなり眠っていたのか?
あ~、あの力を使ったからか。
誰かが俺を助けて、そして眠っていたという事か。
なるほど。
「良く助かったな、俺」
「本当です! なぜ、あんな無茶な事をしたのですか? どれだけ心配したと思うのですか? 私に言っていただければ、何をしてでも……いえ、あれには勝てなかったでしょう。ですが、だからと言って!」
リーダーを見ていると、もの凄く悪い事をした気分になるな。
あの時は、あの方法以外に皆を守る方法は無かったと思う。
だから後悔はしていないけど……居心地が悪い。
「ごめんな。皆は無事か?」
そうだ。
皆はどうしたんだろう?
それに襲ってきた神はどうなったんだ?
「全員、無事ですよ。呪いの者達は、少し消えた者もいますが」
声に視線を向けて、固まった。
誰だ?
見た事はある。
うん。
クウヒの面影がある。
だが、背が高くなっているし子供っぽさが抜けている。
もう大人だな。
クウヒの親? 兄?
「俺はクウヒです。えっと、いつの間にか成長していて」
まじか!
驚きで、起き上がった。
「くっ」
その瞬間、全身に走る痛み。
忘れてた!
「主!」
クウヒが慌てて俺の寝ているベッドの傍に来る。
「大丈夫? 痛みが? えっと、どうしよう。あっ、ヒール」
クウヒの慌てた様子に、ちょっとおかしくなる。
見た目は落ち着いた大人に成長したのに、慌てた様子は以前のクウヒみたいだ。
「大丈夫だ。ありがとう」
クウヒに視線を向けると、ホッとした表情を見せた。
と言うか、痛みを感じたら自分でヒールを掛ければいいだけだよな。
「クウヒ、ヒールが上手くなったな」
痛みが引いた体を動かす。
少し引きつるような感覚が残っているが、痛みは消えている。
「そうですか? 頑張ったかいがありました」
凄いな、ちゃんと成長している。
「主、どうぞ」
リーダーが持って来てくれた、果実水を飲む。
俺が一番好きな、甘酸っぱいミカンのような味の果実水。
好きだと言った事は無いけど、さすがリーダー。
俺の事をよくわかっている。
「美味しいよ。ありがとう」
ん~、なんだろう。
体に少し違和感があるな。
さっきまでは痛みで気付かなかったけど、なんて言うか……体の奥に何かあるような気がする?
なんだろう?
核に変化でも起きたのか?
あれ?
そういえば、核は龍達に渡したよな。
俺の中の核は5個。
龍は全部で5体。
……核は生きるために必要な物だから……。
「新しい核か?」
胸に手を当てると、掌から感じる違和感。
間違いなく、ここに何かある。
目を閉じて、その違和感を探る。
とても、力強くて……優しい力。
あれ?
なぜ、呪いの気配を感じるんだろう?
……でも、この呪い。
嫌な感じではなくて、ただ深い……深い闇?
ん~、温かさも感じるな。
温かい闇?
……まぁ、良いか。
特に、問題はなさそうだし。
『ありがとう』
俺の核になってくれて。
「と言うか、そもそもこれは何なんだ?」
少し触れただけでも分かった。
今までの核とは比較にならないほど、強い力を秘めている。
「主? もしかして主の新しい核の事ですか? それは、あの屑神が多くの魂を傷つけて作りあげた最強勇者の素です。あまりに多くの魂を傷つけて作り上げたため、勇者を作りあげたと同時に同等の力を持つ呪いが誕生したそうです。そして勇者が屑神を拒否したので、生まれたばかりの呪いが勇者を隠し守って来たそうです。あっ、ちなみにその時の肉体は呪いに負けて消滅したとの事でした」
とりあえず、屑神とは誰の事だろう?
もしかしてこの世界を襲ってきたあの力の持ち主か?
今まで感じた事が無いほど力強い神力だったよな。
ただ、途中から呪いの力が混ざって来たのが不思議だったけど。
「そうだ。屑神は、呪いの者達にその力の源を奪われ、フィオ神に捕まりました。アイオン神は、屑神に協力してきた神達の洗い出しをしています。ロープがそれに協力をしているので、暫くは声を掛けても答えられないと思います」
情報が増えた。
とりあえず、
「屑神とは、襲ってきた神の事でいいか?」
「はい。第1位の神だったそうです。今は、力のほとんどを奪われ、新神より弱くなったと聞いていますので、もうこの世界が襲われる事はありません」
それは、良かった。
あんな事、二度と経験したくない。
「分かった。それを聞いて安心した」
あとは……核だ。
最強勇者の素?
最強と言う事は勇者としてかなり強いのか?
あっ、またギフトが贈られたなんて事は、無いだろうな。
たしかあれは、勇者召喚をした時に押し付けられる物だった。
今回は、召喚ではないから大丈夫だとは思うが。
確認はしておくか。
「勇者召喚とは違うが、ギフトの扱いはどうなっているんだ?」
ギフトにはいろいろ助けられたけど、神様至上主義みたいな洗脳があったはずだ。
あれは断固拒否したい。
今のところ、「神様、凄い」と言う考えは全く起きないから、大丈夫だと思うけど。
「それは、大丈夫です。勇者召喚とは違うのでギフトはありません。そもそも最強勇者は、通常の勇者とは強さのレベルが違い過ぎるので。ギフトはなんの役にも立たないと思います」
そんなに強いのか?
「あのさ、俺の核になった勇者の強さなんだけど。襲ってきた神より強いのか?」
「おそらく強いだろうとフィオ神が言っていました。主の核になった勇者は、魔神を殺すために作られたので元々かなり強いのですが、呪いの中でずっとその力を増やしてきたので、今では簡単に神を殺す事も可能だろうと」
おぉ、神も魔神も殺せるんだ。
というか、その最強の力を秘めている物が俺の核になっているんだよな。
実感はないけどちょっと怖いな、それに俺が持っていていいのかな?
それにしても勇者か。
「あっ、俺は元々勇者召喚の失敗でこの世界に来たんだよ。という事は、数年越しにあの勇者召喚は成功したと言えるのかな?」
あの時召喚した者が勇者になったんだから、成功だよな。
俺は、巻き込まれたんだけど。