軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

47.オルサガス国 ハーフの騎士2

―オルサガス国 下っ端騎士ナピスラ視点―

尊大な態度を見せるガルジャ副隊長。

オップル総隊長の右腕と呼ばれている人物だ。

正直、「本当に実力があるのか?」と思う事も多いが、半端と呼ばれる俺が口に出来る事ではない。

少しでも不穏な事を言おうものなら、すぐに不敬で殺されるんだろうな。

俺は仕方ないが、家族を巻き込むわけにはいかない。

我慢するしかない。

ガルジャ副隊長が建物の中に入って行く姿を見る。

奴は本気であれを使うつもりなんだろうか?

また、怒りを買うとは思わないのだろうか?

ガルジャ副隊長やオップル総隊長に巻き込まれて死ぬのは嫌だな。

「懲りないよな」

少し前、オップル総隊長の指示で集められた武器の一部がゴミになった。

集めた武器の中でも、一番危険度が高かった「呪いの剣」。

使用する者の命を使って力を発動させる剣で、殺傷能力がかなり上がるが使った者は確実に死ぬ。

そんな呪いが掛った剣が、一瞬で白く変色しゴミへと変わった。

その事を知ったオップル総隊長は、洞窟へ来ると剣を確認。

森の神の怒りだと震えていた。

そう、あれは森の神からのおそらく警告だ。

結果を見届けるためだろう、傍にはアルメアレニエの姿もあったのだから。

なのに、また同じことをしている。

いや、前より悪化している。

俺が守っている建物の中には、呪具がある。

あれは人を操る事が出来る道具だ。

そんな物で何をするのか。

きっと碌な事ではないだろう。

もし、森の神に見つかったら?

次は、どんな攻撃をされるのか。

……やっぱり、オップル総隊長に巻き込まれるのは嫌だな。

建物の周りを見回す。

さっき感じた、何か。

それが魔力だったのか、何かの気配だったのか正直分からなかった。

ただ、俺の傍に何かいる。

それだけは理解出来た。

今は、傍にいない気がする。

そういえば、建物の扉が開いてすぐに動いたような。

……もしかして、既に中に入ったのか?

いや、それは無いか。

建物には、トラップが仕掛けてある。

あれを回避できるとは思えない。

「おい」

声に視線を向ける。

やばい。

ガルジャ副隊長の護衛を務める騎士だ。

「はい」

目の前に立った騎士を見る。

目を見たら分かる。

こいつは、人を痛めつけるのが好きな奴だ。

「お前、半端か? 半端がガルジャ副隊長に話しかけたのか?」

「すみません」

報告しなかったら、しなかったで文句を言う。

報告したら、半端が生意気にも話しかけてきたと文句を言う。

どうしろというんだ?

「生意気だな。この屑が」

鞘を抜いていない剣が、肩に思いっきり振り下ろされる。

ガシャッ。

「グッ」

肩から激痛が走るが、歯を食いしばって耐える。

ここで声をあげたら、もっと攻撃されるのは経験上知っている。

クソが。

「あ~、半端者はいいよな~。仕事が楽で」

はっ、長時間労働に休みは無し。

何が楽だ。

「あ゛っ? 何か言えよ。口が聞けないのか?」

「いえ、すみません」

ガツッ。

「グッ……ッ」

2発目が、同じ場所に叩きつけられる。

あまりの痛さに、意識が一瞬飛びそうになる。

やばいな。

こいつ、力が強い。

肩が壊されるかも。

「くくっ、いつまで耐えられるかな?」

視線を上げて、目の前に立つ騎士を睨む。

その視線を受け、笑みを深くした奴は剣を振り上げた。

振り上げられた武器を見る。

逃げても、戦ったとしても結果は同じだろうな。

それなら家族が被害に合わないためにも、耐えるしかない。

ははっ、死ぬのかな?

痛みに耐えるため、ぐっと目を閉じる。

あと、1発で終わればいいな。

ヒュッ。

バゴンッ。

「グハッ」

ん?

ゴロゴロゴロゴロ、ドゴッ。

……あれ?

痛みが襲い掛かってこない?

「なんだ? 何が起こった?」

何だろう?

周りが騒がしいな。

「ヒッ!」

「ゴーレム……ゴーレムだ!」

ゴーレム?

そっと目を開け、周りを見ようとするが肩に激痛が走る。

「痛っ」

肩を手で抑えると、べったり血が付く。

あ~、これは本当にやばいな。

「ちょっと、力が強かったみたいです」

「あれは、ちょっとでは無いよリーダー。彼、白目になってるし大丈夫かな?」

「大丈夫でしょう。急所に一撃だけですし。本気で蹴ってはいませんから。えぇ、きっと大丈夫です」

えっ?

聞いた事が無い声に、視線を向ける。

「えっ?」

感じていた痛みがふっと消えた。

いや、消えたわけじゃなく衝撃で忘れた。

「ゴーレム」

そういえば、ゴーレムだと騒いでいたな。

視線を動かして、この場所を一緒に守っていた騎士達の姿を探す。

同じ騎士だが、俺のようにハーフではないからちゃんと認められている騎士だ。

あっ、いた。

少し離れた所から、こちらを窺っているのが見えた。

凄いな。

全員の顔が、今までに見た事ないほど強張っている。

そういえば、俺を攻撃していた奴はどこだ?

ん?

近くの木の根元に倒れている騎士がいるな。

あの服の色は、ガルジャ副隊長の護衛で来た騎士で間違いないな。

という事は、俺を攻撃していた奴か?

でも、誰が俺をたすけ……視線を2体のゴーレムに向ける。

まさか、ゴーレムに助けられたのか?

えっでも、なんで?

「酷い傷ですね。治さないんですか?」

「治す?」

何を?

あぁ、傷か。

「後で治療を受けます」

騎士団で治療を受けられるか分からないけど、家に帰れば自分で出来る。

「後で? それではずっと痛いでしょう。主のように治せるか分かりませんが、やってみますね」

「主?」

「ん? 我々の絶対的な主ですが、何か?」

絶対的な主?

不思議な言い方だな。

いや、その方って森の神の事かな?

というか、ゴーレムと普通に話してしまった。

目が一つのゴーレムをじっと見ていると、こちらに手が伸ばされた。

何をされるのかと、体が強張る。

手で抑えている肩に触れた時は、痛みが来るのではないかと震えてしまった。

「ヒール」

「えっ?」

待て、えっ、本当に待って。

ゴーレムがヒール?

「クリーン。手をどけてください。これでは確認が出来ません」

いったい、何を確認するんだ?

肩?

あれ?

痛みが……いや、痛みは少し前から消えて……は、いなかったな。

ん?

今は痛みが完全に無くなってる?

肩に置いていた手をそっと離す。

痛みは完全に消えている。

あっ、べっとり付いていた血が消えてる。

「肩をぐるぐる回してください」

「はい」

ゴーレムに言われた通りに、肩を回してみる。

「痛みはありますか?」

「いえ、無いです。まったくありません!」

凄い。

あんなに痛かったのに。

肩が壊れる覚悟や、死ぬかもしれないと思ったのに。

「違和感もないですか?」

「はい。ありがとうございます」

……でも、どうして助けてくれたんだろう?

というか、どういう状況なんだろう?

えっと。

周りを見回す。

騎士達が遠巻きにこちらを窺っているのが見える。

うん。

まぁ、そうなるな。

あれ?

ガルジャ副隊長は?

ガルジャ副隊長が入って行った建物を見る。

まだ、中にいるんだろうか?

今、ガルジャ副隊長が出てきて俺とゴーレムを見たら、どう思うだろう?

……内通者? 裏切者?

「どうしよう。家族に迷惑が……」

でも、ゴーレムに何処かへ行ってくれとも言えないし。

いや、今更言っても他の騎士達が見ているのだから、意味ないか。

……どうしよう。