軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

56.何をしたの?

「はぁ~」

地下神殿から受け取ったというより、無理矢理押し付けられたこの世界が誕生した時からの映像を全て見終える事が出来た。

全てを知れば、問題を解決出来ると思っていた。

まぁ、そうあって欲しいという俺の希望だったのだが、見事に打ち砕かれた。

「見習い達を探し出して、ぶっ飛ばしたいな」

既に神力を奪われ、記憶だけ持って生まれ変わったらしい……だったはず。

なので、今更探す事は出来ないんだろうが。

「とりあえず、アイオン神とオアジュ魔神に相談かな。あ~、飛びトカゲ達にも言わないと駄目だな」

これから、今見た事を説明する必要があると思ったら気が重くなる。

俺は、面倒が大嫌いだ。

だからずっと、流れに身を任せて来た。

なのにこの世界に落ちてからは、勇者ギフトのお陰で行動的になった。

ただ行動的になった分考えなくなったので、いいのか悪いのかよく分からないが。

「勇者ギフトか」

行動を変えるほど意識を変えたと考えると恐ろしいが、この世界で生きる以上は必要な物だ。

アイオン神が言っていたように、勇者ギフトの効果が消えなくて良かった。

「さてと、そろそろ戻るか」

皆の所に戻って、説明しよう。

あと、ロープにアイオン神に連絡を取ってもらって……オアジュ魔神は、今日か明日には会えるだろう。

そうだ、オアジュ魔神には謝らないと駄目だな。

新しく出来た大地の事を色々とお願いしたけど、全部が無駄になるかもしれない。

それにこちらに家族で来るという話も、止めないと。

「オアジュ魔神の家族が来る前に、問題が分かって良かったよな」

椅子から立ち上がって背を伸ばす。

ずっと映像を見ていたからなのか、目の疲労が凄いな。

手を目にあてて、ヒールを施す。

眼球の奥に感じていた違和感が、ふっと消えた。

完璧。

「よしっ。戻ろう」

目を閉じて皆がいる家を思い浮かべると、ふわっと体が浮く感覚に襲われた。

足の裏に硬い感触がしたので、目を開けると真ん前に玄関の扉。

……ちょっと、玄関に近すぎるが成功。

『ロープ。ロープ。聞こえるか?』

玄関を開けながら、心でロープに呼びかける。

『何、何? 用事?』

すぐに答えが返ってきた事に、少し驚きながらアイオン神に連絡を取って欲しいと伝える。

『分かった。至急だと伝える?』

急いだほうがいいよな。

『あぁ、至急だと伝えてくれ』

『分かった。主、何かあったの? 随分と疲れた声になっているよ?』

心の声にも、疲れが影響を及ぼすのか?

『ありがとう。この世界の事をずっと映像で見ていたからだと思う』

しかも早回しだったから、本当に疲れた。

『そっか。ゆっくり休憩しないとね』

『そうだな。ありがとう』

『うん。アイオン神から返信があったら伝えるね。アイオン神の事だから、返事を返す前に飛んでくる可能性もあるけど』

ありえそうだな。

まぁ、今回は早い方が良いから問題は無いか。

『そうだな』

『完了。連絡は出しておいたよ』

相変わらず、仕事が早いな。

『ありがとう』

「俺が倒したかったのに~!」

「うわっ」

リビングの扉に手を掛けたところで、中から凄い怒鳴り声が聞こえて来た。

ドキドキしながらそっと扉を開けて中を窺う。

リビングの真ん中に、あれは……バッチュだな。

バッチュが、腰に手を当ててどうも怒っている様子だ。

あれ?

バッチュがいつもより、少し大きくなっているような気がする。

怒ると、大きくなるのかな?

「あれだけ頑張って情報を集めたのに! これでようやくあの一族を、死の淵に追いやれると思ったのに! 『ぎゃふん』と言わせるのが目の前だったのに! 地獄の底に叩き落とす予定だったのに!」

ん?

今、バッチュは何を言ったんだ?

情報を集めて、死の淵に? ぎゃふん? 地獄の底?

もしかして、ヒーローごっこの新しい設定か?

いや待て。

バッチュの前にいるのは……一つ目1体と三つ目が1体。

あの一つ目はもしかしてリーダーか?

リーダーがあちら側にいるのは珍しいな。

いつもは、なんとも言えない雰囲気で責める側なのに。

「申し訳ない。ただ、私としてはハーフの差別を指示しているのが誰なのか、知る必要があったのです。なので結果オップル一族が壊滅したようですが、これは不可抗力という事なのです」

オップル一族?

悪の王、バッチュの手下でも作ったのか?

いや、それならバッチュが死の淵に追いやるとは言わないよな。

あの言葉を言うのは、ヒーローの方……ヒーローは言わないか。

死の淵、地獄の底は悪役のセリフだよな。

「ぎゃふん」は……言う奴はいないだろうな。

「主? 入って来ないのか?」

隠れていたリビングの扉がすっと横にスライドする。

あっ、見つかった。

「ははっ。ちょっと」

誤魔化しながらリビングに入ると、扉を開けたチャイが不思議そうに俺を見る。

なんだか、盗み聞きしていた感じになってしまったな。

いや、していたんだけど。

「えっと、あれは何をしているんだ?」

とりあえず、気になっている事を聞こうかな。

「リーダーとあんちゃんが、エルフの国でちょっと暴れて来たみたいだ」

……エルフの国で暴れて?

「チャイ、詳しい説明を頼む」

俺が記憶装置の部屋で、この世界の始まりからを映像で見ている間に問題が起きたらしい。

エルフの国に、迷惑を掛けたのだろうか?

でも、あのリーダーの事だ。

それにはきっと、深い事情があるのだろう。

「リーダーとあんちゃんが、エルフの国で危ない道具を見つけたんだ」

あぁそういえば、エルフの国では呪いの剣などを用意していたんだよな。

それで他にも無いかと探す必要があるとリーダーが言っていた気がする。

「今日見つけたのは、奴隷を作る道具だったみたい」

あ゛っ、なんだって?

いや、落ち着こう。

リーダーが見つけたんだから、きっと適切に処理をしてくれたはずだ。

「その道具があった建物を守るエルフの中にハーフがいたんだけど、周りとの対応が違ったみたいだから、その彼に理由を聞いて……王のもとに行って……バッチュの掴んだ情報を王に教えて……裏切り者を糸で釣ったみたい。そこまで確認して、時間だからと帰ってきたそうだ」

えっと簡単に説明を聞いたけど、別にリーダーとあんちゃんは悪くないな。

うん。

ただ、バッチュが集めた情報を無断で使った事に、バッチュが怒っているというわけか。

時間と労力をかけて集めた情報を勝手に使用されたら、怒るのは当然だな。

それにしても、エルフの国で暗躍しているオップル一族の情報を掴むなんて、凄いな。

諜報活動まで出来るとは、さすが一つ目……だけじゃないから、さすが岩人形達か。

「主! いつお戻りに? 気付かず申し訳ありません」

俺に気付いたのか、バッチュの前で頭を下げていたリーダーが俺の元に駆けてくる。

「まだ、謝っていたんじゃないのか?」

「えっと……」

戸惑ったリーダーの様子に首を傾げる。

まだ、バッチュは怒っていたよな?

あっ、やっぱり。

バッチュから感じる魔力が、冷たくなっていく。

「そうだ、バッチュ。ちょっと聞きたい事があるんだけどいいか?」

「はい」

不貞腐れている声が可愛いんだが、言ったら怒りが俺に向きそうだな。

黙っていよう。

「バッチュが掴んでいるオップル一族の情報は、まだあるのか?」

「まだまだあります。それを使ってゆっくり追い詰めるつもりだったのに」

うわっ、魔力が一段と冷たくなった。

もしかして氷魔法が得意なのか?

「オップル一族が大人しく、エルフの国の王に捕まると思うか?」

「それは絶対にありえない!」

凄い、断言した。

「そうか。それならバッチュが持っている情報で、エルフの国の王を助けてきてくれないか?」

「えっ?」

オップル一族が抵抗すればするほど、エルフの国は荒れる可能性がある。

そのきっかけを作ったのが、リーダーとあんちゃんならフォローをしないと。