軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

59.オルサガス国 デルオウス王3

―オルサガス国 デルオウス王視点―

ゴーレムであるバッチュ殿の言葉に呆然とする。

エルフのハーフを「実験用」にしていたなんて。

……全く知らなかった。

自分を有能だと思った事は一度もない。

いつも、オップル一族にいいようにあしらわれてきたのだから。

だが、ここまで無能だったとは……。

「情けないな」

ただ、今は落ち込んでいる暇はない。

既にオップル一族が動き出しているはずだ。

なにがなんでも、止めなければ。

森の神が協力してくれている今が、最後のチャンスだろう。

「来ましたよ」

バッチュ殿の言葉に視線を向けると、エルフ達とその伴侶なのだろう。

人や獣人の姿がある。

そして幼い子供達の姿も。

声を掛けようと近づくと、怯えた表情を見せた。

「あなた方を助けに来たデルオウス王です。もう大丈夫です」

助けたのは俺ではないが、バッチュ殿の言葉にぐっと手を握りしめ彼らに向かって小さく頭を下げた。

「そうだ。生活していた村に、大切な物はある? 土で埋めてしまうから、あるなら持って来るように言うけど」

バッチュ殿の言葉に、全員が首を横に振る。

「あの村に、そんな物はありません」

代表のエルフなのか、少し年配のエルフがバッチュ殿に答える。

ずっと生活をしていた場所なのに、無いのか。

「分かった。それなら思いっきりあの場所を壊してくるね」

「お願いします」

バッチュ殿の言葉に、年配のエルフが頭を深く下げる。

「任せて、二度とあんな場所が出来ないように、徹底的に親アリさんが潰すから! あぁ、そうだ。あなた達に暴力を振っていたエルフ達は――」

「「「我々が罰を与えておきました」」」

少し大きなアルメアレニエ達がバッチュ殿の言葉を遮り、前脚を上げる。

「罰」という言葉に、周りにいる者達が首を傾げる。

「天罰という事で、上空から彼らの上に落ちてみたんですが白目をむいてぶっ倒れました。面白い、ではなく、呆気なかったので起きたらすぐに目に入るように我々の仲間が彼らの顔の上に乗って遊んで、いえいえ、起きるのを待ち構えています」

アルメアレニエの言葉を想像したのか、数人のエルフ達の顔色が悪くなった。

目が覚めて最初に見るのが、アルメアレニエ。

それは、本当に恐ろしい事だろう。

そういえば、先ほどから変な叫び声が聞こえるんだが、もしかして……。

まぁ、罰のようだからいいか。

任せよう。

「参加しに来たヨ~」

場違いに元気な声が上から聞こえたので、視線を向ける。

「あれ? テン?」

バッチュ殿とは色違いのゴーレムの登場に、ちょっと周りが騒がしくなる。

バッチュ殿は岩の色をしているが、新しいゴーレムは青みがかった色をしている。

「主から、『オップル一族が暴走すると大変だろうから、バッチュの手助けをして来て』とお願いされたんだヨ」

森の神が、新たに戦力を貸してくれたのか。

本当にありがたい。

「そうなんだ。協力ありがとう」

「どういたしましてだヨ。そうそう、これ! ナインティーンから借りて来たヨ」

テンと呼ばれたゴーレムが持っているのは、黒い小さな箱?

その箱の一部から何か突起が飛び出している。

何なんだろう?

「出来たんだ」

「うん。で、スイッチを入れて……聞こえますか?」

「……聞こえています。雑音も無いから問題ないと思います。それと、オップル一族の動向確認は終わっています」

テンが黒い箱に向かって話すと、黒い箱から声が聞こえた。

「状況は?」

驚く間もなく、バッチュがした質問の答えに耳を澄ます。

「……オップル一族が抱える騎士団が、武器を手に王城に向かっています」

えっ?

王城に?

「……一気に城を攻め落として、デルフォス王弟を確保しろと指示が出ています。デルオウス王は『奴の傍にいる側近に毒を渡してあるからすぐに終わる』と話してました。デルフォス王弟を傀儡にして、エルフ国を操る算段のようです。証拠になると思ったのでセブンティーンから借りた「映像記録 最新バージョン」を使って、全て撮影済みです。最新バージョンなので、顔の毛穴までばっちりです」

「デルフォスが……守らなければ」

しっかりしなければと思うが、弟の名前が出た瞬間に少し混乱してしまう。

彼しか、もう家族は残っていない。

そして俺は、幼い頃に盛られた毒のせいでそう長くは生きられない。

だから、デルフォスをなんとしても守らなければ。

「……あっ、デルフォスは子アリが保護したみたいです。その子アリから『友達が攻撃されたから反撃したけど、問題あった?』と、問い合わせが来ています。問題ありますか?」

子アリ?

……もしかしてデルフォスが紹介してくれた、アビルフールミだろうか?

「問題はなし! 良くやった。ん~、王城を攻め落とす……つまり反逆を企てたんですね。そして実行しようとしていると」

ん?

風が冷たい?

まだ、こんな冷たい風が吹く季節ではないはずだが。

「ふふふふっ」

えっ?

バッチュ殿を見ると、なんとなく1歩後退ってしまう。

「デルオウス王」

「はい」

なぜだろう。

凄い圧を感じる。

「反逆は駄目だよね? 当然、起こした者達に手加減は必要ないよね? 生きてさえいればいいよね?」

「……はい」

「ありがとう」

どうしてだ?

なぜ、オップル一族を憐れに感じたんだ?

「そうだ。そこの君、アウト。それは毒でしょ? 駄目だよ?」

毒?

バッチュ殿が指した方を見ると、長年仕えてくれている側近がお茶を持って立っていた。

だがその表情はこわばり、真っ青になっている。

そういえば、俺は側近に毒を飲まされる予定だったか。

「お前だったのか。俺の周りは敵だらけだな」

「オップル一族は100年以上掛けて、王家の周りをゆっくり侵食したみたいだから。気付くのは難しいと思うよ。情報も色々制限されていたみたいだし」

「ですが、それが許される立場ではないので」

俺の言葉に、バッチュ殿が頷く。

「そうだね。なら、ここで一気に膿を出し切って綺麗にしよう。大丈夫、フォローまでするのが俺だから! ちゃんと実力があって、エルフ国を大切にしているエルフ達を見つけてあるよ。でもまずは、王城周辺を綺麗にしないとね。一緒に来るよね?」

バッチュ殿の言葉に頷くと、ドンと近くで音がした。

見ると、大きなアルメアレニエが前脚をあげていた。

「あれに乗って、城の前でバカ騒ぎしている者達の前に登場してみよう。あっ、まだ聞こえている?」

「……聞こえています」

「オップル一族のバチュテ当主とアリャンテ当主の確保をよろしく。生きていればいいからね」

「……ふふっ。了解」

あれ?

今、笑い声が聞こえなかったか?

「では、行きましょう。親蜘蛛さんに乗って下さい」

アルメアレニエに乗るのか。

「宜しくお願いします」

アルメアレニエの傍に寄ってみたが、何処に乗るんだ?

「背中に飛び乗れますか? 無理なら風魔法で体を持ち上げます。すみません、私は糸が出せなくて」

「大丈夫です。失礼します」

魔法で脚力を高めて、アルメアレニエの背に飛び乗る。

良かった、上手くいった。

「落とさないように、魔法で包み込むので安心して下さい」

「はい」

隣を見ると、俺が乗っているより少し小さいアルメアレニエに宰相が乗っていた。

走り出すと、そのスピードに体が硬直した。

「落とさない」と言ってくれたが、これは怖い!

「着いたよ」

バッチュ殿の声にホッと体から力が抜ける。

良かった、着いた。

「んっ?」

周りを見ると、王城を守る騎士達の姿に混ざって、オップル一族の紋章を付けた騎士の姿が見えた。

どうやら既に、王城に攻め入っていたようだ。

なんとか、ぎりぎり間に合ったのか。

「デルオウス王、片手を軽くあげてもらっていい?」

バッチュ殿の言葉に首を傾げながら、右手を上げる。

次の瞬間、上からバタバタと何かが落ちて来た。

えっ、何?

「「「「うわ~」」」」

「「「「ぎゃ~」」」」

オップル一族の紋章を付けた敵の騎士達から、叫び声があがる。

見ると、アルメアレニエ達とアビルフールミ達が上空から敵の騎士に向かって降ってきていた。

逃げまどう敵の騎士達の先には、少し大きなアルメアレニエ達とアビルフールミ達が待ち構えている。

中には果敢に戦う者もいるが、アルメアレニエもアビルフールミもかなり強いのだろう。

全く相手になっていない。

というか、前脚だけで振り払われている。

「凄いですね」

宰相の言葉に、無言で頷く。

「デルオウス王、バチュテ当主とアリャンテ当主を捕まえたから、こっちに連れて来るね」

オップル一族を纏める当主。

アリャンテとは会った事はあるが、バチュテ当主と会うのは初めてだな。

まさか2人も当主がいるなんてな。