軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

110.のろう?まもる?

―闇の中―

んっ?

なんだろう、温かいのが消えていく。

だめ。

だめ、だめ。

それが消えたら悲しい。

誰だろう?

誰が奪っていくの?

攻撃されている。

えっ?

何に?

誰が?

どうして?

「この感じ……むかし……そう、むかし……あぁ、これは嫌い!」

知ってる。

思い出した。

この感覚は。

にくい、にくい、にくい。

こわそう、すべてこわしてしまおう。

もういやだ。

くるしい、きらい。

「あ゛ぁぁぁ、こわしてしまえば!」

こんなせかいは、いらな――。

『この世界の人も獣人もエルフも。子供達や天使達。フェンリル達やダイアウルフ達にガルム達』

あっ、この声。

それに、温かいのが流れてきた。

これだいすき。

『シュリの家族や親玉さんの家族。核の周辺にいる、この世界の被害者達』

もしかして、俺達? 私達?

『皆を守ると決めた。俺の力を全部、使っていいから! 空っぽになってもいいから!』

えっ?

僕たちも?

「守れ!」

…………。

…………。

…………。

「守ってくれるの?」

あっ、消えていく。

だめだ。

駄目だよ。

消えちゃう!

どうしよう?

「きえちゃだめ!」

『力を!』

だれ?

誰かの声がする。

そんな事より、あの温かいのが消えちゃう!

『力を分けてくれ! 俺達だけでは足りない! 主に力を!』

あるじ。

あの、温かいのをくれる人。

そうあの人の事だ。

『力を!』

ちから。

ちから?

でも、ここのちからは。

『主を守る力を!』

「守る?」

僕達の力で、私達の力で守れるなら。

まもろう。

今度は俺達がまもりたい。

きえちゃってもいい!

あの人を守りたい!

力をあげる!

もっともっとあげる!

あっ、弱い子が消えちゃった。

でも、嬉しそうだったね。

うん。

こんな、消え方もいいね。

あっ!

えっ?

あれ?

あの子が動いた?

ずっとずっと、起きる事なく眠り続けていたのに?

起きたの?

『あれ? これは何?』

使って!

その子をつかって!

だいじょうぶ。

その子を使えば、もう大丈夫。

『ははっ、ありがとう』

ふふっ。

へへっ。

ありがとう。

でも、だいじょうぶかな?

あの子には、ここのちからがぎゅって。

ぎゅってつまっているね。

そうだった。

俺達と僕達といっしょになる?

「それは、うれしい」

ん?

まだ、攻撃してくる。

止めよう。

主が起きる時にあれはいらない。

どうやって止める?

ん~。

あれ?

みんなを感じる。

ん?

そういえば、そうだね。

ん?

何か叫んでる。

なんて言っているんだろう?

聞こえるように出来るかな?

『くっそぅ。どうして? 結界は壊れたのに、あれは死んだはずなのに!』

あれだ。

俺達を私達をこうした存在。

思い出した、今、はっきりと思い出した。

ころす?

殺そう。

『殺しては駄目です』

だれ?

さっきの声と違う。

誰?

『先ほどの声はロープ殿です。私は、リーダーです。あれを殺しては駄目です』

どうして?

あれがいると、悪い事しか起きない。

いらない。

いらないよ。

『死は、一瞬の苦しみだけじゃないですか。もっともっと苦しまないと、あなた達が苦しんできたように』

あれ?

思ったのと違う。

リーダーも、私達僕達を認めるの?

『当然です。主が大切にしたあなた達を認めない理由がどこにありますか?』

たいせつだって。

ふわって温かいね。

たいせつはいいね。

大切だって。

ふふふっ。

ぽかぽかするね。

『そうだ、主は安定しました。ありがとうございます』

よかった。

うれしい。

こんな、気持ちになれるんだね。

ふしぎ。

ずっと、真っ暗だったのに。

今も、まっくらだよ。

そうだった。

でも、暗いのに温かいね。

『居心地が良くなったのですか?』

そう。

そうだね。

少し前から、僕達のままでもいいかなって。

そう。

そうか。

どうしたの?

主だけじゃなく、主の周りの者達もこのままの僕と私を受け止めてくれたね。

あぁ、あの場所は楽しかった。

『また、いつでもどうぞ。子供達が喜びます。特に桜が』

あのこだ。

そうそう、あの子だ。

あの子達の為にも、あれから皆を返してもらおう。

そうだね。

返してもらおう。

『協力できる事があったら言って下さいね』

ありがとう。

本当に、普通の態度だね。

『主を好きな者達は、みんな仲間です!』

―監視者 第1位の神視点―

なぜ?

どうして?

結界は完全に壊れたはず。

なのに、あの世界に攻撃が届かない。

何か見えない強大な力に守られてしまった。

あの力は何なんだ?

「あぁ、どうして邪魔をする!」

だが、あれは死んだ。

そう、あれが持つ力は完全に消えた。

だから、死んだ。

なのに、どうしてこんなに不安になるんだ?

「くそっ」

力が足りない。

出来損ないの世界を壊すのに、こんなに力を使うとは思わなかった。

もっと簡単に壊れると思ったのに。

「今度こそ」

「いい加減にしろ!」

ん?

誰かの声に視線を向けると、フィオ神とアイオン神の姿。

まだ、いたのか。

「ふふっ。あははっ。残念だったな。あれは死んだ! お前たちは守れなかったんだ!」

本当にショックを受けているんだな。

たかだか、下等な存在が死んだぐらいで。

ふわり。

えっ?

なんだ、この気配は。

フィオ神とアイオン神の驚いた表情に慌てて、世界へと視線を向ける。

「なっ!」

こっちに向かって来る黒い塊。

それが何か分かる。

これは、呪いだ。

しかも、そうとう濃い。

防ごうと胸に手を当てると、その手をぐっと黒い塊から出た影が掴む。

いつの間に、こんなに近くに?

手を掴んでいる黒い影に気を取られていると、目の前に何かがいた。

視線を向けると、真っ赤な目。

「……ひっ」

感じる事の無かった恐怖に襲われる。

なんだ、これは。

どうして私が怖がっているんだ?

「我々は、この存在のまま認められた。だから、ここにいる事が出来るようになった。返してもらう。我々から奪った皆を」

ズボッ。

「えっ?」

自分の胸元を見る。

黒い影が、何かを掴んでいる。

それは……それは、黒い石。

呪いに囚われた魂は、通常の力より強い力を持っていた。

だから、この黒い石に魂を閉じ込めて呪いの力を自由に使えるようにした。

必要だったから。

そう、私にはそれが必要だった。

だから。

「駄目だ! それは私の物だ!」

「違う」

ブチブチブチ。

私と黒い石を繋げていた物が、黒い影によって引き千切られていく。

どうして、呪いにこんな事が出来る?

呪いは力だ。

物理的に何かを掴む事など出来るはずが。

「あぁ、これか? これは、リーダーが片腕を貸してくれたんだ」

リーダー?

誰の事だ?

「まさか、簡単に『それなら手を持って行きますか? 掴むのに必要でしょ?』と言って、片腕を差し出すとは。ふふっ」

なんだ?

呪いのはずなのに、何故笑っている?

何かがおかしい。

「これが呪いの塊?」

フィオ神が傍に立ったのが分かった。

すぐに奴から離れようとするが……足が動かない。

あぁ、そうか。

視線を、黒い影が掴んでいる黒い石に向ける。

あれを取られたから、力が……。

「世界が」

アイオン神の言葉に、壊すはずだった世界を見る。

得体のしれない強大な力が消えていた。

だが、壊れたはずの結界が元に戻っている。

「この力は、翔か?」

アイオン神の言葉に、「ありえない」と首を横に振る。

死んだはず。

完全に力が消えたのだから。

「良かった。生きていたのだな」

「生きていたというか、復活したというか、生まれ変わったというか」

呪いがアイオン神の言葉に普通に答える。

それにぎょっとした表情を見せたアイオン神。

「呪いだよな?」

「あぁ、呪いの塊だな。何と言うか、不思議な存在になった。形は保てないが、意識がはっきりした」

なんだそれ。

そんな事があるのか?

「なぜ、そんな事に?」

「さぁ? ただ主が、我々が苦しくないなら呪いのままでもいいと言ってくれた」

「存在証明をしたという事か?」

あやふやな呪いと言う存在を、確かに存在するとあれが証明したのか?

それが、出来た?

嘘だ。

そんな事は、ありえない。

カチャン。

「えっ?」

腕を見る。

神の力を封じる神具が見えた。