作品タイトル不明
58.参加します!
ー一つ目 バッチュ視点ー
主のお陰でエルフ国までたったの数秒。
さすが主。
やる事が凄すぎる。
それにしても、この3重結界。
主は、俺が誰に攻撃される可能性を考えたんだろう?
もしかして、エルフの国にはまだ調べられていない強敵でもいるのだろうか?
いや、もしかしたら気を抜かないようにという注意かもしれない。
「よしっ、気を引き締めて行こう」
俺の言葉に、一緒に来た仲間達が前脚をあげて応えてくれる。
彼らがいなかったら、この短時間でエルフの国を調べ上げる事は出来なかっただろう。
オップル一族が全て片付いたら、ちゃんとお礼をしなければ。
でも、まずは目の前の事から処理していこうかな。
エルフの国に近付くと、先ほどから騒いでいるエルフ達の姿が見えた。
主が掛けた結界によって、自国でありながら入ることが出来なくなった者達。
飛びトカゲによると「気持ちを入れ替えたら、入れるだろう」との事。
つまり、彼らは主が与えたチャンスを無下にした愚か者。
容赦する必要は一切なし!
「やるぞ」
「主から、エルフの国の王に判断を任せろと……」
あっ!
隣にいる親アリさんからの言葉に、ちょこっと忘れていた大切な事を思い出す。
もう少し忘れていても……いやいや、ダメダメ。
主との約束は絶対だから!
「分かっているよ。……眠らせようか」
俺が片手を上げると、親アリさんと親蜘蛛さんが一気にエルフ達に駆けだす。
森に響く断末魔と倒れる音。
いや、近付いただけで失礼でしょ!
まぁ、いいか。
終了。
エルフの国を囲う壁に近付き、様子を見る。
結界で守られてはいるけど、どうかな?
「攻撃された痕跡さえないね」
かなり何度も攻撃を受けたみたいだけど、壁に傷1つ無し!
さすが主の結界は強いね。
えっと次は、エルフの王に協力することを宣言しないと駄目だったな。
「とりあえず王は何処だろう?」
「ハーフの家族を救出しに行って、交戦中みたいだ。エルフの国にいる私の仲間が連絡をくれた」
子アリが、エルフの王がいる方を前脚で指す。
「ありがとう。下を走ると色々邪魔だから、結界の上を走って行こうか」
「「「「「了解!」」」」」
主の作った結界の上を走って、場所を知っている子アリを先頭に王の下へ最短ルートで進む。
火や水の攻撃が飛び交う場所が見えてくると、すぐにキンという剣がぶつかる音も聞こえた。
「アリさん達は、捕まっているハーフの家族の救出に行って!」
俺の言葉にアリさん達は、結界を抜けエルフ国に入るとそのまま地面へ降下。
孫アリ達は、そのまま地面を走って救出に向かい、子アリと親アリ達は、地中から行くのか地面に穴をあけて潜り込んで行った。
「俺達は、王の下へ行こう」
王のそばには、蜘蛛さんがいるから合図を送れば……あっ、いた!
王の場所を確認できたので、結界を抜けエルフ国に入る。
王の真上に来ると、そのまま地面へと降りた。
「あっ、蜘蛛さん達は、あの煩い攻撃を止めてくれる?」
「「「「「分かった」」」」」
蜘蛛さん達とも別れて、王の隣に着地する。
「こんばんは」
「えっ? うわっ!」
椅子から転げ落ちるエルフの国王、デルオウスを見る。
もう少し離れた所に着地をするべきだった。
怪我をさせたら、主に怒られちゃうよ。
……怪我をしていたらヒールで誤魔化そう。
「申し訳ない。怪我は大丈夫?」
「はい。えっと、リーダー――」
「違います! 俺はバッチュと言います!」
俺も主は大好きだけど、節度はちゃんと守れる子だから!
リーダーとは、違うから!
「主、えっと。森の神である我々の主から、エルフの王に協力をするようにと言われました。なので、なんでも言ってください。とりあえず、攻撃を止めるように言ったから。あっ、終わったみたいだね」
「えっ、あぁ攻撃が止まった。……森の神が、協力を……。ありがとうございます」
「いえ。ところで、オップル一族の動きは確認できているの?」
俺の言葉に、首を横に振るデルオウス王。
それは駄目ですね。
まずは、奴らがどう動こうとしているのか調べないと駄目だね。
「終わったよ~。攻撃していた奴らと威張りくさって指示していた奴らを全員確保」
「ありがとう~」
子蜘蛛が、王のいる場所に報告に来てくれた。
王を守る騎士だろうか?
子蜘蛛が近づいた瞬間、数名が倒れたのが見えた。
あははっ、もっとしっかりね。
「色々と、ありがとうございます」
デルオウス王が頭を少し下げる。
「どういたしまして。子蜘蛛さん、オップル一族の今の動きを確認してくれる?」
「いいよ。仲間が傍にいるはずだから、すぐに確認できると思う」
「宜しくね」
ぼこっ。
子蜘蛛さんが仲間の方へ戻って行くのを見送っていると、足元で音がした。
視線を下に向けると、直径10㎝ほどの穴ができ子アリが顔を出していた。
「救出完了。見張りは捕まえたよ」
「ありがとう。家族の人達は無事だった?」
「救出する時に、半分ぐらいが寝ちゃったかな。でも怪我はなかったよ。見張り役のエルフ達は、少しだけ怪我したかな」
少しの怪我は、大怪我では無いから気にする必要なし。
「デルオウス王、ハーフの家族達の救出が完了したんだけど、こっちに連れて来る? それとも彼らのいた村に行く?」
「救出まで。えっと、こちらにお願いします。彼らのいた村は、閉鎖しますので」
「そうなんだ。残しておくと、悪い奴らがまた利用するかもしれないから、閉鎖するなら土で埋めちゃおうか?」
「出来ますか?」
「出来るよね?」
「もちろん」
穴から顔を出している子アリに確認すると、すぐに答えてくれた。
彼らが埋められるというなら、絶対だ。
「それなら、お願いします」
「うん。とりあえず、救出した者達を連れてきてくれるかな? 捕まえた見張り役は、親蜘蛛さん達が捕まえた者達と一緒の所にお願い」
「了解」
穴から顔を出していた子アリが、穴の奥へと消える。
デルオウス王から、小さく息を吐く音が聞こえた。
なぜか、緊張していたようだ。
緊張する場面は一切、無かったと思うけどな。
「捕まえた奴らは、どうしたらいい?」
ふと影が出来たので顔を上げると、親蜘蛛が傍にいた。
「デルオウス王、どうする?」
「えっ?」
「さっき、攻撃していたエルフ達の事です」
親蜘蛛の説明に、デルオウス王が神妙に頷く。
あれ?
さっきより、緊張してない?
「騎士達に渡してください」
親蜘蛛にお願いすると、次に傍にいた騎士に指示を出す。
「抵抗はしないように言い含めてあるので、大丈夫だと思うけど。心配だから、孫蜘蛛を数匹連れて行くといいよ」
親蜘蛛の言葉に、騎士から「えっ」という声が漏れる。
見ると、なぜか髪を触っていた。
それを不思議に思い見ていると、視線が合った。
「……孫蜘蛛殿は、何処にいらっしゃいますか?」
「ここ」
親蜘蛛が前脚で自分の体の上を指す。
そこには5㎝ほどの孫蜘蛛3匹の姿があった。
その姿を見た瞬間、騎士は髪から手を離した。
何だったんだ?
「ありがとうございます」
なぜか笑顔の騎士に、親蜘蛛が丁寧にお辞儀をされている。
それに俺と親蜘蛛が首を傾げてしまう。
良く分からないが、まぁいいか
すぐに、捕まえたエルフ達が連れてこられる。
あっ、白目をむいている者がいる。
やり過ぎと思われたかなとデルオウス王を見るが、特に気にした様子は無い。
主に「やり過ぎないように」と言われているから、ホッとする。
「彼らを牢に」
「待て! 我らは不当に攻撃されたため反撃をしただけだ! デルオウス王は証拠もなく、我々を攻撃したのだ! この攻撃は違法だ!」
身なりが周りより良いエルフの男性が、王を見ると叫ぶ。
違法?
つまり違法ではないという証拠を見せればいいのかな?
「あなた方一族が、オップル側の者だと調べが付いています。攻撃をする前に警告もしましたので違法ではありません」
「証拠はあるのか?」
「あるよ。21日前に、エルフ国王都にある、コックスという店でオップル一族のバチュテ当主と会食しているよね。その時の、領収書はどうかな?」
ウエスト型に作られた魔法バッグから、数枚の紙を取り出す。
「えっ?」
叫んでいた男の目が見開く。
「領収書じゃ足りない? それなら、34日前にハーフのまだ10歳にも満たない子供を、オップル一族が経営する病院に『実験用』として引き渡したよね。その時に、あなたがサインした『引き渡し完了書類』はどう? サインをしたから、覚えているよね? ちなみに、あなたのサイン済みの書類は他にもあるよ。全部で4451枚を回収してあるから。あっ、でもここには17枚しかないや。そうだ、まだ全てに目を通してないけど、あなたの一族はハーフで体の弱い子を実験用として、何人もオップル一族に引き渡しているんだね」
さて、どの証拠なら満足する?
「そうだ。病院にいる子供達を保護してあるから、証人もいるよ」