軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

112.変わっても。

―アイオン神視点―

どれだけ力を込めて神力をぶつけても、第1位の神の神力に弾き飛ばされてしまう。

悔しい。

こんなに力の差があるなんて!

「あっ!」

目の前で、翔の世界を守っていた最後の結界が弾け飛んだ。

「クソッ」

こうなったら、私の核でこの世界を守る。

決して手を出してはならない力に、意識を向ける。

さすがに、これを使えば死ぬだろうな。

だからなのか、本能が反発しているのが分かる。

でも、もうこれしか方法が無い!

「アイオン神!」

腕を掴まれ、意識を核から逸らされる。

フィオ神を睨み付ける。

「邪魔をするな!」

「あれを」

フィオ神の焦った声に、世界に視線を向ける。

そこには、不思議な力で守られている世界が見えた。

「あの力は何だ?」

フィオ神の言葉に応える事なく、ただその力を見つめる。

今まで感じた事が無いほど、優しく力強い力。

その力が世界を包み込み、第1位の神の攻撃を完全に防いでいた。

「くっそぅ。どうして? 結界は壊れたのに、あれは死んだはずなのに!」

第1位の神が焦っているのが分かる。

でもそれよりも、叫んだ言葉が気になる。

「死んだ」と言ったのか?

「まさか、あの力を防ぐとは。だが、あれは誰の力だ?」

誰の?

誰って、あの力からは翔を感じる。

「翔だ」

「えっ? 彼の力なのか?」

どうしてフィオ神は、そんなに不思議そうな表情をしているんだ?

あの優しい力からは翔を感じるじゃないか。

「アイオン神? どうした?」

「えっ?」

フィオ神の戸惑った表情に首を傾げる。

あれ?

手に何か落ちた。

右手に何かが触れたような気がして、右手を持ち上げる。

濡れている。

「泣いているが、大丈夫か?」

大丈夫?

大丈夫じゃない。

「あの力は。あれは翔の……」

そうだ。

今、私自身が自分の核に少し触れたから分かった。

あれは翔の命の力。

核の奥。

魂が持つ、最後の力だ。

私は、また守れなかったのか?

どうしていつも、間に合わないんだ。

「ひっ、やめろ! 私に触れるな! くるなぁ」

「えっ?」

第1位の神の叫び声に視線を向けると、黒い大きな影に飲み込まれるところだった。

あれは、呪いだ。

「もっと早く飲み込まれてしまえば、翔は生きていたのに」

『主は、生きているよ』

「「えっ?」」

第1位の神が影に飲み込まれ、ここにはフィオ神と私しかいないはずなのに声が聞こえた。

周りを見回すが、誰もいない。

こんな事が出来るのは、ロープだな。

「ロープだよな。どこにいるんだ?」

『本体から声だけを届けている状態だよ。力を使い過ぎて、姿を作れないんだ。それと主の事だけど、大丈夫だよ。ちゃんと生きているよ』

生きている。

「良かった……本当に、良かった」

でも、どうやったんだろう?

世界を守っている力は、今も目の前にある。

魂の力を使った以上は、既に……。

いや、ロープが嘘を吐くはずがない。

だから、大丈夫。

翔は生きている。

「翔と話がしたいんだが」

『今は無理だ。主は、全ての力を使ってこの世界を守ろうとしたんだ。仲間や子供達だけじゃなく、人も獣人もエルフも。そして呪いに落ちた者達も』

翔らしいな。

ん? 呪いに落ちた者達?

『今、世界を包んでいるのは主の魂が持っていた力だ』

やはりあの力は魂の。

でもそうなら、翔はやはり死んでいるのでは?

『世界を力が包み込んだ時点で、主は死んでいてもおかしくない。でも、子供達がそれをぎりぎり阻止した。あの子達の力は凄いぞ。本当にぎりぎりだったけど、主の死を防いだんだ。そして仲間達とゴーレム達が協力して、その命を繋いだ。最後にリーダーが、呪いに落ちた者達と意識を繋げ、子供達が主に力をくれるようにお願いした。呪いに落ちた者達も、自分達まで守ろうとした主に助かって欲しいと思ったみたい。呪いの弱い者達は消えると分かっていながら、協力してくれた』

そんな事があったのか。

『しかも第1位の神が魔神を殺すために作りだした勇者が、ずっと呪いの中で眠り続けていたのに主の為に起きてくれたんだ。今は主の新しい核になったよ』

今、凄い事をさらっと話されたような気がする。

第1位の神が作った勇者って、完成した数日後に消えたはずだよな。

呪いの中で眠っていたんだ。

というか、それが翔の新しい核?

『だから主はもう大丈夫。いろいろな力が体の中で混ざったお陰で慣れるまでに時間が掛るみたいだけど、死ぬ事は無いから』

色々重要な事を言われたけど、もういいや。

翔が生きている。

その結果だけで。

『フィオ神、アイオン神。お願いがある。ある物の存在を認めて欲しい』

ある物を認める?

「それは存在証明を求めているのか?」

『うん。そうだよ』

存在証明。

「そのものが確かに存在すると証明すること」だったな。

でも、一体何の?

『2柱が証明したら、十分だと思うんだ』

つまり神として、その物の存在を認めろと言う事か。

「分かった」

「フィオ神!」

「ははっ。アイオン神、慌て過ぎだ」

笑っているフィオ神を、ギッと睨む。

そんな事を言っている場合ではないだろう。

「物が何か分からないのに、了解するなんて」

「別にどんな物でもいいと思ったからだ」

フィオ神は、翔に関わってから本当に変わったよな。

前までは、無気力と言うかただそこにいるだけだったのに。

「それで、我々は何を認めればいいのだ?」

『呪いの世界』

えっ?

今、なんて?

質問したフィオ神も、かなり驚いている様子だ。

『主の世界は、呪いの力も混ざってしまったんだ。まぁ、協力を求めた結果なんだけど。で、神の世界にいたら、神達から今回のような攻撃を受ける可能性がある。だから、呪いの世界に移動しようと思って』

確かに、今回のような事が起きないとは言えないな。

神と言う存在が、いかに傲慢なのか嫌と言うほど知ったから。

『ただ、呪いの世界は今まで誰にも認められてこなかったから、不安定なんだ。主の安心と安定のためにも、呪いの世界を安定させる必要があるんだよね』

ふふっ、こんな時でも翔の為なんだな。

「呪いの世界に行っても、翔やその世界に住む者達は問題ないのか?」

フィオ神が心配そうにロープに聞く。

『大丈夫。呪い自体が主の意思を継いでくれたから。凄く居心地が良くなったよ。まぁ、呪いに直接触れたら呪われるけど』

呪いが翔の意志を継ぐって、またすごい事を成し遂げたな。

だが、呪いの世界を認めていいのだろうか?

……まぁ、翔の為になるならいいか。

後々問題になるだろうけど。

「認めるよ」

ん?

「オアジュ魔神」

不意に現れたオアジュ魔神に、唖然としてしまう。

この空間は、神の神力が充満している。

魔神には苦しいはずだが。

「凄いな、主の力は」

オアジュ魔神の言葉に首を傾げる。

「主の力は魔神力でもなく、神力でもない。でも、どちらにも対応できる力なんだ。で、俺は主の世界に長時間いたから、体内に主の力が入ったみたいだ。そのお陰で、神力が充満している神の世界にいても苦しくない。不思議だよな」

「彼の力は本当に未知数だな。ロープ、俺もさっき言ったように認める。アイオン神はどうする?」

「もちろん、認める」

2柱ではなく3柱が認めるんだ。

しかもそのうちの1柱は第3位の神だ。

なので、呪いの世界はちゃんと安定するはずだ。

『ありがとう。でも、そんなに簡単に決めていいの? 言っておいてなんだけど、きっと色々と問題になるよ?』

ロープの心配そうな声に、笑みが浮かぶ。

翔の周りの者達は、優しい者が多いな。

「大丈夫とは言えないが、なんとかなるだろう。たぶん」

フィオ神が肩を竦めると、オアジュ魔神が小さく笑った。

「なんともならなかったら、主の世界に行ったらいいんじゃないか?」

翔の世界に?

神達の世界を捨てて?

……それもありか?

「アイオン神。それは最後の手段だからな」

フィオ神の言葉に、視線を逸らす。

なぜ、バレた?

「んっ? 最後の手段?」

フィオ神も、最後の手段として翔の世界で生きる事を考えているのか?

「……神の世界で生きるより、楽しそうだよな」

フィオ神の言葉にオアジュ魔神が噴き出す。

私もちょっと笑ってしまう。

でも、本当にそう思う。

『あっ、本当に認めてくれたんだね。ほら』

あぁ、世界が動いている。

確か魔神の世界が出来た時も、その鼓動を感じたと言われていたな。

まさか、私が世界の誕生に関わる事になるとは。

「はぁ、皆に会えなくなるのか」

寂しくなるな。

『どうして、会えなくなるの? 今まで通り会いたくなれば、来たらいいのに』

「「「呪いの世界に入れるのか?」」」

凄い、全員の声が揃った。

『もちろんだよ。世界を守っていた結界の条件が「呪いの世界」に入れる条件になったから。敵意さえなければ、誰でも入れるよ。特にアイオン神達は出入り自由だよ。もちろん、主や仲間達に悪意を持ったら無理だろうけど』

そうなんだ。

『場所が変わるだけで、何も変わらないよ』