作品タイトル不明
109.絶対に守る!
収まった攻撃に、ほんの少し気を緩めた。
それが駄目だったのか、全身にのしかかるような力を感じた。
何が起こったのか分からない。
ただ、もの凄い力がこの世界を壊そうとしている事が分かった。
どこかで理解した。
この力には勝てないと。
でも、俺には守る仲間や家族がいる!
「5重結界! 結界強化!」
ビシビシビシビシ。
何重にも張った結界がひび割れていくのが見えた。
それと同時に、青い空が徐々に闇に飲み込まれていく。
「どうして呪いが?」
微かに感じる呪いの気配。
「あれ?」
毎日呪いには触れている。
なのに、今感じている呪いにはなぜか初めて触れたような気がした。
パシッ、バラバラバラ。
「あっ」
ヒビが入っていた結界が、ボロボロと落ちて来る。
その風景に慌てて結界を張ろうと、掌を空に向ける。
「5重――」
結界を張ろうとして、まだ力が元に戻っていない事に気付く。
朝の浄化までは、力の戻り方はいつも通りだったのに。
「どうして今なんだ」
俺は守れないのか?
どこかで悲鳴が聞こえた。
ただ、聞こえたから視線を向けただけ。
でも、落ちていく龍達を見て「ハッ」と意識がはっきりした。
守ると決めた。
そう、いろいろ抱え込んだこの世界を、俺は自分の意志で「守る」と決めた。
だから、なんとしてでも守らないと。
でも、何をすれば……。
視界の隅に、龍達が光に包まれたのが見えた。
何が起こっているのか分からないが、その光を見た瞬間に不安な気持ちに襲われた。
「核が、奴らの核がこのままでは壊れてしまう!」
「えっ?」
コアの言葉に唖然とする。
核。
それって魔力を生み出す重要な物で、生きるためには魔力が必要で。
あぁ、このままだったら飛びトカゲ達は。
「核の修復は――」
「無理だ。核は壊れたら元には戻せない」
それは……駄目だ。
何か方法があるはずだ。
絶対に、諦めてたまるか。
ビシビシビシビシ。
空を見上げると、なんとか無事だった結界にもひび割れが出来始めていた。
……このままでは、誰も守れない。
「光が消える」
コアの言葉に龍達を見ると、包んでいた光が弱まっていた。
あの光が消える前に、核の代わり。
いや、核が何処かに。
「あっ、核ならある」
そうだ。
俺は核を多く持っているじゃないか。
あれが使えれば。
胸に手を置く。
俺の中の5個の核を感じる。
ビシビシビシビシ。
核を龍達に渡せるだろうか?
いや、大丈夫。
俺の力を信じよう。
俺の力はきっと、今までのように俺の気持ちに応えてくれる。
「信じているからな。絶対に龍達を守ってくれ」
胸がスッと熱くなる。
パシッ、バラバラバラ。
「そうだ、あの力」
何度も何度も限界まで力を使って来た。
何度目だったのか。
ほんの一瞬、魔力が空になった時、何かを感じた。
ただ、本能でそれに触れては駄目だと感じた。
だから、今まで一度もそれに触れた事は無い。
「たぶん、あれは魂力だ」
魔力が空になった時に感じた「力」。
魂を維持する力。
どれほどの力があるのかは分からない。
でも、あれを使えばなんとかなるような気がする。
ビシビシビシビシ。
残っている結界を見ると、後2枚。
もう時間が無い。
胸に手を置き、力を意識する。
もっと奥。
もっともっと奥にある力。
その力が必要なんだ。
「くっ」
拒絶されているのか、集中しようとするが出来なくなる。
たぶん、それは本能なんだろうな。
魂を守ろうとする。
でも、俺は何が何でも守ると決めた。
さっき、空を見上げた時。
アイオン神とフィオ神の神力を感じた。
ただ、彼等の力よりこの世界を攻撃している奴の力の方がはるかに強い事も分かった。
アイオン神達が、攻撃して奴を止めるためには、奴の力を削いで弱めなければならない。
だから、絶対に今全ての力が必要なんだ。
俺の力なんだから、俺の気持ちに応えろ!
「俺は絶対に守りたいんだよ!」
パリン。
何かの割れる音が聞こえた次の瞬間、体の奥から今まで感じた事が無いほどの力を感じた。
その力を抑え込まず、一気に攻撃している奴へと向ける。
「奴の力を無効化しろ!」
体が、今までに感じた事のない痛みを訴える。
「ぐはっ」
息が!
痛みが酷いと意識は飛ばないようだ。
今は、それが助かる。
「核、龍達、を助け、ろ!」
この世界の人も獣人もエルフも。
子供達や天使達。
フェンリル達やダイアウルフ達にガルム達。
シュリの家族や親玉さんの家族。
核の周辺にいる、この世界の被害者達。
皆を守ると決めた。
俺の力を全部、使っていいから!
空っぽになってもいいから!
「守れ!」
何かを失った事がわかった。
もしかしたら、俺の中にあった核なのかもしれない。
でも、もうそれを確認する力は無い。
「主。ごめん、遅くなった」
「まも、れ」
俺ではなく、この世界を。
奴の力を抑え込む力は、多い方が良い。
そう感じていた。
だから、ほんの少しだけ力を貸して欲しい。
「……分かった」
なんだか、周りが騒がしい?
でも、どんどん音が遠くなっていく。
『し・・し、い』
なんだろう、凄く優しい声が聞こえた気がする。