作品タイトル不明
85.無理、無理!
準備をしましょうと連れてこられた衣裳部屋。
並べられた服と言うか、「舞台衣装か?」と聞きたくなるほどキラッキラした衣装に顔が引きつった。
そうキラキラじゃない、キラッキラした衣装だ。
「「「これで!」」」
当たり前のように迫る三つ目達。
「却下!」
「「「なぜ!」」」
三つ目の1体が、衣装を手にして近づいてくる。
いや、怖い。
本当に怖いから!
「この日のために、頑張ったのに~!」
「それはありがたいと思うけど、無理なものは無理!」
なんで、こんなキラッキラした衣装を用意した?
いつも言っているよね?
普通でお願いしますって。
「ん? これは羽か?」
赤くないからカレンとは別の鳥かな?
でも、カレン以外に鳥を見かけた事は無いんだけど。
「魔物の羽です」
羽をもつ魔物なんているんだ。
今度探してみよう。
「綺麗な羽だな。あれっ、これってマントだよな? 羽が付いたマント?」
俺の言葉に、三つ目が胸を張って頷く。
「主にぴったりの魔法を付与しました! 風が吹くたびに、主の周りを羽が舞います」
「魔法? 風が吹いたらマントにかけた魔法が発動するという仕掛けか。……俺の周りを羽?」
「はい、幻影ですが」
「つまり、俺の周りを幻影の羽がひらひら……舞うのか?」
三つ目が嬉しそうに頷く。
「はははっ、無理。着ないよ」
「では、光の玉――」
「却下」
「火を――」
「絶対に着ないからな」
火は恐ろしくないか?
「そんな~」
嫌だよ。
そんな恥ずかしいマントを着るの。
「えっと、この世界でちょっと『煌びやかな』程度の衣装で頼むよ」
あまりに地味だと、来てくれる人達に悪い。
でも、俺の顔で華々しいのはきっと痛々しく見えるはず。
なので、ちょっと豪華ぐらいがいいはずだ。
「「「え~」」」
不満だと声を上げる三つ目達を見る。
絶対に譲らないからな!
「だから言ったでしょう? 主は慎ましい性格だから、豪華に着飾るのは無理だと」
そう、そう……ん?
つつましい?
えっと、慎ましいかな?
確か、遠慮深く控えめで……しとやか?
待って、誰の事を言っているんだ?
一つ目のリーダーを見る。
俺の視線に気付いたのか、俺を見上げると「任せて」というように頷いた。
否定したい。
でも、ここで否定したら……キラッキラな衣装が頭をよぎる。
うん、聞かなかった事にしよう。
「仕方が無い。諦めよう」
三つ目達には悪いが、ぐっと拳を作る。
勝ったぁ。
「この衣装は次の機会にしよう」
えっ?
三つ目達を見ると、頷きあっている。
マジ?
「そうだ。各国に招かれた時には、この中から選ぼう」
全然諦める気配が無い。
え~っ、……次は次の時に考えよう。
「あっ、今日の服を決めないと駄目だよね。ちょっと豪華な感じだと……これかな?」
三つ目達が持ってきたのは、黒をベースにした衣装で袖や裾に金糸と銀糸で刺繍が施されていた。
落ち着いた雰囲気のデザインでかっこいいな。
うん、これにしよう。
「で、これ!」
また、マントか。
どうしてもマントを取り入れたいのか?
「マントはいいよ。今日は気楽に話をするつもりだから」
仰々しいのは気後れしてしまう。
あっ、でも各国の王はどんな格好で来るんだろう?
もしかして……。
奥に移動させたキラッキラな衣装を見る。
あんな感じで来られたらどうしよう。
「リーダー。各国の王は、どんな格好で来ると思う?」
「そうですね。主より目立たないような格好で来ると思いますよ」
えっ、そうなの?
「どうして?」
「上の者より目立つ格好など、するはずがありません」
えっ、そういう決まりでもあるのか?
という事は、少しぐらい着飾っておかないと駄目じゃないか?
「マントぐらいならいいかな」
俺の言葉に、ガッツポーズをする三つ目達。
まぁ、全て駄目は申し訳ないしね。
うん、マントぐらい……マントか。
扱い方とかあるのかな?
座る時は、マントを避けて座るのか?
それとも、気にせずそのまま座るのか?
「ははっ。もう成る様に成れって感じだな」
「ではこちらの羽をふんだんに使った帽子も!」
「却下!」
そこまでは許可しないから!
と言うか、羽が好きだね。
なんとか衣装も決まり、着てみたが驚いた。
うん、すっごく驚いた。
「最高です!」
三つ目の言葉に、鏡に映った自分が頷く。
まさか絶対に似合わないと思っていた衣装が、似合うとは。
三つ目達のセンスに脱帽するな。
衣裳部屋から出ると、着飾った子供達がいた。
「おぉ、かっこいいし、可愛いな。皆、似合っているよ」
俺の言葉に嬉しそうな表情を見せる子供達。
なんというか、本当に可愛いらしいな。
「ウサとクウヒも、似合っているよ」
着飾ったクウヒとウサを見ると、恥ずかしそうな表情をしている2人がいた。
それがなんとも微笑ましい。
「変じゃないかな?」
ウサが恥ずかしそうに俺を見る。
「凄く綺麗だよ」
俺の言葉に嬉しそうに笑うウサ。
本当に、綺麗になったよな。
良かった。
……あれ?
2人と目線が……マジか。
少し前までは俺の方が高かったのに、いつの間にか同じぐらいの……ん?
待った、クウヒの方がちょっと高くないか?
獣人って、本当に成長が早いんだな。
だってまだこの子達は、13歳か14歳ぐらいのはずだろ?
それなのに、追い抜かれるとは。
まぁ、この世界で見た獣人は皆大きかったもんな。
いつかウサにも、背を抜かされるのか。
……別にいいけどさ。
カチャ。
俺の衣裳部屋の隣にある子供達の衣裳部屋の扉が開く。
「あっ、光。用意は済んだのか?」
「はい、終わりました。主は何を着ても似合いますね」
光はお世辞がうまいよな。
と言うか、
「ありがとう。光もかっこいいな」
驚いた。
光も今日は着飾っているのだが、もの凄く似合っている。
元々白くて痩せていた光。
ここでの生活で、色は白いままだが体格が良くなった。
だからなのか、今日の光はどこかの王子の様だ。
いや、王子なんていう者に会った事は無いから想像だけど。
妹に見せられた漫画の中の王子様みたいだ。
「ふふっ。主に褒められると嬉しいです」
光の言葉に、周りの子供達も頷く。
ん~、勉強が進むにつれ子供達の視線が何というか、崇める感じに変わってしまったんだよな。
俺を崇めるような教育はしないように言ってあるのに、なんでだろう?
もう一度、バッチュと話し合わないとな。
「そろそろ着くみたいです」
リーダーの言葉に、出迎えるために庭に向かう。
リビングとウッドデッキを見ると、一つ目達の手によって完璧に整えられていた。
さすがだ。
ん?
この気配は、水龍のふわふわだな。
あれっ、ふわふわの気配に交じって人の気配を感じる。
「リーダー。各国の王はどうやってここに来るんだ?」
「それぞれ龍達に、迎えに行ってもらいました」
なるほど。
だから、ふわふわの気配に交じって人の気配を感じるのか。
龍達に乗った者達は、ここに来るまでに気を失っている者も多いけど、大丈夫かな?
あっ、見えた。
……ふわふわ、速いって。
もう少し乗っている人達の気持ちを考えてあげて欲しいかな。
「ただいま」
「うん。お帰り」
ふわふわと挨拶を交わしながら、ちらりと乗っている者達の様子を見る。
おっ、凄いな。
半分以上は意識があるみたいだ。
意識がある人達の中で、一番豪華な服を着た男性がふわふわから降りて、俺に視線を向けた。
その姿を見て、ホッとする。
良かった、彼もマントを着ている。
マントは、場違いでは無かったようだ。
「本日は、お招きいただきまして有難うございます。エンペラス国ガンミルゼと申します。これからも、どうぞよろしくお願いいたします」
ガンミルゼ王が頭を下げるのを、なんとも言えない気持ちで見る。
ボロが出る前に言っておいた方が良いよな。
「丁寧な挨拶ありがとうございます。ですが、もっと気軽な関係を築きませんか?」
敬語も丁寧語も苦手なんだよ。
だから、普通に話す関係を目指そう。
「えっ?」
「これからいい関係を築くためにも、気軽に話せる関係になりましょう」
ガンミルゼは驚いた表情をしていたが、ふっと笑みを見せると頷いてくれた。
「ありがとうござ……ありがとう。これから、よろしく」
「こちらこそ」
ガンミルゼはいい人だな。