軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

108.世界が壊れる。

―アイオン神視点―

次々と流れる映像を、ただ呆然と眺める。

今の映像で世界がまた1つ、第1位の神のせいで滅んだ。

これで何個目だろう?

もう、数えるのも嫌だ。

正直、ここまで酷いとは考えてもいなかった。

途中何度も「止めて」と言いそうになった。

でも、それは決して許されない。

同じ神として、ちゃんと受け止めなければならないのだ。

どれぐらいの時間が流れたのか、目の前の映像が消えた。

『とりあえず、被害が大きい物だけを選んだから』

ロープの言葉に、フィオ神が頭を抱えた。

私もロープの言葉に衝撃を受けた。

まだあるのかと。

まだ、被害にあった者達がいるのか。

「本当に、ここまでの事をしていたのか?」

フィオ神は、空中に視線を向ける。

『これは全て第1位の神の記憶装置から取った情報だから、本当の事だと思うよ』

「なんて事をしてくれたんだ」

『映像には残ってないけど、奴が他の神を誘導して滅ぼさせた世界もあるから』

映像の中だけでも、第1位の神が滅ぼした世界は50個以上もあった。

他の神を誘導して滅ぼさせた世界があるなら、たった1柱の神のせいでどれだけの世界が滅んだのか。

『奴にとって、魂は使い捨ての道具なんだろうな。映像で奴も言っていただろう? 「無限に生み出す事が出来る道具だ」と』

ロープの言葉は正しい。

神なので、条件さえ揃えれば魂は無限に生み出せる。

だが、彼らを自らの望みの為に使っていいわけでは決してない。

『そうだ、気になる事があるんだった』

ロープの言葉と同時に、目の前に3つの映像が現れる。

「えっ?」

フィオ神を見ると、丸い玉には触れていない。

つまり、今の映像はロープが出している事になる。

もう、この装置も使えるようになったのか。

それって、フィオ神の神力を真似たのではなく変化か?

まぁ、どちらでもいい。

フィオ神の扱う物を全て扱えるようになったという事なんだよな。

「凄いな」

フィオ神を見ると、呆れた様子で首を横に振っていた。

『これらの映像は、奴が世界を滅ぼした前後の物なんだけど、よく見て。そして前後の奴の力を比べてみて』

ロープの言う通り、3つの映像をそれぞれ確認する。

あれ?

なんだろう?

「力が一気に増えていないか?」

フィオ神の言葉に頷く。

そう。

世界を滅ぼした後、神力がありえない増え方をしているのが分かった。

まるで、滅ぼした世界の力を取り込んでいるかのようだ。

「まさか、魂の力を利用するだけではなく、自らにも取り込んでいるのか?」

だからあれほどに強いのか?

『やっぱり、そう見えるよね?』

認めたくないが、そういう事なんだろうな。

『これ、大丈夫なの? なに――』

ロープの声が不意に途切れる。

そして、荒れ狂う力を全身で感じた。

「ロープ? どうしたの?」

体中を締め付けられるような力に、体が震える。

『誰かが、主の世界を攻撃している! ……くそっ! 何かに邪魔をされて本体に戻れない。誰が……奴だ!』

「攻撃? 奴? ロープ? ロープ?」

奴って?

ロープがそう言う者は、第1位の神か?

「ロープ?」

荒れ狂った力が遠ざかるのを感じる。

「帰ったのか?」

それにしても、凄い圧だった。

あれが魔幸石の本来の力なのか?

「アイオン神、行くぞ」

「えっ? あぁそうだな」

ロープが慌てたように、翔の世界が攻撃を受けている。

止めないと。

「くそっ。一気に飛ぶことが出来ない」

フィオ神の言う通り、翔の世界に飛ぼうとすると何かが邪魔をする。

おそらく、第1位の神の力が我々を跳ね返しているんだろう。

「力技で押すしかないな」

フィオ神から、神力が溢れるのを感じた。

置いて行かれない様に、自分の神力を一気に高めていく。

ここまで神力を解放するのは久しぶりだな。

「行くぞ」

「分かった」

フィオ神に手首を掴まれると、私とフィオ神の神力が重なった。

そして、何かを割る音が、数回。

体に受ける圧に耐えていると、ふっとその圧が消えた。

「無事に来ることが出来たが……」

フィオ神の目がスッと細められる。

その先にあるのは、攻撃を受けている翔の世界があった。

結界がかなりボロボロになっている。

「行くぞ」

フィオ神と共に第1位の神を止めるために、彼女との距離を一気に詰める。

我々が来た事に気付いたのか、こちらにも攻撃を仕掛けて来た。

「うわっ」

全身が、燃えるように熱くなる。

自らの神力を解放して、攻撃してくる神力を跳ねのける。

「邪魔をするな~!」

「もう、止めて下さい!」

えっ?

聞きなれない声に、視線を向けると第1位の神の仲間バシュリ神がいた。

「もう、止めましょう」

バシュリ神は、第1位の神に手を伸ばす。

その手が、どろりと形を崩した。

「くっ」

「危険だ」

フィオ神が、バシュリ神を第1位の神から遠ざける。

「邪魔だ! お前にはアイオン神を捕獲しろと命令したはずだ! 役目を果たせ!」

第1位の神の言葉に、バシュリ神は首を横に振る。

「もう駄目です。俺が持っている証拠を全て創造神に提供してきました。もう、終わりです」

バシュリ神の言葉に、ぴたりと攻撃が止む。

翔の世界への攻撃も止まる。

それにホッとする。

第1位の神に注意しながら、翔の世界へと視線を向ける。

かなり攻撃を受けていたようだが、結界がしっかりと防いだようだな。

まさか、第1位の神の攻撃に耐えるとは思わなかった。

翔の力は、本当に未知数だな。

だが、第1位の神が攻撃をした事。

そしてその攻撃を防いだ事で、全ての神がこの世界の事と翔の力の事を知るだろう。

これから、神達がどういう反応を示すか、心配だ。

「終わり? ふふっ。あははははっ」

不気味に笑いだした第1位の神に、視線を向ける。

そして首を傾げる。

彼女の名前は……なんだったかな?

私はずっと、自分と似た考えを持つ神達とだけ交流してきた。

そのため、私は第1位の神とはほとんど会う事は無かった。

だからなのか、彼女の名前が思い出せない。

「昔、聞いたような気がするんだけど」

「どうした?」

昔を思い出そうとしていると、フィオ神が横に来た。

「第1位の神の名前が何だったのか、思い出せなくて」

「………………そうだな」

どうやらフィオ神も、名前が出てこないらしい。

彼の方が、第1位の神に近い存在なのに。

「第3位の神なのに、知らないの?」

「……誰も彼女の名前を呼ばないんだ」

呼ばない?

「裏切ったのか? なぜ? 信じて……許さない!」

「えっ?」

バシュリ神の体を黒い煙が襲う。

「バシュリ神!」

フィオ神が神力で跳ねのけようとするが、黒い煙の方が神力を跳ね飛ばしてしまう。

バシュリ神の体が黒く染まって、崩れていく。

周りに苦痛の悲鳴が響き渡る。

「ふふふっ。この世界のせいだ。この世界が全てを狂わせた」

第1位の神の体が黒い煙に覆われていく。

「フィオ神、あの黒い煙は呪いだ。いつから、奴は呪いに飲み込まれていた?」

「分からない」

目の前の神だった者が、完全に黒い煙で見えなくなった次の瞬間。

「翔!」

一気に黒い煙は膨れ上がり、翔の世界に襲いかかった。

ビシビシビシビシ。

黒い煙で見えないが、結界の割れる音が響く。

なんとか、抑えようと全神力を解放するが、呪いの方がはるかに強い。

「駄目だ。どうして!」