作品タイトル不明
46.当たりの日ですね。
ー一つ目リーダー視点ー
新たに現れたエルフを見て、あんちゃんの雰囲気がガラリと変わったのを感じた。
原因は、あのけばけばしい服を着たエルフで間違いないでしょう。
それにしても、彼はあの服を似合っていると思っているのでしょうか?
はっきり言って、似合っていません。
視界の暴力です!
首回りのレースですが、異様に多すぎます。
宝石は付ければいいという物ではありません。
刺繍があれほど安っぽく見えるなんて、ある意味凄いです。
見ていると、目がチカチカしてきます。
「あんな不快な服は初めてです。すぐさま破いて燃やして消し去りたい」
隣から聞こえた不穏な言葉に視線を向けると、超不機嫌なあんちゃん。
まぁ、そうなるのも分かります。
あんちゃんの服に掛ける思いは、凄いですからね。
ちょっといき過ぎなところも……いえ、情熱があるのはいい事です。
「あんちゃん、落ち着きましょう」
「分かってます。彼の好みに口を挟むのは間違ってますから」
確かに、あのエルフの好みに第3者が口を挟むのは駄目な事です。
ただ、もうちょっと周りが気を使ってもいいと思います。
「何があった」
おや?
あのけばけばエルフは、他のエルフより地位が上なのでしょうか?
そう言われれば、周りのエルフ達が彼に気を遣っていますね。
「それが、何かいた――」
「いえ、何でもありません! 問題がないか、見回って確認していただけです」
ん?
今、我々の気配を察知した者の報告を、遮りましたか?
しかも、問題がなかった事にしようとしていますよね?
それは、駄目です。
情報は「正確にそしてスピーディに」が、重要なんです。
しかも、誰かの気配を感じているんです。
かなり重要度の高い問題のはずです。
「ん?」
けばけばエルフが怪しんでいますね。
それは当然でしょう。
彼らの態度は、どう見てもおかしいですからね。
「本当に問題は、無いんだな?」
「はい」
えっ、まさかそれだけですか?
唖然と、けばけばエルフを見ます。
「部下を導く者として、その判断は駄目でしょう」
流石にちょっと心配になります。
もしかして、けばけばエルフは問題を処理する能力がないのでしょうか?
そしてそれを知っているから、部下のエルフは問題を報告しなかったのでしょうか?
本当のところは分かりませんが、もしそうならけばけばエルフの下では働きたくないですね。
「物は? 誰にも、見られてないな?」
んっ?
その言い方は、見られては駄目な物がこの近くにあるのですね?
ふふっ、隠されると探りたくなりますよね。
今日は、当たりの日かもしれません。
少し前、主の事をもっと深く知るために、平凡とは何なのかと調べました。
が、調べれば調べるほど、分からなくなり調査を断念。
いえ、いつかもう一度チャレンジするつもりです。
諦めません!
平凡を調査している過程で、人、獣人、エルフの国の事を少し理解しました。
今、この3つの国のトップ達は昔のように良い関係を築こうとしているようです。
とても素晴らしい考えです。
主のいる世界は平和が一番ですからね。
なのに、それぞれの国の中に平和を邪魔しようとしている者達がいます。
主の治める世界に、そんな存在は必要ない! と思ったのですが、飛びトカゲは各国に対応は任せておけばいいと言います。
少し不満でしたが、主は優しい方です。
被害も出てないのに、排除したら悲しむでしょう。
なので、今は各国の良好な関係を築くことを邪魔する者達を洗い出し中です。
何事も情報と準備が大切ですからね。
もし主に火の粉が降りかかりそうな時の為に、速やかに排除できるようにしておかなければ。
その洗い出し中に、仲間から気になる報告が多数寄せられました。
3つの国も、国の方針に反する組織も、秘密裏に色々な物を集めているらしいのです。
このエルフの国に潜んでいる最大組織は以前、洞窟に大量の武器を隠し持っていました。
エルフの国に遊びに来ていた子蜘蛛の話では、呪いのかかった剣があったそうです。
今は、主が使えなくしたので問題は無いですが。
そのような物が他にもある可能性があるため、そちらも同時に調査中です。
しかし、さすがに隠しているだけあってなかなか見つけられない。
だから、見つけられた日は「当たりの日」と、最近は言われています。
そして今日は、その当たりの日になる可能性があります!
どんな物を隠しているのか。
気になります!
「はい、大丈夫です」
それは良かったです。
他の仲間が先に見つけていたら、悔しい思いをするところでした。
「中を確認する。開けろ」
けばけばエルフの言葉に、周りのエルフ達がすぐに動き出します。
命令系統はしっかりしているようです。
ただ、おかしな態度を見せる部下を追及せず、隠している物がある場所の扉を開けさせる。
この判断はアウトです。
もっと周りに注意を払わなければ。
まぁ、今は感謝をいたします。
開けてくれて、ありがとうございます。
「物って何だろう?」
あんちゃんが、ワクワクした雰囲気で扉を見つめています。
「守っているほどですから、大切なものなんでしょう」
私の言葉に、あんちゃんは頷くと物陰からエルフ達を見つめます。
「もちろん、調べるよね?」
「当然です。主が守る世界に、影響を及ぼす物かもしれません。もしそうなら、対処しなければ」
とはいえ、今まで見つけた物を思い出しますが、それほど脅威になる物はありませんでした。
どれも威力が弱いんですよね。
力を倍にする剣は、私が軽く力を込めただけで砕け散りましたし。
火の攻撃を防ぐ楯は、親玉さんの攻撃で灰に。
あんな弱い武器を集めて、意味があるのでしょうか?
「どけっ」
扉が開くとけばけばエルフが部下を押しのけて建物の中に入って行くのが見えました。
彼の態度はいちいち、イラっとしますね。
「どうする? 阻害魔法が掛かっているから、このまま堂々と建物内に入って行けるけど」
「この魔法はいつ消えるか予想が難しいですから、止めておきましょう」
扉の前で魔法が消えてしまったら……逃げればいいだけですが、物が何か確かめられません。
守っているエルフが増えたら……特に問題はないですが、あまり派手に動き回るのは駄目でしょう。
やはり、こっそりお邪魔するのが一番です。
断じて、楽しめる方法を選んだわけじゃないです。
「エルフ達は、扉の前に集まっていますね。裏に回ってみましょう」
物陰から物陰へ、エルフ達の様子を見ながら移動します。
我々の気配を察知していたエルフが、ふとこちらの方を見るのが分かりました。
やはり、彼はかなり鋭い感覚を持っているようです。
「宝の持ち腐れというやつですね」
「窓発見!」
あんちゃんの声に、建物を見ると手ごろな位置に窓があります。
「丁度いいですね。鍵は……」
もちろん鍵は掛かって……掛かっていないですね。
えっ、まさか罠でも仕掛けられているのでしょうか?
「あっ、警報装置だ」
あんちゃんが指す方を見ると、2個の警報装置が見えます。
という事は、他にも音で侵入を知らせる物があるのでしょう。
今までがそうでしたから。
「警報装置があるからといって、窓に鍵を掛けていないのは駄目ですね。不用心です」
「そうだね。この装置、温度か動きを感知したら鳴る仕組みだけど、結界を使ったら反応しないもんね」
そうなんです。
主の真似をして結界を作ったら、温度も動きも音さえも漏らさない結界を作れてしまったのです。
なので、置いてある警報装置は意味がありません。
「さて、お邪魔して隠してある物が何か確かめましょう」
主に何かいいお土産があるといいのですが。
最近は、ずっと異空間に籠ってしまって……悲しい。